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相手が悪いと思い込んでいると、自分の問題に気づけない

こんにちは公認心理師の鶯千恭子(おうち きょうこ)です。
今回は「仕返しの罠」について学んでみましょう。

仕返しの罠

「仕返しの罠」とは、傷つけられたことに対して強い怒りを感じ、許せない!と思ったり、同じような目に合わせてやる!という心理が働いた時に、隠れた罠にはまらないように注意しましょう。という意味だと思ってください。
仕返しを企むというほどではなくても、陰で悪口を言うという程度のことも含みます。

理不尽なことをされたり、傷つけられれば、誰でも多少なりとも相手が同じような苦しみを味わえば自分の気持ちも少しはおさまる、と思いがちです。
ただ、実際は思っていたほどの効果は得られないどころか、長きにわたって苦しんだり、とらわれてしまうことも多いものです。

怒りのブーメラン

その一つに、自分が相手に放した攻撃が、更なる仕返しとして返ってくるんじゃないかと不安を抱えることがあります。
まさに「怒りのブーメラン」。
そうなると、常に警戒心を働かせ、次の攻撃に備えなければならなくなりますよね。
いつまた攻撃が襲ってくるかわからないと身構えるうちに、心身ともに疲弊していく…なんてことが起こります。

自分の問題に気づけない

もう一つは、自分の問題に気づけなくなるということがあります。
もったいないことだなと思うのですが、相手が悪いと思い込んでいると、隠れた自分の問題に向き合えなくなってしまうのです。
関係性の問題は、どちらか一方に非があるというよりも、双方が関係の悪化に加担していることが多いです。

「自分の意見をちゃんと伝えていない」
「相手の気持ちを理解できていない」
「曲がったことが許せず寛容性がない」
「感謝を言葉にできない」などなど。

起こる問題の背後には様々な要因が隠れていて、原因は相手にあると思い込むことで、根っこにある問題の解決が先伸ばしにされるケースが多いなと感じています。

よくある悪口大会のような飲み会も、注意が必要です。
ストレスを発散し「あースッキリした!」という体験は、心を健康に保つためには必要なことですが、それはあくまでも「ストレス発散」が目的であることを忘れないことです。

つまり、問題の解決にはなっていないのです。
一時は問題が解決したかのように見えても、時間と共に、同じテーマの問題に悩まされることになるのです。

感情を鎮めて論理的に考える

感情が揺れやすい人は、論理的な思考が苦手な人が多い傾向があります。
また、高い思考力があっても、大きく振幅する感情に飲み込まれてしまい、平常な時には想像もつかない決断をしたり、行動をとってしまうことがあるのです。

ではどうしたらいいのか。
まずは自分の癖に気づくこと。
気づけたらぜひやっていただきたいのがライティングです。
ライティングとは日記のようなもので、文字にしてアウトプットするのです。

自由に書き出すのもいいですし、興味のある方はある手順に沿って書き出す方法にも挑戦してみてください。

<やり方>
お気に入りのノートを一冊用意していただき「わたしの思考整理ノート」と表紙に書いて、日付と共に「SOAP」にそって書く習慣を作ってみます。
「SOAP」とは、「Subject(主観的情報)」「Object(客観的情報)」「Assessment(評価)」「Plan(計画)」のこと。
医療の場で広く使用されるカルテの記録方法の一つです。

【例】をあげてみましょう。
S(Subject 主観的情報)
「本当に腹が立つ!話しかけても無反応だし、聞こえているのに返事もしない。ご飯の支度も、出来上がるまでソファで寝そべってスマホをいじりながらただ待っている姿を見るとイライラする。そもそもこの結婚は間違いだったんじゃないか。」

O(Object 客観的情報)
「共感的な反応を返してくれないことで傷ついているんだ」
「生活の様々な面で不公平感を感じているんだ」

A(Assessment 評価)
会話のパターン、家事などの役割のパターンが固定していることに、ストレスが高まってきている。
ストレスが大きくなり、解決に向かわないことで、結婚生活そのものが問題だったと結論づけるほどエスカレートしてしまっている。

P(Plan 計画)
感情が高ぶった時は手を止めて深呼吸するなど、まずクールダウンしてみる。
食事の支度など家事の場面で「手伝ってくれる?」と声をかけてみてはどうか。
話し合いを提案してみてはどうか。
・思っていることを冷静に丁寧に伝えてみる。
・解決への方策が欲しいので一緒に考えてと言ってみる。
・例えば、週に1日「役割を逆転する日」を作ってみないかとそのメリットを交えて持ちかけてみてはどうか。などなど・・・

ポイントは客観視をすることと、じゃあどうする?という計画を立てること。
視野狭窄に陥って、思い込みを強めないことです。

うまくいかないことはたくさんあります。
特に人間関係は、そんなことばっかりだという人もいます。
要は、お互いの関係がもっとストレスの少ないものになればいいわけですからね。
そこで注目したいのが「思い込み」。
思い込みに気づくことは容易ではありませんが、もし気づけたら、選択肢は一気に広がりますからね。

鶯千恭子(おうち きょうこ)

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