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軽やかさ、重さ

軽やかに舞うもの、砂嵐、乾いた枯葉、人の心、狂おしく口を閉ざした心、古い火星人の骨。空は常に静寂で、日が昇っては日が沈む。その空を重力に逆らって、上空へと昇っていくもの。

重く沈みゆくもの、意識のない隕石、あらゆる人工物、都市、工場、眩い宝石、新しい移住者たちの骨。大地は暗く冷たくて、見えない月がすべてを引き寄せる。すべてを時に委ねきり、忘却へと下っていくもの。

その中間を飛ぶ鳥たちに、言葉を覚えさせたのは誰?彼らはころころと喉を鳴らし、古い言葉を空にも大地にも投げかける。まるで黙示録の七つのラッパのように、彼らは告げる。「こころせよ、ここのことは」と。

その声を耳にする者たちは、樹々の中に数億年の夢をみて、明日のことを不安に思う。今という時間には、影のさす場所もなく、誰もが先を憂うしかない。それゆえ、生きるという森に、意味という果実の幻想が占めてゆく。

耳を澄ますと、渓谷の深い場所から、かすかなパルスが聞こえてくるのが聞こえてこないか?沈み込んだ骨たちの、最後の泡は軽やかに空に舞う、その音。ふとした拍子に、この心までもが、火星人と共鳴していたりする。ふるふるとした温かな振動と共に。

鳥たちはなにも知らないかのように、相変わらず言葉を発しつづける。

「こころせよ、ここのことは」

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