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〈公開保育レポート〉5/12あだちみどり幼稚園(埼玉県志木市)

2023年5月12日に埼玉県志木市のあだちみどり幼稚園にて公開保育を実施しました。午前中は自由遊びとクラス活動の見学、午後はゲストの講演とパネルディスカッションを行いました。全てのプログラムを記事にしていますので興味のある内容からチェックしてみて下さい。アーカイブ動画はこちらです。

アーカイブ動画〜午前の自由遊びとクラス活動の見学〜

アーカイブ動画〜午後の講演とパネルディスカッション〜



あだちみどり幼稚園についてはこちらのベージをご覧ください。

自由遊び

登園してきた園児たちは、真っ先に大好きな園庭ASOBIOへと向かいます。起伏のある地面にガチャポンプで水を流し川を作ったり、穴を掘って泥団子を作ったり、築山のてっぺんから赤く色づいたジューンベリーの実を摘んだり……。次々と遊びが生まれていました。

異学年の園児が交わり、「名のない遊び」が繰り広げられていました。
iPadも自由に使えます。
見つけた植物や虫を写真に撮ったり、音を創るアプリ「おとねんど」で遊んだり。
大発見コレクションを図鑑にしています。ICTは自然との相性もとても良い道具です。

子どもがワクワクする空間ASOBIO。先生が設定しなくても、好奇心・探究心・チャレンジ精神・チームワーク、子どもが本来持っているさまざまなチカラが引き出されます。
ASOBIO詳細は以下をご覧ください。

今回は年長3クラスの保育を公開しました。

プログラムその①きっつ「らくがキッズ」

iPadに指で簡単に絵がかける「らくがキッズ」。国際交流の体験で爬虫類に触れたことで生き物への興味が高まっているにじ組さん。担任の高橋先生は普段お絵描きに苦手意識を持っている子どもたちが多いと感じていたので、これを機会にiPadでのびのびとお絵描きを楽しんでもらいたいと思っていました。

2〜3人で1台のiPadを使用しました。共有することでアイデアを出し合い、共創することができます。iPadならすぐにやり直しできるので、失敗を恐れずどんどん描くことができます。

にじ組さんは今回初めて「らくがっキッズ」に触れます。まずは操作方法を先生に教えてもらい、グループで順番にiPadを操作してお絵描きしてみました。操作はすぐにマスター!グループで話し合い、色々な下絵から好きな絵を1枚選んで自由画を描きました。

どの下絵にしようか…?即決するグループ、意見が割れてしまうグループも?!

クレヨンや絵の具でのお絵描きは「一人一枚」が一般的だと思います。しかし、iPadでのお絵描きは、「グループで何枚も」描くことができます。意見が割れてしまっても、「じゃあ次は●●の絵にしようね」と譲り合うこともできますね。
また、「らくがキッズ」は描いた後、クラスのみんなの絵が瞬時に共有されます。みんなどんな絵を描いたのかな?他のグループのアイデアを見て、さらに発想を広げる子どもたちの姿も見られました。

続いて発表の時間です。

「レインボーソフトクリームです!」はにかみながらも、発表できました。

「らくがキッズ」は家庭のスマートフォンにもダウンロードができます。園のIDとパスワードを入れると、保護者も同じ絵を閲覧できます。どうやって描いたのかの軌跡をたどることもできます。
上手に描けたのか?ではなく、どんな想いで描いたのか?どうやって描いたのか?ICTを使えば園でも家庭でも会話が弾んだり、表現することに喜びを感じたりといったきっかけを創ることができますね。

プログラムその②きっつアース(国際交流)「マレーシアの昆虫」

ほし組さんでは、オンライン国際交流を実施しました。
普段からASOBIOで虫探しをしているほし組の子どもたち。オンラインでマレーシアとつなぎ、エニス先生から珍しい昆虫を見せてもらいます。一体、どんな虫と出会えるのでしょうか。

マレーシアってどこにあるのかな?
きっつアースは英語を聞く、話すことが目的ではなく、世界はさまざま、丸い地球を体感することを目的としています。
ガイドのMimmyちゃんがマレーシアに案内してくれます。現地の人が何をしゃべっているのか分からなくてもMimmyちゃんがフォローしてくれるので、先生も安心です。

いよいよエニス先生登場です!最初は緊張気味だった子どもたちですが、フレンドリーなエニス先生の笑顔につられ、少しづつ笑顔が出てきました。
早速、日本では身近で見られない、不思議な昆虫を見せてもらいました。

