西野仁

書くことが好きで、小さい頃から小説を書いています。 今は「桜花絢爛」という横浜の暴走族…

西野仁

書くことが好きで、小さい頃から小説を書いています。 今は「桜花絢爛」という横浜の暴走族の話を書いていて、noteに少しずつアップしようと思っています。 お時間がある時にでも読んで頂けたら幸いです。 よろしくお願いします。

マガジン

  • 桜花絢爛

    という題名の横浜の暴走族の話を書いています。 完成にはまだ随分かかるので、出来ている部分から少しづず載せようと思います。 お時間がある時に、宜しければご覧ください。

  • 小説 「冬の桜」

    中学生の頃に書いた恋愛小説です。 至らない部分が物凄いですが、自分で言うのもなんですが登場人物達が活き活きとしているので何となく面白いです。 「こんな事考えてたのか…」と言うような幼稚な見解も…まあ見ていて面白いので お時間がある時に宜しければご覧ください。

最近の記事

エピソード 8 「公会堂」

「EP 8 公会堂」  一同を乗せた車は、賑やかで明るい都市部を抜け、人気のない湾岸の工業地帯へと進んでいた。  幹線道路から一つ曲がった途端に、辺りは急に真っ暗になり、工場にある守衛室の明かりが小さく灯っている程度。人が歩道を歩く事もなければ、通る車も非常に少ない。街灯も乏しい中、自車のヘッドライトを頼りに進んで行くと、信号機の光が妙に明るく感じる程だった。  彩香が少しだけ不安な顔をした。それを見た涼は彩香の手を握った。振り向いた彩香は、すぐに笑みを浮かべた。涼があのいつ

    • 桜花絢爛 「エピソード7 品川 横浜」

       「EP 7 品川 横浜」  涼がユウジと知り合った次の日のこと。  「これから品川まで車で迎えに行くよ」  ユウジは電話でそう言っていた。  約束の夜6時になって、涼と彩香の二人が、涼の家の前で待っていると、間もなくして、ユウジは本当に車を運転してやってきた、  車はユウジの兄の物で、外国産の白い大きなワゴン車だった。  「まさか冗談だと思ってた。大丈夫なの?」  まずはそう聞いた。ユウジは中学2年なので、無論、免許を持っているはずはない。  「大丈夫だよ。横浜流。東京で捕

      • 桜花絢爛 「ストーリー3」

        「ST 3」  涼は彩香の家を出てから、品川から高速に乗り横浜に向かっていた。  乗り慣れたいつもの湾岸高速道路。かつて、ここを時速250キロで駆け抜けたこともあったが、今日は珍しく90キロの安全運転だった。 しばらくして、例のカーブの前を通った。  涼はそこを通るたびに、あの嫌な感覚を思い出す。鳩尾の辺りがきゅっと締め付けられるような、あの寂しい感覚である。 涼は煙草に火をつけた。  その時…。  プアアアアアアアア!プァンプァン!。  随分と甲高いエンジン音が聞こえたかと

        • 桜花絢爛 「エピソード6 若島自動車工場」

          「EP 6 若島自動車工場」  人見知りなどなんのその、ユウジは、もう何年も前から知っている友達であるかの様に話しかけてきた。  「これはユニクロだよ」  涼はそう答えた。涼も昔から人見知りはない。  「ふーん。格好いいな。ちげーか。着てるやつが、かっけーのか」  続いてユウジは言った。  「いくつ?」  「えっと。今年14」  「まじかよ。タメじゃん。見たことねえな。どこ中?」  「ど…どこ中?…って?」涼は首を傾げた。  「だから、どこ中?俺、西中」  「あ、ああ。俺達

        エピソード 8 「公会堂」

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        • 桜花絢爛
          12本
        • 小説 「冬の桜」
          30本

