_危険_ストロングゼロはロンドンの超社会問題となったジンクレイズを現代に再現しようとしている

【危険】ストロングゼロはロンドンの『超』社会問題となった”ジンクレイズ”を現代に再現しようとしている

ハイライト
・18世紀にロンドンを腐敗させたジンクレイズの真実
・“虚無の酒”ストロングゼロが引き起こす社会問題
・18世紀イギリスと現代の共通点
・アルコールから私たちを遠ざける5つのアイデア

■ストロングゼロはロンドンの超社会問題となったジンクレイズを現代に再現しようとしている

18世紀のイギリスではジンが大ブームを引き起こしました。アルコール度数が高く、手っ取り早く酔えるジンは当時のヨーロッパ最大の都市ロンドンで大流行。大きな社会問題を引き起こしました。

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当時の状況を表す風刺画:ホガースの「ジン横丁:GIN LANE」*1

この風刺画は、道端で人々が酔っぱらっている姿。育児放棄をしている姿。体がやつれ骨と皮だけになっているのに寝ている姿などが描かれています。背景に描かれたのは建物の崩壊でしょうか?

ジンによって崩壊するロンドンが描かれているのが特徴です。

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当時の状況を表す風刺画:ホガースの「ビール横丁:BEER LANE」*1

ジン横丁と対比するようにビール横丁も描かれました。ジン横丁に比べて衣服が整い、市場には活気があり、健康的な楽しみ方が描かれているのが特徴です。

ジン横丁と比較して、ビールの方が健全であることが描かれています。


2017年11月ごろからネットでは「アルコール度数が高いにもかかわらず飲みやすい」「価格が税別141円と安い」といった要素から、ストロングゼロを手軽に酔える酒の代名詞として“飲む福祉”“虚無の酒”などと呼ぶ人が続出。

現代日本において、ストロングゼロはどのコンビニやスーパーをはじめ、どこにでも置いてある人気酒になりました。サッポロはストロングゼロと同じアルコール度数9%の強いチューハイ、99.99(フォーナイン)を出して大ヒット。

ストロングゼロから巻き起こるアルコール9%のムーブメントは非常に巨大で、他の会社も巻き込んでさらなる成長を続けています。これらの酒は、強力なアルコールを含む、依存性の強い酒です。

Twitterの情報ではありますが、都内の棒地下鉄駅前もすでに18世紀のジン横丁と同じような光景になっているとかいないとか。


今回の記事では

・ジンクレイズという現象について
・なぜ、ジンだったのか?
・何が、問題だったのか?
・18世紀のイギリスと現代の共通点
・飲みすぎの境界線
・アルコールから私たちを遠ざける〇つのアイデア

についてご紹介していきます。

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ジンクレイズという現象

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ジンクレイズは1720年~51年のイギリスで起こった社会現象。

1688年の調査では、イギリスにおけるジン消費量はたったの2ℓ程度でしたが、1742年には8600万ℓも消費されるほどの天文学的な拡大を見せました。

イギリスの当時の人口は20世紀後半の10分の1しかいなかったのにもかかわらず、消費されたジンの量は約10倍!明らかに異常な量を消費していました。アルコール濃度も通常のジンをさらに蒸留することで度数をアップし、かなり強い状態で飲まれていたことが判明しています。

当時は衛生環境も悪く、水が細菌などで汚染されていることもしばしば。アルコールの方がまだ安全性が高いという時代だったこともあり、ジンは急速な広がりを見せていきました。

安価でカンタンに手に入るアルコール飲料がこれだけ社会的に流行したのは歴史上初。専門家(Nichols,2003)は”世界初の現代的モラルパニック”と名付けています。


■何故、ジンだったのか?

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17世紀後半のイギリスでは、フランスのブランデーの人気が高く、ジンの人気はほとんどありませんでした。しかし、1689年にオランダ王のウィリアム3世がイギリス国王に迎え入れられることで、ジンは普及します。


ジンが普及したのにはいくつかの原因があります

・ジンはもともとオランダの国民酒
・ウィリアム3世はその後フランスに宣戦布告
・フランスのブランデーが輸入できなくなった
・ジンは戦争を継続するための資金源(税金)の回収に役立った
・当時のジンの価格はビールよりも安かった

当時のイギリスを支配するウィリアム3世をはじめとする国の思惑と、戦争のさなか貧困と困難に嘆く国民の間『ぴったりとハマる』もの。それが”ジン”だったのです。


■何が問題だったのか?

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ジンはイギリスの中でも”大都市ロンドン”に集中して流行しました。

ロンドンは当時のヨーロッパの中でも最大の都市。しかし、今のような高度な上下水道など、衛生インフラはまるで行き届いていませんでした。

そもそも人口過剰による不衛生な生活環境、需要と供給のバランスが崩れることで失業者の増加、感染症の拡大、乳児死亡率の増加。ネガティブ要因がたくさんある都市だったのです。

そこに『ジン』という安くて強い酒。人生のツラさを遠ざけてくれる酒が登場したため、大流行は当然の出来事でした。

今のジンはさっぱりとした切れ味の酒というイメージですが、当時は大量の砂糖が入っていて甘く、飲みやすい酒でした。

あれ、ストロングゼロとおなじ・・・??

