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泣かせないで 連れて行かないで 甘える場所 誰にも 君に花束を 時間 目覚まし キモチばかり

泣かせないで

 泣きたくないのよ今は
 私、強くあらねばならないの
 だから何時もの様にそこにいて
 何も存ぜぬ、お早うを言って下さい

 ……あれ?どうしたの?

 たった一言で
 こんな私に気付いてしまうから
 泣きたくなかったのよ、貴方……
 何も聞かないで欲しかったのに

 結局全部聞き出して
 私の為に怒っている貴方を
 私は止める方法が分からないの

 君の所為じゃないのに

 ……そんな事、わかっているわ
 だから話したくは無かったのよ

 優しい貴方が怒るなんて似合わないわ
 私、強くあらねばならないの
 貴方に優しい人でいて欲しいから

 少しだけ守られている気がしたわ
 けれど今は包み込まないで
 これから強くならなきゃならないの
 今から誰にも負けない主人公を書くのよ

 だからその前に
 一瞬だけ泣いた愚かな私を
 叱っても良かったのよ

 どうか……もしまた涙が出たら
 誰にも見られない様に
 何にも残らないように
 抱きしめて隠して下さいませんか

連れて行かないで

 ねぇ、貴方……本当は連れて行って欲しいのよ
 貴方が眠る夢の中
 だって、私は独りで貴方を
 こんなに愛して待っているのに
 知らぬ存ぜぬで心地良さそうに
 寝ていらっしゃるのだもの

 仕方無いから
 本当はもう今日は書かなくていい
 執筆を続けたの
 集中して
 ほんの少しのやさぐれた愛を
 忘れるだけで良かったのに

 私、笑っちゃったのよ
 貴方、寝言で私を呼ぶのですから
 私の集中力を返して下さらないかしらん?
 心を連れて行かれたら
 何一つ書けやしないじゃない

 これでも独りは苦手なの
 だから貴方
 ずっと私の名を呼ぶか
 連れ去らないか
 何方かにして下さいね

 私、貴方の針に掛かった魚みたいじゃない
 どうか気が済むまで浮遊させて下さい
 貴方が目覚めるその時まで

甘える場所

 私、貴方がいなくなったら
 甘える場所を失うわ
 だから長生きしなきゃ嫌よ

 笑っちゃうわ
 世界にこんなに人がいるのに
 私が甘えられるのは
 貴方たった一人なんて

 だから意地悪言いたくなるのよ
「甘えさせてくれないなら、貴方なんて要らないわ」
 そう言っても、貴方は何一つ怒らずに
「甘えさせるから、ずっと居ればいいじゃ無いか」
 と、笑って言うのよ
 どうせ他に甘えもしないって
 分かって笑っているのでしょう?

 怒るのも疲れて私は言うのよ
「ねぇ、肩……貸して。」
 頭を乗せてふんわり
 結局甘えて落ち着くの

 何で貴方の前ではこんなに弱いのかしらん?
 自分に腹が立ってきた頃
 貴方はそろそろかと
 見透かして言うの
「今日も素直で可愛いね」
「……ばっかみたい!」

 それも結局本当は
 お互いに甘えているのだわ

 そうだわ
 甘えているのは
 貴方も一緒ね

誰にも

 貴方に言われたの
 私は誰にでも優しい
 優し過ぎると

 ……「優しい事はいい事じゃないの?」

 って、貴方に聞いたら
 貴方は黙ってしまった

 数年後……
 私は貴方に言ったの
「貴方って本当に優しいわ。一緒にいて良かった。」
 って。
 でも、気付いたら……貴方、誰にでも優しいの
 嫉妬なんてする歳でもないから
 私は素直に言ったの
「特別感が欲しいのよねー。」
「特別感?」
 急に言ったものだから
 貴方は何の事かと私を見る
 私は貴方に
「優しさの事よ。
 ……貴方、誰にでも優しいから
 私、少しだけその他大勢と同じと思ったの。
 それでも構わないから
 私だけに特別な優しさをくれないかしらん?」
 と、私が言うと
 貴方は困る訳でも無く
 そうかと少し考えている
「苺を買って帰ろう。」
 急にそんな事を言い出すのよ。
「それって、優しいつもり?」
 と、私が聞くと、
「君を不機嫌にしたなら
 君の好きなものを上げないとね。
 機嫌を気にまでするのは
 君だけ。
 ……だから特別。」
 と、貴方は言うの。
「仕方無いわね。貴方を許す訳じゃないのよ。
 苺様が貴方を許すのだから。」
 と、私は笑った。
「じゃあ、苺様に感謝しよう。」
 そう言って少年の様に笑う貴方を
 私が本気で怒る訳ないじゃない。
 だから、本気の嫉妬も出来ないわ。


