コメントリレー小説『創世』
ご参加いただいた皆さま
※この記事は、毎週土曜日開催の企画『コメントで、リレー小説しませんか』で紡がれた物語を編集したものです。
本編
その地には、枯れた草木、荒れ果てた大地、そしてすべてを奪っていくような冷たい風だけが吹いていた。
「この箱庭もつまんなくなったなぁ」
なかなか進化しない箱庭を見つめ神の一人がつぶやいた。
「いっそ潰して新しく作り直せば?」
もう一人の神が応えた。
「そうだなぁ..。潰すの面倒だし、
この世界と対の世界をつくるか。」
そう言って、オアシスのような美しい世界を、荒廃した世界の真上に鏡あわせのようにつくった。
その世界の住人は、神のように美しく
ただ、心だけが欠落していた。姿だけを持つ者。
私はカオナシ。
心も無し。
あるのは姿かたちだけ。
カオナシがひとりぼーっと佇んでいると
そこへ道開きの神「サルタヒコーン」が現れた👺✨
「カオナシよ。上を見よ。
あの荒廃した世界に、 お前の探し物があるぞ」
「カオナシ様ようこそ!
ずっと待ってましたー♪
私がご案内しましょう♪
こっちですこっち。」
浮かれたサルタヒコーンはやってほしいことを次々に口にしながらカオナシを荒地ワンダーランドへ案内した。
「賊がおりますんで気をつけてください。私以外は信用しないように。」
そこへサルタヒコーンと瓜二つな者がやってきた。
「カオナシ様! そいつニセモノですよ!」
「あはは、バレちゃいましたね。」
マスクを顔から剥がすと、現れたのは美少女。
「私、ウズメと申します。カオナシ様の胸に空いた穴に興味がありまして。以後、お見知り置きを」
その瞬間、カオナシは一目でウズメに恋心を抱いた。
サルタヒコーンの正妻だということも知らずに…(ノω・、)💧
カ「なんて魅惑的な女性なんだ。こんなに素晴らしい女性は見たことがない」
ウ「そんなこと言われたのずいぶん久し振り」
サ「カオナシ様、そいつは俺の女房だからダメっすよ」
カ「一夫一婦制でもあるまいに、共有すればよろしいじゃありませんか」
ウ「私はいいわよ」
サ「お前はそんな女房だったのかい。これは見誤った。カオナシ様、あんたにくれてやるよ」
カオナシ「ウズメを妻にめとるのは良いが、サルタヒコーン、あまりに女性を蔑視し過ぎではないか?」
サルタヒコーン「そうすっか?でも誰しも譲れない事ってあるんじゃないですか?カオナシ様」
カ「了見が狭い奴だな〜」
カオナシとサルタヒコーンが、話している間、ウズメはひたすらにカオナシの胸に空いた穴を見つめていた。
その穴を埋めたい。どうやって?
