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短編小説。

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無料のほう。心を込めて書きました。
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記事一覧

短編小説:『幸せのおまじない』後編

 あのね、先生。  私は今でも美術を選択して、すごく良かったって思ってるよ。今だから正直…

乙川アヤト
6か月前
16

短編小説:『幸せのおまじない』前編

 ねえ、先生。  先生は呪いって信じる?  よくあるでしょ。真夜中の森のなかで白装束着て…

乙川アヤト
6か月前
6

140字小説:No.15〜20【ゲシュタルト崩壊】ほか

頭が、わるい。 15.【ゲシュタルト崩壊】 「うわ、あの人たち犬の真似なんかしてる……」 昼…

乙川アヤト
9か月前
8

短編小説:『ストレス化身会議』

部屋の中央には、黒檀の長机が置かれていた。 それを囲む者たちの風貌は様々だった。 年寄り…

乙川アヤト
9か月前
9

短編小説:シュレッダー男

おはよう。なんか一緒に出社するの久々じゃない? 社員パスワードの更新もうやった? 確か今日…

乙川アヤト
9か月前
3

短篇小説:『運のいい男』後篇

三  もうおわかりかもしれませんが、私がさきほどプライベートという言葉をつかったのは、こ…

乙川アヤト
9か月前
12

短篇小説:『運のいい男』前篇

一  私が目を覚ましたのは、仄暗い空間でした。  そこはかなり広くて、たくさんのワイン色の赤い椅子が階段状に並んでいました。それは間違いなく、映画館の中でした。  そのときは、自分がなぜこんなところにいるのか、見当もつきませんでした。だってそうでしょう? 映画館にいるということは、用はひとつ。映画を観ることです。でも私は映画を観るときは、必ず下調べをして、予告をみて、監督を調べて……。とにかくいろんなことを加味して、やっとチケットを予約するのですから。それを覚えていないなん

短編小説:彼女と夢と水晶玉

僕の彼女は、早起きが苦手だ。 たいてい、僕のほうが先に1日の活動を開始する。 僕が午前中…

乙川アヤト
10か月前
5

短編小説:デュエル・オブ・ATM

 陸奥がなにかおかしいと思ったのは、電車を降り、駅を出て、その前のコンビニを横切ったとき…

乙川アヤト
10か月前

短編小説:夜を歩く

一、23時  寝返りをうつのはこれで何度目だろうか。形の合わない箇所にむりやりパズルのピー…

乙川アヤト
10か月前
5

短編小説:『便利』な世界の君たちへ。

なあ、おまえさん、こっちきて座んなさい。 ちょっとこの年寄りの話を聞いておくれ。ほんのち…

乙川アヤト
11か月前
8

短編小説「アリのままで」

最寄り駅からほど近いところに、行きつけのバーがあった。そのバーは古ぼけたビルの二階にある…

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短編小説「右手の君へ 後編」【微ホラー】

 前編▼  8月17日(水)  お父さんなんか嫌いだ。  8月18日(木)  お父さんはなんに…

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短編小説「右手の君へ 前編」【微ホラー】 

 7月20日(水)  今日は一日中ずっと雨がふっていた。まだ梅雨が続いているのだろうか。お父さんとお母さんはまだやらなくてはいけないことがあるからと二人とも僕を部屋において出ていってしまった。二人とも顔色がよくなかった。ボクは鏡でみてもいつもと変わらないように見えた。  ほんとうは夏休みは明日からなのだが、今日はおやすみをもらって、家族といっしょにすごしてくださいと小林先生は言っていた。いつもどなり気味の小林先生の優しげな声はめずらしかった。一人でいてもすることがない。ひ