        記事

          桜花絢爛 「エピソード5 健哉隆&宮城奈菜」

           「EP 5 健哉隆&宮城奈菜」  涼と彩香の二人がまだ小さい頃、涼はその日も彩香の要望で砂場に山を作っていた。その時は、彩香の他にもう二人、その様子を見ている女の子がいた。涼のその、好奇心を誘う動きと優しい笑顔に引かれてか、涼の回りにはいつも女の子が集まった。  その時、そんなモテ男にひがんでか、別で遊んでいた数人の男の子達が、背後から隙を狙って涼の首の上に5センチほどの大きさの、くっきりとした真緑のカマキリを乗せた事があった。涼が虫を嫌いな事を知った上での悪戯だった。  

          桜花絢爛 「エピソード5 健哉隆&宮城奈菜」

          桜花絢爛 「ストーリー2」

          「ST 2」  オレンジ色の暖かい光が入り口に灯っている。  彩香の住むアパートは、御殿山の坂の途中にある。ワンルームでも家賃相場が飛びぬけた金額になる界隈の中で、そこが家賃8万8千円と言う、彩香の手取りでもぎりぎり生活が出来る価格帯なのは、外装、内装だけが造り直された、いわゆるリノベーション物件に当たるからである。よって、見た目は新しくも築年数は40年余りと古い。外装もあえて手を加えずにシンプルなまま、内装もコンクリートの打ちっぱなしになっていて極力費用を減らした状態、とは

          桜花絢爛 「ストーリー2」

          桜花絢爛 「エピソード4 御殿山」

          「EP 4 御殿山」  加奈子は元夫が経営するホテルで自殺を図った。それは、彩香が5年生になってすぐの事だった。  加奈子が救急車で運ばれたという連絡を持って、彩香の叔父が涼の家にやってきた。彩香は、すぐその車に乗り込み病院に向かった。  一命は取り留めたものの、加奈子は病室のベッドに横たわり、彩香達に背を向け、窓の外を眺めたまま黙っていた。その頃になると、加奈子は薬の量も増え過ぎて廃人の様になり、手足は痩せ細り、あの美しかった顔も痩せこけて見る影もない。もう死んでいるのと同

          桜花絢爛 「エピソード4 御殿山」

          桜花絢爛 「エピソード3 権現山公園」

          「EP 3 権現山公園」  ある時、彩香は一人で公園にいて、その小さな手をフェンスにかけて、その先の景色を眺めていた事があった。 大きな都会が広がっている。  帰る家のない彩香は一人いつまでも、その下を走り去る電車を眺めた。電車の轟音は風向きによって公園の笑い声をかき消すほど大きく響く時もあった。  どこへ向かうのか分からない、ただひたすらそこを通り過ぎていく白く高速の物を目で追った。そうしていたら、閉ざされた世界に、一人ぼっちになったような気持ちになった。誰もこんな私になど

          桜花絢爛 「エピソード3 権現山公園」

          桜花絢爛 「エピソード2 橘彩香」

          「EP 2 橘彩香」  涼と、彩香の二人が小学校低学年の頃の話である。  二人は、御殿山にある例の高台の公園で遊んでいた。頭上の桜が花開いていた頃で、風もなく穏やかな陽気だった。  涼はピアノのレッスンを終えたその足で公園まで駆けて来た。黒いパンツに、白いワイシャツ姿で、袖をまくった手で砂場に山を作っていた。 彩香は黒いワンピースの裾を足の間に折り畳んで、涼の側にちょこんとしゃがみ、せっせと動く涼の手元を眺めていると言う様子だった。  時計が5時を回り、夕暮れを迎えても、二人

          桜花絢爛 「エピソード2 橘彩香」

          桜花絢爛 「ストーリー1」

          「ST 1」  東京、品川。  品川駅から国道15号線を下り、ビルの合間の狭い路地を曲がると、建物の間を真っすぐと伸びる緩やかな傾斜の細い路地が現れる。その坂を上がっていくにつれて、都会の喧騒は薄れ、やがて高台にある庭園の脇を通る並木道に差し掛かる。庭園の桜は有名で、モダンに舗装された桜並木も美しく、春になると両手から爛漫する桜を一目見に多くの人が訪れる。並木道の先は、その場所が、空に高層ビルが覗く都会であることを一瞬忘れてしまうような静かな住宅地になっている。狭い路地に住宅

