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小説 「冬の桜」

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中学生の頃に書いた恋愛小説です。 至らない部分が物凄いですが、自分で言うのもなんですが登場人物達が活き活きとしているので何となく面白いです。 「こんな事考えてたのか…」と言うよう… もっと読む
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冬の桜 最終話

 寝ている間に年が明けて、俺の眠りを邪魔して、俺を夢から引っ張り出したのは、朝の強烈な寒さだった。
 「す~っ」
 と、体を縮こませてから布団を体にかけた。そういえば布団もかけずに寝ていたんだ。時計を見たら朝の6時で、テレビは付けっぱなしで「明けましておめでとうございます」とか言っていた。俺は年越しが楽しくて仕方なかったのに、今は寝て通り超すようにまでなってしまった。
 それから起き上がって窓を開

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冬の桜 第29話

「さ~て。もうすぐ新年ですね」
 とか、テレビのタレントが俺に向かって語り掛けて来た。「そんなの知るかよ。勝手に新年にされても俺は何もやる事ねーよ」何て思いながらテレビを見ていた。手紙は今日の朝に桜の家のポストにそっと入れておいた。だから後は、桜がどういう反応を示してくるか待ってた所なんだけど、いといと後1時間で新しい年が来るって時になっても、桜は顔も見せて来なかった。つまり俺の思いを受け入れるこ

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冬の桜 第28話

 家でボーッとテレビを眺めていた。家を出て少し行けば桜と話しをすることも出来るんだけど、何を話したらいいかも分からないし、どうすればいいか分からなかった。
 そうしている間に二日が過ぎていて、会社も終わって何もすることがないから何もしていなかった。無意味で空虚な時間程流れるのは遅い。それでやっと昼の3時になった時、だ誰かが俺の家のドアをノックした。
 俺は桜だと思って飛び起きて、返事をしてからドア

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冬の桜 第27話

 また俺は目覚めていた。でも、今まで生きていた中で一番目覚めの悪い朝だった。
 昨日の桜の最後のセリフを思い出すと、また胸が苦しくなる。「大好きだった」この言葉からは、勿論「もう好きじゃない」って意味が読み取れるんだ。
 俺はさんざん心配や気遣いをしてくれた桜に、何度もわがままを言って、何度も怒鳴り散らして、耳を傾けようともしなかった。それで体だけを求めようと力ずくで襲い掛かって、涙を沢山流させて

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冬の桜 第26話

 それでも桜とのクリスマスパーティーは普通通りに楽しんでいた。久しぶりにこうして桜と二人だけになれたし、二人でクリスマスと言う神秘的な空間に入り込む事も出来た。俺は残り少ない桜を精一杯に感じてた。大好きな桜を精一杯感じていたんだ。
 パーティーは話し合いの結果、俺の家でする事になって、ワインなんて持ち込んで、ケーキなんて食べて、何時間も桜と話しをした。
そして、酔いも回って来て、時計が10時を指し

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冬の桜 第25話

 「ほーら。おっかけるぞ~」
 と、小学生を追っかけていた。俺はクリスマスに何をやってるんだ。どうして小学校の校庭で小学生と鬼ごっこをしなかればいけないんだ。何やってんだ俺…。そう思っても、他にやることもないから遊んでいた。そしたら一人の子が、こんな事を聞いて来た。
 「お兄ちゃん彼女いないの?」
 痛い事聞いて来た。彼女いないからこうしてお前らと遊んでるんだろうが、ちょっとは考えろ。と、思ったけ

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冬の桜 第24話

 次の朝、昨日の自分がニュースに出ていた。でも名前は「近くにいた会社員」と、なっていた。でも、それで良かったと思う。もし名前が出てしまったら、何人の人にそのことを言われるか分からないからだ。初めは得意になって説明するだろうけど、二、三人目からは面倒くさくなるだろうからな。
 窓を開けて外を見ると、まだ少しだけ雪が残っていた。そういえば今日はクリスマスなんだ。結局、誰とも予定は組まなかったな。
 そ

