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【セミナーレポート】園の当たり前をやめた!採用に困らない人気園は何が違う?

おうちえん編集部 大澤です。8/24(火)に開催したオンラインセミナーのレポートをお届けします!

職員募集しても応募が来ない、採用してもすぐに辞めてしまう、職場のコミュニケーションがうまくいっていないなど、人事面での課題を抱えている園さんも少なくないのではないでしょうか。
今回のテーマはズバリ「先生が幸せに働ける園」。職員採用がうまくいっている人気園さんにその秘訣をお話いただきました。

※こちらからセミナー動画をご覧いただけます。

【福岡県 りんでん保育園】「衣装・背景なしの発表会!子ども主体の保育に転換」(3分49秒〜) 

福岡県糸島市にあるりんでん保育園は、毎年100組以上の保護者が見学に訪れ、40名以上の学生が実習を行う人気園です。キッズデザイン賞審査員特別賞受賞の素敵な園舎も大変魅力的ですが、「最大の強みは『人』」だと主任の小嶋先生は語ります。

園には20代から70代という幅広い年齢の職員が在籍していて、卒園生が先生として戻ってくることも少なくないそうです。離職率も低く、採用にもまったく困っていないというりんでん保育園。その秘訣は、どこにあるのでしょうか。

最大のポイントは、園の魅力を先生個人の頑張りに委ねるのではなく、先生の魅力・能力がさらに花開くような仕組みづくりに組織として本気で取り組んでいることにあります。

例えば、外部講師を呼び、現場の先生の声を吸い上げて園の魅力・強みの棚卸しを行うこと。園の理念や保育への思いを見つめなおし、それを先生が中心となって「ポリシーブック」としてまとめること。こういったことに取り組む過程で、笠先生はりんでん保育園の強みは「人」だと明確に意識し、その強みをさらに強化するための保育改革・業務改革をスタートさせました。

保育に関しては、子どもたち主体の活動に切り替えるべくさまざまな行事を見直しました。こども主体ではない行事は引き算し、発表会の内容・取り組み方を変え、きっつ(スマートエデュケーションのICT教材)を導入するなどして改革を進めました。また業務面では、事務作業をICT化し残業時間も大幅に削減するなど本格的な働き方改革を行いました。

こういったことを経て、「先生に余裕が生まれてきた」と小嶋先生。園にとって一番大切なのは子どもであることはもちろんですが、先生の幸せも同じように大切にすることで、園が抱えていたさまざまな課題が解決され、先生・子ども・保護者の関係に素敵な好循環が生まれ始めたそうです。

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先生が安心して楽しく働ける職場をつくることで離職が減り、採用にも困らなくなったというりんでん保育園。今では新規採用のほとんどが職員・元職員の紹介だということです。

一方で「若い世代に『保育士の種をまく』ことにも力をいれている」と語る小嶋先生。中高生の職場体験を受け入れたり、卒園生に遊びに来てもらったりと、若い世代にもりんでん保育園の魅力を伝え、「保育士になりたい」と思ってもらえるような活動を意識して行っているということでした。

最後に小嶋先生は「『園の宝物は職員だ』と園長、主任が胸を張って言えることが大切」だと語ってくれました。たとえ子どもが笑顔であっても、先生の顔が曇っていたら、それはよい保育環境とはいえません。先生を大切にすることが、いかにたくさんのものを園にもたらしてくれかがとてもよく伝わってくる事例でした。

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続いて園長の笠先生は、これから園が生き残っていくために必要なことについて話してくれました。

まずは園の強みを園全体で把握し、その強みをさらに充実させること。さらにはそれを園外にアピールすること。その両輪が非常に重要だと語りました。

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テクノロジーが進化し、モノも情報もあふれる今、職員の魅力がそのまま園の魅力に直結する時代が来ています。よい先生に長く働いてもらうためには、園の理念がぶれないことはもちろん、お互いがお互いを大切にし「なにかあっても助けてもらえる」という安心感をもって働くことのできる環境をいかに担保できるかが重要だと笠先生。そのためには、園長と主任が同じ方向を向いていることもとても大切だそうです。