顔を、とウズメは思った。
あの穴に顔をウズメてみよう。
「その胸に顔をウズメし我が御霊、天空の城に統合の儀と成す」唱えたウズメは、カオナシの胸にその顔をうずめた。
するとカオナシとウズメの二人は、たちまちその魂が統合され、「アメノミナカオナシ」となった🙏✨
アメノミナカオナシとなった二人は、今までのはなしが一体なんのはなしだったのか記憶をなくして分からなくなったので、今までのはなしを回収業者に依頼した🛸
記憶をなくしたアメノミナカオナシが目覚めるとそこにはサルタヒコーンがいた。
サルタヒコーンはアメノミナカオナシにひれ伏しこの荒地ワンダーランドで一緒に国造りをしてくれるように頼んだ。
彼はそのときアメノミナカオナシのローブの裾をちょっとまくってみた。
男か女か知りたかったのだ。
神の中には男女の別には当たらない者もいる。
それでいて両性具有という話も聞かない。
サルタヒコーンが興味津々なのは当然のこと。
結果がどうなのかは後ほどとして、ちょっと場面を変えてみよう。
国造りを行うにあたって、
とりあえず降臨した場所になんか置いとくか。
巨大な石の社を適当に置き、その奥に、二つの世界の出入口地となる、地を地を繋ぐ階段が置かれた。
これから、ワンダーランドの人々は
我々と魂を統合して、どちらの世界でも
暮らせるようになるだろう。
アメノミナカオナシは巨石の上で踊ってみた。
それはまるで天の岩戸の前で乳を放り出して踊り狂ったウズメのままの姿だった。
その光と踊りに導かれた神々と人々が
ゾロゾロと集まってきた。
魂の統合の宴がはじまる予感。
宴、祭りの役割は、いつの時代も
大して変わらないようだ。
宴に際し、人々はサルタヒコーンにちなんで、とうもろこしを貢ぐことにした。
突然テンテルオオカミが現れ、
「これは何事ぞ? また弟でも攻めて参ったか? 妾はまた隠れねばならんのか?」
と仰られた。
アメノミナカオナシは静かにこう言った。
「生まれゆくもの。死にゆくもの。全ては同時の出来事。みな抱き締めたら踊りなさいな❗はっ✨」
カオナシの心に宿ったウズメの慈愛のエネルギーに、テンテルも心を動かされ、宴の舞が厳かに執り行われた💃💃
全ての者が心のままに歌い踊り、
神の心の穴を人が埋めていく。
神と人がひとつになる。
命の輝く美しい夜だった。
光も闇も混沌と、
あらゆるものが混ざり合い
ひとつの世界が創造された。
その混沌としたあらゆるものの渦のような世界に、ひとつの卵が生まれ落ちた。
皆が見守るなか卵が割れ、中から出てきたのは卵を手にした役場の高橋だった。
「集会の許可はとってますか?」
こうして法律が生まれた。
そして高橋の手の中の卵からもなにか生まれた。
高橋の手のひらの卵から出てきたのは、オレンジ色した可愛いひよこだった。高橋はこのひよこを「オンジ」と名付けた🐣
オンジが鳴くと、テンテルが目を覚まし
朝が来る。この世界の朝はオンジが鍵となった。オンジが鳴かない日は、夜のままなのだ。
夜が続くと悪者が跋扈するようになった。
その親玉の名はスーサと言う。
「親方、次はどうすんすか?」
「夜が明けないようにオンジを潰してこい」
「わっかりやした~親方ぁ~」
スーサの舎弟ヤスは千鳥足で飛び出していった。
「はて?」
ヤスはオンジがどこにいるのか実は理解していなかった。
困ったヤスは隣の集落の鶏小屋にやってきた。
「いるいる〜」
ひよこの一匹をむんずと掴む。
「とりあえずお前の心臓を持っていかねば、
俺が親方にやられちまう。すまんなー」
スーサに渡された刃が
ひよこに突き刺さる瞬間、
白い光が世界に放たれた。
そこ生まれたのは白い月を司るもの。
こうして闇にもうひとつの光が生まれた。
ヤスは図らずも神の親になった。
宙に浮かぶ白い月はあまねく地を照らした
あやしき影たちは、ことごとく地に潜ることとなった。
白い月を司る…
そうそれはまさしく、月読尊🌙
その日からツクヨミは闇の世界を照らす一筋の光となった✨
月読尊とスーサは共に夜を司る者たち。
並び立つはずもなし。
ここに夜を巡る一大決戦が勃発しようとしていた。
ツクヨミの光によって暴かれた悪者スーサは、憎々しげに言った。
「かくなるうえは……」
茅の輪大作戦‼︎(ドラえもんの声で)
身体に茅の束を身に付けてないと家族もろとも根絶やしにされる魔術を疫病に見せて執り行うのだった。
その目論みを知ったツクヨミは、魔術を祓う
巨大な茅の輪をあちこちに設置した。
が、「設置許可申請が出ていません」と
役場の高橋に撤去された。
「もう~こんなのやだやだやだ~😢」
箱庭をぐらぐら揺すって駄々をこねるのび太。「ドラえもん❗道具出してよ~♪」
ドラえもん「もう~のび太くんはいつもすぐ飽きちゃうんだから…仕方ないな~♪」
そしてドラえもんが出した道具は…🌈
「もしもボックス~」(大山のぶ代さんの声で)
しかしその中にはすでに役場の高橋が入っていた。
受話器をとる高橋。
「もしも……」
「もしも僕が神だったら...」
地球ごと茅の輪の中に入れてしまおう!
