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【詩】『いにしえの不在票』

ゆらりゆらりと空を漂っているのは
あれは雲ではない ぬらりと生きている
耳を澄ましてごらんよ
「ごにょごにょごにょ」

ただあてもなく浮かんでいるようで
それこそが目的 あなどるなかれ
地道なルーティンも大事なことさ
「ひとつふたつみっつよつ」

あなたのたった数十年の人生は
宇宙の窪んだ穴 すとんどすんあいた
絆創膏でも貼っときな
「われわれはわれわれは」

砂漠で拾った錫の手帖には
文字がびっしり 青白く浮きあがり
火星人のクリプトン鉛筆
「くくききくかか」

古池も枯れて現るされこうべ
数億年は名もなくて また数億年の降る
置かれた墓碑銘の時知れず
「いないいないばあ」


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