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最近では、保育フェアや学校説明会で現場の先生がスピーカーとして積極的に夢を語ってくれているという笠先生。「現場の先生が魅力をたくさん語ってくれるような園を作っていきたい」ということです。

【埼玉県 あだちみどり幼稚園】「園に売りはない。コミュニケーションが命」(31分10秒〜)

あだちみどり幼稚園は埼玉県志木市にある幼稚園型認定こども園です。小規模保育園も運営しており、合わせて46名の先生が在籍しています。

園長の小田先生は、冒頭で「あだちみどり幼稚園の強みは『特になし』」と言い切りました。そしてその裏にある思いについて、次のように語ってくれました。

「あだちみどり幼稚園には『人間の原点に戻ってこどもを育てる』という理念があります。人はその存在自体が尊いものであり、なにかができるようになるために生まれくるわけではありません。ですから我々もなにか一つ特化して子どもを育てるということはしません。体をつかって水遊びや泥遊びをしたり、音楽に触れたり、農業体験をしたりと、幼児期の間にとにかく幅広い体験をしてもらい、子どもたちの育つ力のもととなる種をまくことができたら、という思いで保育をしています。芽を出ることを期待して種をまいているわけではありません。とにかく土壌を豊かにしたいという思いです。ですから『子どものここを育てます』という強みはないんです」

園児募集も職員採用にあたっては、キャッチーなキーワードがあった方が人目を引きやすいかもしれません。しかし小田先生はそういったことよりも「実際に園で過ごして雰囲気を肌で感じてもらったり、子どもを通わせている保護者やそこで働く先生の言葉を直接聞いて選んでもらう方がよっぽど本質的」だと語ります。

そのためにいつでもオープンでいること、先生同士の会話を増やし、実際のコミュニケーションを見てもらうことを何よりも大切にしているそうです。

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コミュニケーションの秘訣として、「とにかく普段から他愛のない会話ができるような雰囲気づくりを心がけている」と小田先生。子どもの小さなエピソードからプライベートのことまで、いつでもどこでも気軽に話ができるよう、園長先生自身が積極的に話しかけたり、先生方の話を聞いたりしているそうです。いつでも話しかけていいんだと、コミュニケーションのハードルを思いきり下げておくことで、はじめて悩みごとや相談ごとを話してもらえたり、先生のSOSをキャッチできる、と小田先生は語ります。

そして「先生が幸せに働ける園」にするために、小田先生がもうひとつ大切にしていることが「裁量は与えるが責任は意識させない」ということです。

「現場の先生が『これをやってみたい』というときに、『ご自由にどうぞ』と答えるのは、裁量を与えているのではなく丸投げです」と小田先生。園長先生や理事長先生がしっかりとサポートし、先生の挑戦を後押しすること、「うまくいかなかったときの最後の責任は園長先生が取るので安心して挑戦してもらいたい」ということを言葉はもちろん、行動でも示すようにしているそうです。「とにかく担任の先生ひとりに心細い思いをさせないことが大切だと思います」と小田先生は力強く語ります。

日頃からこういった雰囲気をしっかりと作り上げていれば、実習に来る学生にも自然と伝わるはずだ、と小田先生。いいことばかりではなく園の弱みや課題も正直に伝えたうえで、選んでもらうことを大切にしているそうです。

就職前の期待と就職後の実態に大きなギャップがあると、早期退職につながります。「リアルな姿を見せすぎてしまうと就職してくれないのでは?」と思う園さんもあるかもしれませんが、採用段階でよい印象を与えても、そこに実態がなければ幸せな結果にはなりません。働く前と後のギャップをできるだけ少なくすること、そして時間も労力もかかるかもしれませんが、先生がポジティブな気持ちで長く働けるような組織づくりに本気で取り組むことが、採用課題を解決する最良の方法なのかもしれません。