いつも捕まえているカマキリと全然違う!驚きと発見の連続で園児さんたち大興奮です。
クイズ大会も交えながら、色々な珍しい昆虫を見せてもらいました。

地図を見ただけでは「マレーシア」という国名と場所以上の何かを想像することは難しいでしょう。しかしこの様に実際に現地の人と交流すれば、「昆虫大国!」というイメージを持つことができますね。そこから、なぜマレーシアには日本と違う昆虫がいるのか?マレーシアで「ありがとう」は何て言うんだろう?と次々と興味が発展していくことでしょう。

プログラムその③きっつアース(国際交流)「インドの食べ物」

野菜を育てて食べているつき組さん。これまで、わくわくスコープ(電子顕微鏡)とiPadで野菜の断面を覗いたり、写真を撮ってみんなで鑑賞したりと野菜への関心が高まっていました。そんなつき組さんにインドのサンギータ先生がインドの野菜や果物を紹介してくれました。

甘いかな?苦いのかな?見たこと無い外見の野菜や果物を見て、味も想像つきません。
クイズで盛り上がるつき組さん。
中からあま〜い実が出てきた!真剣な眼差しのつき組さん。

インドはカレーだけじゃないんだね!日本と同じで色々な野菜や果物を食べているんだね!食に対する関心がますます深まったつき組さんでした。

オンライン公開保育でのご質問

今回の公開保育は、オンラインでもたくさんの園さんがご参加くださいました。オンラインでも、先生の声かけや遊びの環境についていろいろご質問をいただきました。ここで、時間内に回答できなかったご質問について、担任先生にご回答いただきましたので、ご紹介します。

Q:ipadを自由に手に取ってあそばれていますが、どのような約束をして子ども達におろしていますか。
A:①大切に使うこと ②お友達と仲良く協力して使うこと ③先生の話を聞く時にはすぐに手を止めて話を聞くこと。
を子ども達に伝えてから使用しています。一、二度全体に伝えると、子ども達はしっかりお約束を意識して使っています。細かく何度も伝えなくても上手に遊ぶ姿が見られています。

Q:一斉活動でのICTの取り組みを詳しく教えていただければと思います。
A:以前まではアートポン、らくがきっずがほとんどで、みんなだけの水族館を作ってみよう!下絵を使って自由に描いてみて発表してみよう!と流れが大体決まっているような感じでした。
昨年度からは自由に使える頻度を増やしたり、先生達が以前より手軽に保育にiPadを取り入れられるようになってから活用の幅が広がっています。
事例① 野菜の種や苗をワクワクスコープやiPadを使って観察。子どもたちは何の野菜ができるかは知りません。観察して、想像を膨らませています
事例② Googleアースを使って自分の住む町や地球に目を向けてみる。日本の周りには海があってその先に他の国があることを視覚的、感覚的に知ることができています。自分の家がどこにあるかを試行錯誤しながら探すなど、自ら疑問を持って解決する姿も見られています。
事例③ お祭りに使うお神輿を作る際に、「日本」というテーマに合わせた装飾について調べ、みんなで考えました。また「日本歌舞伎」の動画を調べて写真だけでなく動画で見て知ることができました。

Q:子どものICT活用で先生が「面白いな!」と思った事例は何かありますか。
A:自由に使えるように置いておいた時に、子どもがカメラの動画モードを起動し、インタビューごっこをしていました。とても面白く発展していきそうな遊びだなと感じました。日々の生活の中でいろんなことをよく見て、大人の姿を真似して遊ぶ様子が見られています。

「絶対に継がないと思った園運営」~園のこれからのビジョン・児童発達支援事業~
あだちみどり幼稚園 理事長 大熊啓太 先生

継ぐつもりのなかった園を継ぎ、わずか28歳で理事長に就任した大熊先生。継いだからには地域に愛され貢献できる幼稚園でありたいと、試行錯誤しながら園を進化させてきた姿を詳らかにお話いただきました。

駅前保育所の開設、幼稚園のこども園化に続き、2023年5月に児童発達支援施設「B.A.S.E」を開所しました。

引き継いだ当時の園は「あだりみどり幼稚園を卒園すれば小学校に入ってからも安心ね」と保護者から言われるような、いわゆる「しつけ重視」の園でした。鼓笛隊の活動、皆同じ材料を使い、作り方を指定しての制作活動など、先生から園児への「一方通行の保育」をしていたそうです(それが当たり前で疑問も持っていませんでした)
しかし270人いた園児は毎年減り続け、ついに170人に。園に入る前は接客業に就いており、保育についての知識も自信もなかったという大熊先生は、とにかく保護者に気に入ってもらおうと「接客的なサービス」を重視していた、と当時を振返ります。大熊先生自身だけでなく、現場の先生にも徹底して保護者対応を丁寧にするようお願いしたそうです。その甲斐もあり、園児は3年間で230人まで回復しました。