こうして地球は土星のように輪っかを抱えることになった。輪っかの上ではスーサ率いる悪戯癇癪軍団が、ぐるぐる駆け巡って、新月のときにだけ地球に降りてくるようになった。
未だに小競り合いはあるものの、地球の夜はツクヨミの支配下となった。
次に目指すは昼の世界。
そこには最高神の姉・テンテルが君臨している。
「周りを剥がして姉ちゃんを孤立させるか…………」
「混乱こそがワシの信条じゃ」
と突如現れたタケルが昼と夜とを混ぜ返す。
紫の雲が目まぐるしく回っているのをみな、口を開けて見入った。
「こ、これは。この世界は・・・」
この世界は静と動、秩序と混沌の繰り返し。
静が訪れた、秩序が成ったと思う世界も一時の夢、幻のようなもの。
やがて世界は変貌する、その螺旋は果てしなく上へ上へと昇っていくものなのです。
我々はそこに腰を下ろして胡坐をかいていてはいけない。変動の兆しは、もうあなたの隣に座ろうとしているのです。
わたしも立ち上がって出かけましょう。本当の愛に満ちた世界が、かの西方にあると聞きました。そういえば、こんな曲も聴こえてきました。
♫in Ghandhara, Ghandhara they say it was in India
Ghanndhara Ghanndhara
AINO-KUNI Ghanndhara♫
完
めでたしめでたし
編集後記
今回の作品には、イレギュラーな要素がありました。
まず、こちらで『テーマ』となる話を用意しなかったこと。
コメントリレー小説では、毎回グリム童話をはじめとする西洋の童話と日本昔話を交互に選択し、形式のみのお手本としてご用意しています。
これは先人の企画にならった形なのですが、もうこの企画そのものは皆さまのあふれんばかりの創作力でオリジナルと呼べるものになったのではないか、と考えました。
その意味でつけさせていただいた『創世編』という副題。
結果、おそらくそこから連想されたであろう三羽さまによる『神』の登場に端を発し、音羽さまによる『鏡あわせ』の世界の創造、ナウナウによる『カオナシ』というキャラへのフォーカスを経て、この作品は推進力を得、離陸をはじめたように思われます。
そして、もう一つのイレギュラー。
今回僕は、登場人物とあらすじを追記しませんでした。
なぜか。
それはこうして立ち上がった物語を、あらすじという規定の枠に収めるのが、なんだかとても無粋なことに思えたのです。
毎度、自分の労力がついやせる範囲で登場人物とあらすじを更新していて、その作業は僕にとってはけっこう充実したものです。
しかしながら、今回は触れないほうがいい、と僕の創作脳が囁きました。
あらすじを書くというのは、とりもなおさず、捨てる作業。書かれた物を削りに削って、本筋だけを汲み取る。仮に、はじめて読む人にも、内容がわかりやすく伝わるように。
ただ今回に限っては、その作業がなんだか窮屈に感じられたのです。
完成したこの作品を読み返したとき、僕はただただ圧倒されていました。
僕が立ち上げた、ほんの蝶の羽ばたきにも満たない一文が、これほどの壮大な混沌に波及するなんて、と。
創造主の皆さま、素晴らしい作品をありがとうございました。
♫Ghanndhara Ghanndhara♫
最後に僕のお気に入りの一説を書き残しておきます。