【埼玉県 つつじ幼稚園】「残業ゼロ。保育のプロである職員に最大の裁量を与える」(52分37秒〜)

つつじ幼稚園は埼玉県戸田市にある私立幼稚園です。副園長の飯島先生はセミナーに登壇するにあたり、主催のスマートエデュケーションから与えられた「残業ゼロ。保育のプロである職員に最大の裁量を与える」というテーマを見て、「現場の先生にある程度の裁量を与えているが最大とはいえない」と感じたそうです。そこで、園の実態を見つめ、今後のあり方を先生たちと一緒に考えたいという思いから、担任の先生に今の園をどのように感じているのか、ヒアリングをしてまわったそうです。

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その結果……「フルボッコでした(うちのめされた)」と飯島先生。先生たちが園のあり方、保育のあり方にいろいろな疑問や課題を感じていることがわかり、その思いを受け止め、実現していかなくては、という思いを持つとともに、率直な意見を伝えてくれる先生がいることが、つつじ幼稚園の強さだと改めて感じたそうです。

そして飯島先生は、「若い先生に自分の言葉で思いを伝えてもらうことこそが、これからの園のあり方、組織のあり方を考えるヒントになる」と、今回、新卒3年目で今年度初めて担任となった森先生に発表を託しました。

プレゼン資料なし、原稿なしの森先生の生の声。とにかく必見です。ぜひ動画を見てください!

どうしても動画を視聴する時間がないという方のためにお話を少しご紹介しますと、発表の副題となっている「『理想の園』なんてない」という言葉は、森先生が1年目のときに、学生向けの就職合同説明会で学生たちに伝えた言葉です。

夢と希望をふくらませて就職活動をしている学生に「理想の園なんてない」と語るのは、冷たい現実をつきつけるようでもありますが、これが就職1年目の森先生の実感でした。子どもたちのために全力で働きたいという情熱を持ちながらも、すべてが自分の理想通りにいくわけではありません。園で日々過ごすなかで、「これは本当にこどものためなのか」、「こうやった方が効率的なのになぜそうではないのか」と感じながらも、それを変えることができない。そして自分が理想とする環境でなくても子どもたちは自分自身の力でどんどん育っていく。そんな現実が「理想の園なんてない」という言葉につながっていきました

多くの先生が「変えたほうがいい」と思っているのに、それを変えられない理由は何なのか。森先生が一生懸命に考えた結果、その最も大きな理由は「園の伝統」であるということに気づきます。行き届いたマニュアルや綿密に書かれた行事報告書。ここまで築き上げられたてきたものを未来につなげていきたいという思い、また伝統という道しるべを失ってしまうことへの恐怖。そういったことから、やめた方がいいと思うこともやめられなくなっているのではないか、と語る森先生。もっと工夫して、もっと面白くできるポテンシャルのある先生ばかりなのに、そうできないことがもったいない、という正直な気持ちを吐露しました。

そして今日、あだちみどり幼稚園 小田先生の「裁量は与えるが責任は意識させない」という言葉に心をつかまれ、「こういうところで働きたいと思った」と語る森先生。「裁量を与える」=「好きにやっていいよ」ではなく、みんなで作り上げていくことが大切であり、そのためには園長・主任など上に立つ人から積極的に声をかけたり、現場の先生の声に耳を傾ける必要があるのではないかと語りました。

「理想の園はない」という言葉とは裏腹に、よりよい保育を実現し、より楽しく働くために、できる限りの努力はしたいという森先生の前向きな思いがとてもよく伝わる発表でした。チャット欄は森先生の発表を絶賛するコメントで大変盛り上がりましたが、自由に発言する森先生、そしてその隣に座って優しく耳を傾ける飯島先生の関係性にこそ「先生が幸せに働ける園」をつくるヒントが隠されているように感じられました。

パネルディスカッション(1時間10分17秒〜)

最後に、スマートデュケーションの池谷をモデレーターとし、登壇者全員でのパネルディスカッションが行われました。ここでは抜粋・要約してご紹介します(発言者の敬称略)

Q:先生がやめない要素として、給料や福利厚生も大切でしょうか?