君に花束を

 私なんぞが花束など
 きっと似合いっこないのに
 貴方は両手で抱え切れない程の愛で
 その花束をくれたの

 私はこんなに大事なお花
 枯らしてしまったらどうしましょうと
 あたふたしたあの日を
 覚えていらっしゃるでしょうか

 ねぇ……貴方……
 ちっとも女の子らしく無かった私は
 そんな何気ない事が
 とっても……そう、とっても嬉しかったのよ
 誰かを守り生きて来た私は
 それが当たり前で
 貴方の優しさに守られていると感じた時
 どんなに心ときめかせた事か

 嬉しくて涙が止まらないの
 この気持ちをいつか伝えられたらと願っていたから
 私からも花束を贈らせて
 愛しています 何時迄も
 貴方に似合う優しい色を束ねて向かいます
 だからもう……抱きしめて下さいませんか

 この涙も 喜びも
 貴方の為に向かうのです


時間

「時間、合わなくて御免なさい。」

 貴方が起きた事に気付いてもキリが良くなるまで
 貴方が何をしているかも私は知らないの
 私の後ろで
 ガタゴトとパンを焼き出しても気付きもしない
 でも知っているのよ
 寝癖のついた柔らかい髪で
 寝起きのぼーっとしたその可愛い瞳で
 私の後ろ姿をずっと見ている事なんて

 だってどんなにキリが悪くても
 振り向くと目が合うのだから
 夜明けは疲れと
 貴方の隣に行けなかった事の後悔が訪れる
 きっと私、またお昼寝してしまうわ
 だから今日も
 ソファーに凭れて頭と肩を寄せ合いましょう

 それでも夜明けが好きなのよ
 貴方が迎えに来てくれるから
 今夜もシンデレラの様に待つわ
 何度も何度もパソコン越しに見ているの
 早く夜明けの蒼さに
 カーテンが染まってくれないかと

 ………貴方に……会いたい。

目覚まし

 AM4:00
 私は物語の夢を見ている
 まだ夜も明けない静かな部屋

 また貴方は微笑んで下さるかしらん
 驚いて下さるかしらん

 冒頭で思わず二度も
「えっ!」
 と、驚かれたから
 私は可笑しくて仕方なかったの
 貴方の色んな表情が見たくて
 まんまと罠に嵌る貴方が可愛らしくて仕方無い

 そんな事を想って書いているのよ

 少しだけ……少しだけらしくも無く落ち込んでいたの
 何時迄こんな不甲斐ない気持ちでいれば良いのかと
 私は水槽の中の海月みたいに
 ふわふわ……そわそわ……ゆらゆら……

 それを見兼ねた貴方に
 私は次に書き上がった物語を不安そうに読ませる
 怖い先生に宿題を提出するような気分だったわ
 けれどどんな時でも私の物語をきちんと読んでくれる
 そんな貴方を好きになったの
 私の処女作を鞄に入れて
 お守りの様にバスに乗ると
 私をそっちのけで読み始める
 何度も何度も……読み飽きないのかしらん
 そう思える程
 私は呆れて貴方に言ったの
「ねぇ……私だって、そんなに読み返さないわよ」
 と。
「だって……これは君だろう?……君の初恋ならば、これは教訓。こうなるなって。反面教師。だから何度も読む。」
 そんな理由で読まれているなんて
 私、心にも思わなかったわ

 それから暫く経つと私のお気に入りの本が消えている
 沢山のマーカーで線を引いた程大切な本
 それも気付いたら貴方は鞄に潜めていらっしゃったのよ
 その時はこんな言い訳をしていたわ
「君の思考が分かるんじゃないかと思って……。」
 流石に笑ってしまたわよ
 貴方の読む本は
 全部私の世界で出来ているのですから
 挙句、自分で買った本には直ぐに興醒めなさるのよ

 先日
 ボロボロになってきた筈の
 私のあの大切な本を探しましたら
 何故か新しくなっているのです
 私は夢でも見ているのではないかと思い驚く
 辺りを見渡せば
 きちんと私が大事にマーカーで線を引いた本がある
 思わず手に取り見比べてしまいましたが
 やはり同じ本が二冊
 しかも貴方の積み本の一番上に堂々とあるではありませんか
 私が仕舞い込むのが嫌で
 とうとうご自分で買ったと白状なさればいいのに
 貴方は書かなくても私を笑わせ
 書かずとも驚かせ