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当時、栄養も不足している状況だったため、甘いジンはむしろ栄養源としても重宝されていました。その結果、子どもや乳の出にくい母親もジンを飲ませてみたりと、現在では考えられないようなひどい有様でした。

中には子供が騒ぐことを抑えるためにジンを飲ませるのが手っ取り早いと考える親もいたようです。その結果1751年時点でジンによって死亡した子どもは6000人にも及びました。


幾たびもの政策がとられますが、有効な政策だったジン法が成立する1751年まで、ロンドンの民は50年以上もジンによって蝕まれることになります。

*ちなみに、ジン法の施行と同時に紅茶の文化が花開き、推奨されるようになりました。イギリスのティータイム文化のルーツはジンにあります。

ジンは、当時のイギリス庶民を腐敗させる、巨大なカルチャーへと変貌してしまったのです。


■アメリカ人の寿命の短縮にみる、現代とジンクレイズの共通点

アメリカは言わずと知れた超大国。GDPも圧倒的な世界1位を突き進む唯一の国です。お金や資源が潤沢な彼らは幸せ。そのハズでした。

しかし、ふたを開けてみるとアメリカの弱さが見えてきます。

アメリカは過去3年にわたって余命が短縮している国。

その原因は、アルコール依存症、薬物、自殺が主な原因です。一人当たりの保険医療費が世界一にもかかわらず、彼らの本当の問題はケアされないまま。地方に住む貧困な白人層は薬物やアルコールに手を出し「絶望死」しているのです。

彼らの状況は、ジンクレイズが起こったロンドンと似ています。

格差が明確化し、富を持つものと持たないものが分断され、成功者と失敗者は生まれる前から決まっている。そんな時代を表しているのではないでしょうか?

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そして、この問題は決して日本に関係のないことではありません。

東京だけにヒトが集まり、地方からはどんどんヒトが流出しています。学歴によって明確に隔たりがある社会構造や、富を分配できず経済的な成長が滞る日本

絶望を感じるヒトは決して少なくありません。

そんな日本で今、ストロングゼロが流行する。

これって恐ろしくないですか・・・?


■飲みすぎの境界線はどこからなの?

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とはいえ、別にストロングゼロを1缶飲んだから危ないよ!なんて話は間違っていますし、アルコールは適度に飲めば楽しく幸せになれます。

では、その境界はどこからなの!?

という問題に答えるために、centers of disease control and preventionが定める飲みすぎの基準をシェアします。飲みすぎの基準はたくさんある中で、今のところ最も信頼のおける基準がこれだと思います。

『男性なら5杯、女性なら4杯以上を2時間以内に

飲んだらかなり危険』

これが1つの基準になります。しかし、これはビールやチューハイの話。

ストロングゼロの場合
・ロング缶=1.2缶
・500mL缶=1.8缶
2時間以内に飲んだらアウトです。

甘くてハイペースで飲めるストロングゼロ。

これ以上のペースで飲んでる人も多いのでは?


自分が飲みすぎかどうかが分からない人は、次の質問に答えてみましょう。

・1日4杯以上飲むことはありますか?
・飲んだ後何が起こったか忘れることがありますか?
・飲んだ時に罪悪感や恥ずかしさを感じますか?
・飲む量を減らす必要があると思いますか?
・他のヒトはアナタが飲んだ量について何かコメントしますか?
・飲む時間を作るために何かを放棄しますか?

この質問に1つでもYesと答えた場合や、頻繁にYesになる場合は、ちょっとお酒から距離を置くような行動をとるべきかもしれません。


■アルコールを生活から遠ざける5つのアイデア

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意思のチカラだけでアルコールを遠ざけるのは至難の業。アルコールを生活から遠ざけるために私たちができるいくつかのアイデアをご紹介します。

自分に合ったアイデアを試してみてください!


■環境を変える
一緒に飲む人、良く飲む場所を考えてみましょう。その場所に行くのを避け、その人と一緒に行動するのを避けることで、アルコールの量を減らすことができます。


■メリットとデメリットを考える
お酒を飲む量を減らしたときのメリットと、お酒をそのまま続けたときのデメリットをリストにしてみましょう。それを毎日振り返ることで、お酒を減らすモチベーションを高めることができます。


■家族や友人と協力する
自分がお酒を遠ざけたいということを相手に知らせたうえで、サポートしてもらいましょう。一人で抱えずに、飲んでいるときは指摘してもらうことで、困難な問題を一緒に乗り越えることができます。


■量を決める
いきなり完全にお酒を断つことは困難です。先ほどの飲みすぎ量以下になるように量を調節しましょう。休肝日を作ることも重要です。


■お酒以外のストレス解消法を見つけましょう
お酒を飲む習慣は、ストレス・うつ病・不安・退屈などネガティブな感情をどうにかするために行われることがほとんど。
運動・筋トレ・セルフケア・瞑想・スポーツ・趣味・他のヒトとのつながりなど、もっと健康的な手段に切り替えてみてはいかがでしょうか?




まとめ

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ストロングゼロとジンクレイズの繋がりはバカにできません。

現代のハイパーストレス社会に生きる私たちが、安くカンタンに、どこでも手に入るストロングゼロに手を出すことはひどく合理的です。

私たちの大切なものを守るためには、自分たちでその道を選択する必要があります。ストレスを感じた→ストロングゼロという生き方も否定しませんが、それであなたの大切なものは守れますか?つかめますか?

アナタの人生が、幸福なものでありますように。



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引用

1.Muldoon, Sascha. "Hogarth's ‘Gin Lane’and ‘Beer Street’." International Journal of Surgery 3.2 (2005): 159-162.

2.Herring, Rachel, Virginia Berridge, and Betsy Thom. "Binge drinking today: learning lessons from the past." Drugs: education, prevention and policy 15.5 (2008): 475-486.

3..Centers for Disease Control and Prevention. "Fact sheets: Binge drinking." Centers for Disease Control and Prevention (2015).

4.Nicholls, James. "Gin Lane revisited: intoxication and society in the gin epidemic." Journal for Cultural Research 7.2 (2003): 125-146.


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