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「火星天国」というどうしようもない名前のカフェが、最近オープンした。勤め先のコンビニの真…
『理科年表』には地球のあらゆる情報が詰まっていた。これさえあればマーズアタックだって夢じ…
俺たちは覚えている。はっきりと。 約6600万年前、大きな衝撃で俺たちは、空中高く吹き飛ばさ…
砂漠ばかりが広がる、想像以上に静かな場所だった。当然といえば当然なのだけれど。それが理由…
踊るという行為は、隠されている感情のあらわれであり、身体を包み込む時空との不思議なコミッ…
発掘された古代魚は火星由来のものではなかった。その衝撃的なニュースは瞬く間に全世界に発信…
そのことを論じるために、わたしは火星に渡ったのではない。だが、誰もが不思議そうな顔をしてこう言う。「どうして黙っているのか?」と。 ゆっくりと日が暮れて、厳しい夜が満点の星を連れて通り過ぎると、あっという間に朝の薄明が訪れる。「ねえ、寒いわ」と妻がやって来てバルコニーの様子をちらと見て言う。 わたしはもう誰とも論じたくなかった。ほとんど家から出なくなり、昼夜が逆転していた。 たまに買い物に出掛けると、「ようアルフ、例のロケット開発の偽情報について、お前さんの反論はないの
火星に来て何かが変わったとは余り思わない。雑誌のインタビュー記事では「人生変わった」と書…
真昼に扉を叩く音が響いた。みんな作業に出掛けて留守だったので、乾いた木の音だけが辺りに吸…
また夜が更けてきました。いかがお過ごしでしょうか? 「ようこそ、火星へ」放送局スタジオの…
火星に居ると様々なことが惰性に変容する。それを怖れた火星の統括本部は、映画に力を入れ始め…
火星に詩人は要らないと誰もが言った。五年経っても十年経っても、世間の空気は変わらなかった…
映画『マトリックス』風の未来を意識して作った音楽を、逆さまに再生したものです。未来社会と…
テーブルの上のコーヒーはまだ冷めずにあった。それは老婆が見つけた時のことだった。 湯気がほのかに立っていて、懐かしい香りが漂うキッチンに、淡い夕日の影が落ちていた。うっかりしていたのか、すぐ戻るつもりだったのか、窓は開け放したままだった。たぶん、あの人は近所に出掛けたようね。そう言って彼女は溜息をついた。 きっと、あの人はすぐに戻って来るわ。 老婆の勘はいつも外れた。右と思えば左に、上と思えば下に、予想はことごとく外れてしまう。外れるからといって逆を選択すると、それも外