 狡い人……。

 そして泣きそうな顔で宿題を提出する私に言うのよ
「……やっと君らしくなった。」
 と。
 全部知ったような事を言うのに
 何故か嬉しくて……

 それは貴方がくれた終止符だったのね
 もう不安に落ち込んで書く必要はない……と。

 貴方の鳥は今日も自由に
 夢の中を飛び回る

 そして夜が明けたら
 早く早くと囀り
 読んで読んでとはしゃいで
 貴方の唇を嘴で突いて上げる

「……ねぇ、読書は愛ですのよ。」

 私が言ったあの言葉……覚えていらっしゃるかしらん?
 貴方の横顔……色んな表情を
 筆を休めて眺めるだけのあの静かな時間
 貴方が私を知ろうとして
 真剣に追いかける目

「……如何でしたか?」
 と、私は貴方が読み終えると何時も直ぐに聞くの
 本当は貴方の満足も不満足も分かっているのに
 貴方が読んでいる隙に
 私も貴方を読んでいるのですよ

 貴方の答えはいつだって
 私を抱いた後と変わらない
 甘い言葉ばかりなの
「それじゃあ、何でも良いの?良くならないわ。」
 と、言わないと本当の感想も言ってくれない
 私が少し不機嫌に
「興味もなかったのですね。」
 そう言うと
 やっと何処がああだのこうだの言って下さるの

 貴方もきっと
 私と抱き合っているように
 幸福な微熱にやられていたのよ

 ……だから忘れないで下さい
 本を読むは愛そのものだと

 ねぇ、貴方……夜が明けたら
 また愛して下さいませね。

 ――――――――――――――

 追伸 起きた貴方からきちんと掲載許可頂きました。


キモチばかり

 ああ……貴方、聞いて
 私、一年生き延らえました
 貴方を怖がらせたくなくて
 縁側でお茶を啜るお約束も守りたくて
 この日を迎えられるのです

 私の特別
 普通な筈の特別
 どうして涙が出そうなのでしょう
 時計の針を気にして子供みたい
 困りましわ……明日の休みの代わりに物語を書かなくては……
 キモチばかりが明日へ行くのです

 貴方が目の前に買って来てくれたミニブーケが
 そんな心を少しだけ穏やかにしてくれます

 買い出しに行った貴方は
 何時も食べきれないからと
 丁度良いケーキがあったと微笑む
 私にも見えぬよう
 そそくさと冷蔵庫にしまってしまわれた

「……明日はのんびり出来ればいいわ。まだ書く事あるし。」
 少しがっかりするかと思ったけれど
 数日前から言っていたので気にしていないみたい
「……明日、荷物届くから。それで良いよ。」
 と、珍しい事を言うの

 何時もは私を振り回す程
 少しでも時間があれば出掛けよう
 天日干ししないと
 運動しないとねって言うのに

 ねぇ……お花さん聞いて
 結局はあの方は落ち着いていられないと思うの
 やっぱり書き物は進めておいた方が利口よね
 始めは旅行に行こう
 あっちもそっちもって騒いでいらしたのよ
 私が
「良いですか?私は大事な日はお家にいたいのです。
 クリスマスなら派手なpartyよりアットホームに家族と語らいたいのです。……お分かり頂けましたか?」
 と、すまし顔で言ったのです。
 すると貴方はきょとんとして、
「そうか。分かった。じゃあ、家で全部祝えるようにしよう。」
 なんて、言い出すのです。
 それで、初めて見る事が出来たの。
 可愛いお花とケーキ屋さんの袋……
 大小沢山の袋を持って帰る姿
 全部私の為
 全部貴方の両手の中
 その姿が嬉しくて愛おしかった

 ねぇ、貴方……色々言ったけれど
 靴も脱げずに狼狽える貴方の姿を見れただけで
 私は十二分に幸せです

 一番のプレゼントは
 そんな貴方と出逢い
 こうして一年を一緒に数えるだけで良いのです
 何時死ぬか分からなかった私を
 こんなに幸せに出来たのだから
 不安も無く日々を数えられるようになりました
 季節が過ぎる事に切なさを感じなくなりました
 新しい今日も
 季節も好きになりました
 だからかしらん?
 長生き出来そうな気がします

 貴方が連れて来て下さった花を見ているだけで
 生きている今を大事にしようと思えるから

「ドライフラワーを探したのだけど、見当たらなくてね。」

「これで良いです。……これが良いのです。……生きていると感じられるから。」

 どの花瓶に差しますか?
 綺麗なグラスにしますか?

 出来れば私
 この小さく可愛らしい花束を
 この胸に抱きしめて包み込んでいたいのです

「後で絶対、起こしてね。」
 三度も言って
 買い出しに疲れた貴方は仮眠を摂る
 時計が24時になるまで後3時間

 貴方の為にケーキを焼いて
 花を生けて
 ちっとも物書きが進まなかったら
 貴方なんて言うかしらん?

 夜更かしなんて出来もしない癖に……
 結局私の作るケーキを1ホールごと食べてしまうのに……
 そんな貴方とだから
 生きていて……良かった

お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。