          桜花絢爛 「ストーリー1」

          桜花絢爛 「エピソード1 涼」

           一つ生まれたこの命  一人過ぎ行くこの道に  一心不乱に咲き誇れ  桜花絢爛    人生が最も輝くとき。  桜花は絢爛する。  咲いたまま凜と立っていられる者もいる。  散りゆく花びらを止められぬ者もいる。  いや、もう一度と、枝を広げる者もいる。  諦めて枝を垂らす者もいる。  長い冬がそこにある。  それでも春になる。  春になれば花は咲く。  人生は何度でも輝ける。  彼は咲く前のそこで立ち止まっていた。  「涼」は今年で高校5年生になる。  「EP 1 涼」

          桜花絢爛 「エピソード1 涼」

          ありがとうございます

          冬の桜、最終話までの投稿が終わりました。 最後まで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。 スキをつけて頂いたり、コメントまで寄せて頂いた方もいらっしゃいました。 緊張や不安もありましたが、ネットにあげてみて良かったと今は思っています。 本当にありがとうございました。 僕は、今も趣味で小説を書いていて、今は「桜花絢爛」という題名の横浜が舞台の話を書いています。 「絢爛?あれ、字おかしくない?」と思うかも知れませんが、これでオッケーなのです。 物語の中の登場人

          ありがとうございます

          冬の桜 最終話

           寝ている間に年が明けて、俺の眠りを邪魔して、俺を夢から引っ張り出したのは、朝の強烈な寒さだった。  「す~っ」  と、体を縮こませてから布団を体にかけた。そういえば布団もかけずに寝ていたんだ。時計を見たら朝の6時で、テレビは付けっぱなしで「明けましておめでとうございます」とか言っていた。俺は年越しが楽しくて仕方なかったのに、今は寝て通り超すようにまでなってしまった。  それから起き上がって窓を開けて外を見ると、「ありゃま」とつい声を出してしまう様な、一面白銀世界になっていた

          冬の桜 最終話

          冬の桜 第29話

          「さ~て。もうすぐ新年ですね」  とか、テレビのタレントが俺に向かって語り掛けて来た。「そんなの知るかよ。勝手に新年にされても俺は何もやる事ねーよ」何て思いながらテレビを見ていた。手紙は今日の朝に桜の家のポストにそっと入れておいた。だから後は、桜がどういう反応を示してくるか待ってた所なんだけど、いといと後1時間で新しい年が来るって時になっても、桜は顔も見せて来なかった。つまり俺の思いを受け入れることはなかったんだろうな。  「はあ~」  仰向けに寝て、土壁で出来た天井を眺めた

          冬の桜 第29話

          冬の桜 第28話

           家でボーッとテレビを眺めていた。家を出て少し行けば桜と話しをすることも出来るんだけど、何を話したらいいかも分からないし、どうすればいいか分からなかった。  そうしている間に二日が過ぎていて、会社も終わって何もすることがないから何もしていなかった。無意味で空虚な時間程流れるのは遅い。それでやっと昼の3時になった時、だ誰かが俺の家のドアをノックした。  俺は桜だと思って飛び起きて、返事をしてからドアの前に立った。それから何を話すか考えて、どういう事を言ってくるかを予想してからド

          冬の桜 第28話

          冬の桜 第27話

           また俺は目覚めていた。でも、今まで生きていた中で一番目覚めの悪い朝だった。  昨日の桜の最後のセリフを思い出すと、また胸が苦しくなる。「大好きだった」この言葉からは、勿論「もう好きじゃない」って意味が読み取れるんだ。  俺はさんざん心配や気遣いをしてくれた桜に、何度もわがままを言って、何度も怒鳴り散らして、耳を傾けようともしなかった。それで体だけを求めようと力ずくで襲い掛かって、涙を沢山流させてた。そんな俺のことなんか、いい加減嫌いになったんだろうな。  気は進まないけど、

          冬の桜 第27話