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日記(2024/06/22〜29)慰霊の日、肌馬の系譜、蛇の道

2024/06/22土
朝ジョギング。帰りに戻る道を間違えた結果、道に迷い危うく帰れなくなるところだった。携帯のナビに頼ることとなる。

この日は最近の小説を読みたかったのでいろいろ読む。
ニシダ『不器用で』(2023)はお笑いコンビ・ラランドのツッコミ担当が書いた短編集。一編目こそ自分の内面にばかり目が向いている感じで目も当てられなかったが、二編目の「アクアリウム」が見違えるほどよい。おそらく時系列に並べると一編目が一番古く、二編目が一番新しいので、技術の向上がみられる。本人のパブリックイメージに合わせたような、世間的に見てダメな人間が、自身の生き方を見つめ直す瞬間というのが通奏低音としてみられる。
山田詠美『肌馬の系譜』(2023)は、もう本当に巧みとしか言わざるを得ない。江戸川乱歩系譜の昭和ロマンを感じさせる作品と、現在の「ポリコレ」を皮肉る会話体の作品、そしてホラーやSF要素のある作品が入っていて、乱雑な感じを覚えないのはちょっとすごい。肯定的な文脈ではないものもあるが、出てくる固有名詞をあげるだけでもこのとおり。

江戸川乱歩、ハンフリー・ボガード、ローレン・バコール、ショーン・コネリー、ヴァン・ディーゼル、『クルージング』、ジャニス・イアン「ラブ・イズ・ブラインド」、ジェイムズ・ブラウン「イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド」、アラニス・マリセット、テディ・ベンダーグラス、レニー・ブルース、ニクソン、ジョンソン、ICE-T、『FUCK』、奥村チヨ「いいじゃないの幸せならば」、石川達三『青春の蹉跌』、神代辰巳『青春の蹉跌』、沼正三『家畜人ヤプー』、『S&Mスナイパー』、『奇譚クラブ』、『ラストタンゴ・イン・パリ』、『ダメージ』、ビル・エヴァンス「ピース・ピース」、「スナフキンのテーマ」、ビリー・ポール「ミー・アンド・ミセス・ジョーンズ」、トルストイ『アンナ・カレーニナ』、『アパッチ砦ブロンクス』、伊藤左千夫『野菊の墓』、澤井健一郎『野菊の墓』、ムーンライダース、『されどわれらが日々』、ジェリー・ルービン、ジム・モリソン、グレイトフル・デッド『フィルモア・ラストコンサート』、中森明菜「原始、女性は太陽だった」、古井由吉、チャップリン『独裁者』、黒人霊歌「時には母のない子のように」、カルメン・マキ 「時には母のない子のように」、石坂洋次郎、山田詠美『トラッシュ』

 筆者の「ポリコレ」感に全面的に同意するものではない(筆者の書きたい官能小説における表現規制の問題と、実際の差別により苦しんでいる人がいるという問題とは別のフェイズであり、後者についての留保はあってもよい)が、それならそれで思う存分語らいたいと思わせられる。ラストの私小説風作品は、これまでの筆者の歩みからするとひとつの帰結点とも思える。やっぱり山田詠美は文学者であり、言葉を扱うということにこれほど真摯な存在もいないのではないかと思う次第。

2024/06/23日・祝
慰霊の日。NHKの中継を家族で鑑賞。県内高校生の読む平和の詩の朗読が良かった。
「七十九年の祈りでもまだ足りないというのなら」というところが現代の風潮への目配せがきいている。高校生の頃の自分にこれだけの詩読めたかなあ。毎年平和の詩の朗読者はSNSで誹謗中傷に遭う。あの頃の自分に、それだけの覚悟はなかったろうし、今だって危うい。そもそも当時の自分は平和教育のバックラッシュで、なんとなくこういったものを面白く思っていなかった記憶がある。沖縄県内の若年層(20〜40代くらい)が若干リベラル離れしているのも、平和教育への逆張りがまだ続いているのがある気もする。むしろ平和教育が必要なのはこの世代なのかも。岸田総理のスピーチは聞かずに外出した。

2024/06/24月
今年の慰霊の日は日曜日に消えたので、いつものように仕事。
『向上委員会』で見られた永野と陣内智則のケンカについては、自分がなんとなく毒舌芸というものに価値を見出さず、そういったものは反撃に遭う覚悟あってのものだと思ったので陣内派か。暴力を肯定する企図はないが。

2024/06/25火
いつものように仕事。
ひどいこともあったものだ。米兵の女子暴行に関して県への報告が3ヶ月も遅れるといった出来事。どうしてもこのタイミングだと県議会議員選挙や慰霊の日が終わるタイミングを見計らっていたのかと勘繰らざるを得ない。歩みが一気に戻された気分。

2024/06/26水
いろいろなものが壊れる。妻の実家のエアコンが壊れ、僕の家の洗濯機が壊れ、それらより程度は低いもののエアコンのリモコンが壊れる。職場でもコーヒーメーカーが壊れたし、僕の携帯電話の充電器も壊れた。少し怖くなるレベル。この物入りの時期に…。そういえば先月の給料日近くにもいろんな予想外の出費が相次いだ。お金は寂しがりやだから無いところには寄りつかないって本当だ。


2024/06/27木
延ばし延ばしになっていた諸々の手続きを一気に済ませた日。少し残業。


2024/06/28金
午後、早退し、北谷へ。この前読んだ山田詠美の小説にもアメリカンヴィレッジは出てきた。
映画『蛇の道』(2024)鑑賞。黒沢清監督作。僕自身はそこまでハードコアな黒沢清信者にはなれていないのかなと思うような、つまりはそんな作品。特に近年の黒沢清作品は僕が好きだと思った作品ほど黒沢清の熱烈なファンからはイマイチな認定を受けている気もするので。『散歩する侵略者』とか『スパイの妻』とか。
今作について正直なところを申せば、確かに細部は面白い。柴咲コウのひたすら機械に徹したような演技、そのまま溶接とかやってしまうところ、死体袋に入れて引きずることへのオブセッションなどなど。マチュー・アマルリックが水をかけられている時の時間の流れ方が黒沢清っぽくない感じも良かった。ただ、全体を見るとそれが像を結びにくいというか、はっきりと空虚であるし、それが黒沢清の魅力なんだと言われるかもしれないが、もしかすると自分の根幹をなすもの(そしてそれは希望を捨てられないとか生活にしがみつかざるを得ないとか、そういった部分)と黒沢清が合っていないんじゃないかとか、そう思わされたし、それでも時折黒沢清とシンクロする部分もあるから、これからも見続けていこうとか、そういったことを考えた。

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