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冬の桜 第23話

 とりあえず会社には行った。昨日の雪のせいで大幅にダイヤが遅れていたから、働く時間が減って良かった。それでも俺は昼の2時を過ぎても全然仕事をする気なんて起こらなくて、ついに俺は行く宛もないのに辞表を出した。
 「…なんだこれは?」
 ダボハゼ部長は、辞表と書かれた封筒を俺から受け取ってそう言って来た。勿論「辞表」ってことが分からなくて聞いて来た訳じゃない。「どうしてこれを出して来たんだ?」ってこと

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冬の桜 第22話

 やっと家の最寄り駅に着いた所だった。腕時計は11時を指していて、日付は12月の22日になっていた。あと少しで今年が終わって、俺の会社生活も終わるんだ。そしたら、こんなウンザリする帰宅も出社もないんだ。つまらない仕事もしなくていいんだ。嫌な上司もいないし、もっと良い所にも住めるし…。でも、桜にも会えなくなるんだ。やっぱり桜の事は引っかかる。いくら慎太郎の女になったって、やっぱり魅力は変わらないし、

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冬の桜 第21話

 今年も残す所あと10日となった。来年からは金融屋として新しいスタートを切る事になっている。俺は一応、会社には来ていて、いつもの様に仕事をしていた。桜とは昨日の朝に駅で会ったのだけれど、慎太郎との関係の事は怖くて聞けなかった。いつも通りの楽しいお喋りをして、「元気出たね」なんて言っていた。ただ吹っ切ればだけなんだよ。俺はこんな所やめてやる。仲良くしてくれたみんなともさよならして、またあっちの世界に

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冬の桜 第20話

 それはまた朝の大行進の時だった。俺はいつもの様にいつもの時間にいつもの交差点でいつもの信号を待っていた。これはいつもの事だ。そして、いつもの様に桜の姿を探しながら歩いていたけど、今日も桜には会わなかった。
 でも、今朝はいつもと違って変わったことがあったんだ。いつも通り何も入っているはずのないポストに手を入れたら、初めてちゃんとした手紙が入っていた。それは俺のアパートに前住んでいた、元彼女からの

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冬の桜 第19話

 「はあ~」
 と、思いっきり大きい口を開けて大あくびをした。時計は8時を指していて、あと1時間で今日の仕事が終わる所だった。勿論、俺はあと3時間ぐらいはあるけどね。
 日付は12月の14日だった。舞とご飯を食べに行ったり、桜と話しながら帰ったり、慎太郎とは軽く飲みに行ったり、何だか順調に毎日は進んでいた。このままの調子で新しい年を迎えられたら、去年よりは良い年を迎えられそうだ。
 でも、やっぱり

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冬の桜 第18話

 辺りは慌ただしくなった。やれ「決算だ」「クリスマスだ」「年末だ」「バーゲンだ」。毎年あるって言うのに毎年騒ぐなよ。クリスマスなんて、俺はもう21度目だぜ?いい加減飽きないもんかね。
 あれから慎太郎は何度も俺に「辞めるなよ」と言って来るし、中村まで「逃げるのは辞めたのか?」とか、皮肉っぽい気遣いをしてくれてる。確かに今はまだ逃げるのをやめて会社に残っていた。辛いとか、飽きたとか言ってないで、ただ

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冬の桜 第17話

 こう言うのってすごいプレッシャーだ。
 ガラス張りになっているドアの所から、慎太郎や桜が交互に俺を覗いてくる。勿論、あんな大量の書類を一日でファイルにするのは大変で、9時の帰宅時間を過ぎても終わらなかった。「先に行っててもいい」と、言ったのだけれど、「今日の主役は優君だよ」何て桜が言う物だから、俺はこんなプレッシャーの中、仕事をしていた。でも、それは10時になってようやく終わった。
 「終わった

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