しかし、先生のベクトルが園児よりも保護者に向いてしまっているのではないか?現場は疲弊しているのではないか?との思いもあったそうです。保育内容も少しずつ見直してはいるものの、保育のやり甲斐や楽しさにのめりこんでいた大熊先生は、またまだ「一方通行の保育」から脱却しきれていないと感じていました。

そんな時に出会ったのが「きっつ」でした。
ICTという道具があれば、子どもたちから発信できたり、先生が見取りやすくなったり、「双方向の保育」がしやすくなるのでは?と大熊先生は考えたそうです。
また以前は起伏も自然も無く、季節の変化や生き物の息吹を感じにくい環境だった園庭を「ワクワクする空間」に変えました。子ども主体の保育を実現するために、先生も主体的に楽しく保育できる環境を、次々と整えて言ったのです。

ASOBIOで子どもたちが虫や生き物に興味を持ったことがきっかけで、自身もカメやカエル、トカゲを飼いはじめた高橋先生。

今でも「今日は一日やりたい事を自由にやる日」「運動会の競技は子どもたちで決めよう」など、子どもたちが選択できる機会を増やしたり、一歩一歩「一方通行の保育」からの脱却を進めています。

続いて、2023年5月に開所した多機能型事業所「B.A.S.E」についてお話いただきました。
あだちみどり幼稚園では、個別で配慮が必要な子ども達もできる限り受け入れてきました。加配の先生を配置するなどできるかぎりの体制は作りますが、どうしてもクラス活動の中で担任が一人で運営するには無理も出てくる。専門知識やスキルを培うのには時間もかかるし、専門チームを組成するには経営的に無理が生じる。ということで園と密接に連携できる施設を作ろうと思い立ったのが2022年夏でした。そこから埼玉県や志木市など行政機関とかけあい、急ピッチで立ち上げました。

あだちみどりB.A.S.Eのコンセプト。現在は在園児のみの通所ですが、将来的には園外の園児や学童も受け入れる多機能型事業所になっています。

あだちみどりB.A.S.Eは「発達の凹凸に関わらず、すべての子どもたちが安心してのびのびと過ごすことができる社会を」という想いのもと、幼稚園と一体となって一人ひとりに個別最適な環境を作ることを前提にしています。

支援児さんも朝は幼稚園に登園し、クラスのお友だちと一緒に遊びます。10時〜夕方までB.A.S.Eで過ごし、帰りの会からは再び幼稚園に戻りクラスで過ごします。その間担任の先生とB.A.S.Eの先生も簡単な引き継ぎを行い、一体となり一人ひとりを支援しています。
一人ひとりの状況に合わせ、プログラムを選択、随時変更できるようにしています。

このように「幼稚園型療育」という新しいカタチで、すべての子どもが安心して過ごせる環境づくりを模索しています。
まだ開所間もないB.A.S.Eですが、嬉しいエピソードがありました。
自閉症のA君が声を出して笑う姿が見られるようになったそうです。そのA君が幼稚園のクラスに居る時に、周囲のお友だちにちょっかいを出すようになりました。担任の先生はよくない行動が出てきてしまった、とネガティブに受け止めました。一方、その行動をB.A.S.Eの先生は周囲のお友だちに興味を抱き始めた証拠とポジティブに受けとめました。
その事を担任の先生に共有することによって、担任の先生も「これで良かったんだ」と安心したそうです。早くも「幼稚園型療育」の効果が出始めているのではないでしょうか。

「すべての子が楽しく成長できる学び」
HILLOCK初等部スクールディレクター 蓑手章吾 先生

蓑手先生は冒頭、あだちみどり幼稚園のASOBIOや保育を参観した所見をお話しくださいました。ASOBIOに入り、土の上に水を流したら川ができる。自然は可塑性に富んでおり、これが自然の醍醐味であり、さまざまなものを生み出せる。保育では園児がiPadにすらすらと絵を描く様子を見て、ICTも「自分で何かを及ぼせる」という意味で自然と似ていると感じたそうです。
蓑手先生は元は公立小学校の教師でした。杉並区立養護学校に勤務した経験が今の教育感にも大きな影響を与えていて、Hillock初等部創設にも繋がりました。