(あだちみどり:小田)もちろんお給料も大切ですが、それよりも先生が「自分の価値が認められている」と感じ、楽しく働くことができているかの方が重要だと思います。いくら給料や福利厚生がよくても、存在が否定されたり、仕事がハードすぎたら働けません。やはり人間関係のよさにつきるのではないかと思います

Q:ひとりでもコロナ陽性者が出たら休園しなくてはならない状況ですが、コロナ対策はどうしていますか?

(つつじ:飯島)夏季保育は自由登園としています。9月からも通常登園にしようと考えています。

(りんでん:笠)当園は保育園なので、基本的に休めません。最大限の感染予防対策はとっており、すでにやり尽くしている感はありますが、保護者の意識が非常に高く、園に協力的だという点が大きなポイントとなっているかもしれません。なにかあったらすぐに連絡してもらえるので、そこから広げないということはできるのではないかと思います。

(あだちみどり:大熊)基本的な感染予防対策を行うことはもちろんですが、「園がここまでやっているのだから、それで陽性者が出たらもう仕方ないね」という雰囲気をつくるようにはしています。そのために、先生たちが頑張っている姿を一生懸命に伝え、こまめに情報共有をしています。誠実に対応する姿勢が日頃から伝わっていることが大切だと思います。

(スマートエデュケーション:池谷)いろいろな園に訪問していますが、コロナ対策ひとつにも園の価値観が出るなと感じています。最大限の対策はして、もう出てしまったら仕方がないという心持ちで構えていることも大切ですね。園の判断をしっかりと保護者に伝え、どんな人にもフェアに対応する、そこが先生の働きやすさにもつながっているのではないかと思います。

Q:りんでん保育園さんは20代〜70代の幅広い年齢の先生が働いているということで、世代やキャリアの長さによっていろいろな価値観や考え方が異なる場合もあるかと思いますが、そういった違いをどうやって乗り越えていますか?

(りんでん:小嶋先生)ベテランの先生の意見だけを聞いてものごとを進めるのではなく、若い先生の意見も尊重しています。会議のときに若い先生は言いづらいということもあるかもしれませんが、若い先生にも発言してもらうように気をつけています。誰かの意見を押し付けるのではなく、みんなから意見を聞き、みんなが納得することが大切ではないかと思います。

Q:つつじ幼稚園さんは残業ゼロということですが、なぜそんなことが可能なんですか?

(つつじ:飯島)当園では30年以上前から「残業はしない」というポリシーで運営しています。先代が「先生たちが幼稚園の奴隷になるのではなく、幼稚園を通じて充実した人生を送れるように」という強い覚悟をもって園を経営してきたからこそ実現できているのではないかと思います。今回のヒアリングで「30分でも残業できれば明日に仕事を引きずらずにすむのに……」という先生もいて、今のかたちが正しいのかどうか迷う部分もありますが、それでも「残業ゼロ」を貫きたいという思いはあります。

(つつじ:森)行事や製作の準備を始めるのが早いというのも残業ゼロの要素だと思います。期日ぎりぎりになって焦って何かをするということはないですね。

公開保育のお知らせ

今回登壇された園の素晴らしい事例を聞いて、実際に先生がどんな風に働いているのか、子どもたちがどんな風に過ごしているのかを見てみたいと思われた方も多いのではないでしょうか。以下の日程で、公開保育を予定しております。

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保育見学だけではなく、職員室の雰囲気を見せてもらったり、先生に直接質問をぶつけてみたりなど、インタラクティブな会にする予定です。オンラインでご参加いただけますので、ご興味あるかたはぜひお気軽にお申し込みください。

公開保育のお申し込みはこちらから!

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次回予告

次回のセミナーは9/17(金)16:00〜 「次世代経営者にズバリ聞く!スマートな世代交代とは?」です。ぜひご参加ください!


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