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ようこそ、火星へ

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#詩

エピローグ

果てることのない小麦畑に降り立った火星人は、茫然として苦しい考えや儚い喜びや、それからた…

さきとも
1年前
3

火星を渡る蟹を追う人【詩】

蟹よ、群れをなして果てしない地平を目指し 何処に渡ろうとするのか?行くからには何を知り、…

さきとも
1年前
4

火星22世紀のスキツォイド・マン

「こんな世界も悪くない」と哀しげな声が聞こえてくる。それは前世紀の墓穴に由来する、先祖の…

さきとも
1年前

【詩】火星に降る雨は数億年の夢とともに

火星に降る雨は、まるで昨日もそうだったかのように 静かに辺りを覆い尽くす 鉄錆の匂いの予想…

さきとも
1年前
6

【詩】『いにしえの不在票』

ゆらりゆらりと空を漂っているのは あれは雲ではない ぬらりと生きている 耳を澄ましてごらん…

さきとも
2年前
5

風の声が聞こえる

火星はむこうからやって来る。怖れることはない、待ちくたびれることもない。 火星人の歌は風…

さきとも
2年前
6

【詩】幻影にむせぶ者たちの歌

どうしても溶け切らないものが、この世の中にあったとしても、それでいいとわたしは思っている。分かりあえないからといって、その誰かを部屋から追い出しても、結局、根本的になにも変わらない。 いくつもの季節があるように、わたしたちはいくつもの試練を耐えていく。いくつもの涙はいくつもの笑いといくつもの忘却に支えられて、次の魂も次の肉体も生き続けていく。あなたたちもわたしたちも、根本的には変わらない。 見よ、たくさんの人が火星を終の棲家に選んで飛んでくる。たくさんの希望を、たくさんの

軽やかさ、重さ

軽やかに舞うもの、砂嵐、乾いた枯葉、人の心、狂おしく口を閉ざした心、古い火星人の骨。空は…

さきとも
2年前
5

なもなきくまのりれけむ

本日お送りする音楽は、半世紀以上昔の火星で活躍したサミュエル・ダッドの歌曲です。 サミュ…

さきとも
2年前
8

【詩】リレケムの哀歌

遠ざかってゆく母星の記録媒体の、そのこころはなはだしく喪失し 母星のやがて近くなることも…

さきとも
2年前
13

【詩】歌えよ、そして忘れよ

涙を流した火星人たちは、さっきまでの詩をもう忘れている。 「はるかなる、砂の……ふるさと…

さきとも
2年前
14

【詩】哀歌

おい、火星の乾いた大地の奥底にひそむ、名もなき兵士たちよ。 埋もれたまま弔われることもな…

さきとも
2年前
14

宇宙の鞄の宇宙【詩】

火星人たちの鞄には穴がいくつも開いている。 しまったものは零れ落ち、二度と手元に戻らない…

さきとも
2年前
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少しだけ火星が揺れた【詩】

少しだけ火星が揺れた。ゆらゆらと、チョウチンアンコウの夢。 とろけたソフトクリームを、食い入るように見つめる子どもたち。 けんけんぱ遊びの円が、真っ赤に染まったので、もう帰らなきゃ。 だって、どこまで辿っても火星が続く。けんけんぱ。 少しだけ火星が拗ねた。何食わぬ素振りのジャイアントパンダ。 使い古したノートブックが、消えてしまった。いつの間に? あれは思いつくままの私だったのに。しまったな。 文字から木が生えるといいのにな。花も咲くといいのにな。 重ねた火星