蓑手先生のキャリア変遷。現在はHillock初等部の運営の傍ら、行政機関とも関わり、日本教育の改革も担っています。

Hillock初等部詳細はこちらから。

「すべての子が、楽しく成長できる学びの場」を創るべく、Hillock初等部を創設しました。
Hillockにはユニークなルールがいくつかあります。
・無学年制
・ランチは毎日公園で(お天気の日は)
・多数決禁止
テスト、通知表、ノルマ(●●までやりなさいという課題など)は全学年で一切ありません。
これらがなくなることで「比べる」ということが起こらなくなったそうです。掛け算をやらなてもOK!でもやりたくなったら、先生はとことん付添いフォローする。Hillockでは先生も「シェルパ」という役割として位置づけられています。物事を教える立場ではなく、学びたい生徒に寄り添い伴走する役割なのだそうです。

「主体的」という言葉を大人の都合で言いたくない。と蓑手先生。Hillockでは子どもが興味関心を持った時に、「これをやった方がもっと幸せになるよ」と声かけるそうです。すべての子が楽しく成長できる学びを常に心がけています。
ところで「よい教育」とはどんな教育なのでしょうか?蓑手先生は会場の先生方に疑問を投げかけました。

偏差値の高い学校を卒業してよい会社に入って高収入が子どもの幸せ?
蓑手先生が考える教育観

学びの楽しさ、世界のおもしろさに気づけば、自ずと自分の成長戦略を考え、将来的な幸せを拡張する力がつく、と考える蓑手先生。
子どもは誰でも自ら成長することができるはずなのに、大人の、
・「こうすべき」
・「自分もこうだった」
・「しょうがない」
・「こうしてほしい」
・「嫌われたくない」
・就学先への忖度
・大人内での評価
・親の不安
といった言動や振る舞いが阻害しているとおっしゃいます。
なりたい自分をイメージして、できないことができるようになった、自分も捨てたもんじゃない、と思えることが成長に繋がります。

ゆらぎながらも上の方向に変化していくことが成長

例えば「絵を描く」という行為。ポケモンが好きでその絵を描くことから始まったとしたら、大人は、「昨日よりももっと描けている(変化し成長している)かな?」という視点に立ち、「次は他の絵も描いてみたら?立体物を造ってみたら?」など声をかける事が成長を促します。「子どもはやらせないとやらない、というのは大人の思い込みです」と力強く仰っていました。
今、Hillockでは興味が高じて中学、高校の数学を学んでいたり、韓国人のお父さんに喜んでほしくてハングルを一生懸命覚えたり、みな自ら何をやるべきか選択して、日々成長を続けているそうです。

「これからの幼児教育を考える」
 スマートエデュケーション代表取締役 池谷大吾

最後に池谷より「ASOBIO」と「きっつ」について触れました。

見守る先生がいる園だからこそ、ダイナミックな遊びが展開できます。
You Tubeやゲームの様な受動的な使い方ではなく、
ICTは「創造的な活動」ができる道具です。

きっつは園に体験セットをお届けし、無料で体験することができます。お申し込みはこちらから!

パネルディスカッション

最後は年長担任の先生がた、園長小田先生も交え、パネルディスカッションと質疑応答を行いました。

会場の先生がたのスマホからリアルタイムに質問を受付け、多くのコメントが寄せられました。

園舎の建替え、ASOBIOのある園庭、ICTの導入で子どもたちにどう変化があったのでしょうか?外から中の様子が見える園舎になったことで、他のクラスや学年の様子もうかがい知れ、子どもだけでなく、先生も興味や関心が広がったそうです。それをICTを通じて表現し、伝え合う。
ASOBIOでは多少の危険も伴いますが、日頃から保護者とはそこで得られる経験体験の素晴らしさをドキュメンテーション等で共有しており、擦り傷やどろんこの衣服に対しても理解を頂いているそうです。
むしろ怪我はASOBIO内ではなく、それ以外の場所で起こることが多いそうです。起伏のあるASOBIOでは園児も無意識に加減する事を身につけるのです。
子ども主体の保育を実現するために、担任の先生がより保育に集中できるように、あだちみどり幼稚園ではさまざま工夫をしています。詳しくは動画をチェックしてください!

地域に愛される園になるために、園が求められていることは何なのか?を常に自問自答しているあだちみどり幼稚園の先生たち。結果園児や保護者に喜ばれ、その和が先生にも広がり、明るい光につつまれているあだちみどり幼稚園でした。

次回公開保育のお知らせ

次回の公開保育は、7/26(水)宮崎県宮崎市の中央ヴィラこども園で実施します。
こちらは現地参加のみ、オンラインは実施いたしません
ご興味のある方は、ぜひお早めにお申し込みください
詳細はこちら↓





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