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さぶすクラシック日誌。2022年版...

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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#室内楽

12月24日、ミュゼットの田園感に、どこか切なさも覚え... シェドヴィルのソナタ集『忠実な羊飼い』。

ジャン・ピエール・ファン・ヘースのミュゼット、リュク・ポネのオルガン/クラヴサン、ロナン・ケルノアのチェロで、ヴィヴァルディ作として出版された、シェドヴィルのソナタ集『忠実な羊飼い』。 ET'CETERA/KTC1779 フランスのバグパイプ、ミュゼット奏者で作曲家、シェドヴィル(1705-82)が、1737年、パリにて、ヴィヴァルディの"Op.13"として出版してしまったソナタ集『忠実な羊飼い』。あの頃の"あるある"でして、作曲家の許可無く勝手に作品集が発売されてしまう詐

12月9日、ドヴォルザーク、マルタン、マンスリアン、民謡がもたらすケミストリー!

オランダの気鋭のアンサンブル、デルタ・ピアノ・トリオの演奏で、ドヴォルザークの4番のピアノ三重奏曲、「ドゥムキー」など、民謡を素材とした3作品... "Origin"。 CHALLENGE CLASSICS/CC72901 スイス(フランス語圏... )の作曲家、マルタン(1890-1974)が、アメリカのアイルランド系の支援者から委嘱された、アイルランド民謡による三重奏曲(1925)に、現代、アルメニアを代表する作曲家、マンスリアン(b.1939)の5つのバガテル(198

12月7日、弦楽四重奏というストイックな編成から、改めて見つめる、早熟の天才、メンデルスゾーンの凄さ...

フランスで結成された気鋭の弦楽四重奏団、ヴァン・カイック四重奏団が、新たにスタートさせるメンデルスゾーンの弦楽四重奏のための作品全集、その第1弾、1番から3番まで... Alpha/ALPHA873 番号が付された弦楽四重奏曲、1番から6番までの、最も早く18歳で書かれた2番(1827)から始まり、20歳の時の1番(1829)、そこから10年ほど開いての29歳で書かれた3番(1838)という、作曲年代順による演奏... とはいえ、2番の冒頭から、もう、その音楽、すでに完成さ

11月19日、17世紀のヴァイオリン、侮れない!ウッチェリーニのソナタに魅了される!

イギリスから、バロック・ヴァイオリンの新たな逸材!コナー・グリスマニスが、自ら率いるバロック・アンサンブル、ノックスワードとともに、ウッチェリーニのヴァイオリン・ソナタを弾く... マルコ・ウッチェリーニ(ca.1603-80)。 イタリア中部、フォルリ近郊、フォルリンポポリの貴族の家に生まれたウッチェリーニ。アッシジの神学校で学び、聖職の道を歩む中(1635年、司祭になっている... )、音楽も学び、アッシジの大聖堂の楽長でヴァイオリニスト、ブオナメンテに師事したと考えら

10月8日、古典主義の時代のロンドンを沸かしたバッハ-アーベル・コンサート、その多彩さにワクワクしつつ、何かチルな感じ、イイ...

フランスのピリオド・アンサンブル、レゾンブルが、18世紀、ロンドンの音楽シーンを沸かせた、J.C.バッハ、アーベルのコンビに注目するアルバム、"BACH-ABEL SOCIETY"。 バッハ家の末っ子で、当時、その名声は、父、大バッハを凌いだ、"ロンドンのバッハ"こと、ヨハン・クリスティアン(1735-82)。そして、大バッハがケーテンの楽長を務めていた時、楽団の首席ガンバ奏者の息子として生まれ、やがてライプツィヒで大バッハに師事したガンビスト、アーベル(1723-87)。

9月27日、師、ベートーヴェンから受け継がれるものと、新時代、ロマン主義の息吹が織り成す妙... リースの音楽...

ピリオド系弦楽四重奏団、シュパンツィヒ四重奏団による、ベートーヴェンの弟子、リースの弦楽四重奏曲のシリーズ、Vol.4。 フェルディナント・リース(1784-1838)。 かのベートーヴェンが生まれた街、ボンで生れ、16歳でウィーンへと出て(1801)、ベートーヴェンの弟子(ボンの宮廷のコンサート・マスターだったリースの父親は、ベートーヴェンのヴァイオリンの師であり、その関係性は世代を遡る... )となり、アシスタントも務め、楽聖を支えもした人物(楽聖の最古の伝記の著者とし

8月22日、シューベルトのピュアに癒される...

ピリオドもモダンも自在に弾きこなす、フランスのヴァイオリニスト、ナーマン・スルシンと、ピリオドの名門、クイケン家のピアニスト、ピートによる、シューベルトのヴァイオリン・ソナタ全集。 規模が小さかったため"ソナチネ"として出版(3曲セットで... )されてしまった1番(1816)と3番(1816)のヴァイオリン・ソナタに、ヴァイオリンとピアノのための幻想曲(1827)を取り上げる1枚目... 華麗なるロンド(1826)で始まり、"二重奏曲"、"グラン・デュオ"とも呼ばれる4番

8月14日、バガテル=取るに足らないもの、に、見る、ベートーヴェンの深淵...

鍵盤楽器の巨匠、アンドレアス・シュタイアー(1827年製、コンラート・グラーフのピアノのレプリカを弾く... )と、ピリオドのチェロの巨匠、ロエル・ディールティエンスによる、ベートーヴェンのチェロ・ソナタとバガテル。ちょっと妙な組み合わせ... なのだけど... ベートーヴェンの中期、1815年に作曲された連作のチェロ・ソナタ、4番と5番に、初期と後期に作曲されたピアノの小品による11のバガテル(Op.119)を挿み、後期、1823年から翌年に掛けて作曲された6つのバガテル

8月8日、コロナ禍のロックダウンの中、録音された、楽聖、最晩年の弦楽四重奏曲の重みと達観... 感慨に包まれた...

ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ(現代における、最高のひとりじゃないかと... )、ジェイムズ・エーネスが率いる、エーネス四重奏団、ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲のシリーズ、その最後を飾る、15番と16番。 ベートーヴェン(1770-1827)の死の前年、1826年に作曲された最後の弦楽四重奏曲、16番と、1825年に作曲された、15番が取り上げられるのだけれど、最晩年であることを意識して聴けば、やっぱり、感慨深い... 栄光に輝く業績の一方で、困難の中を歩んだその人生.

7月31日、10代の瑞々しさ、20代の豊潤さ、やっぱ、タダモノではないなと、モーツァルト...

アルミーダ四重奏団によるモーツァルトの弦楽四重奏曲のシリーズ、第5弾、3番、5番、10番、11番、13番、15番、16番の7曲、2枚組。 まだザルツブルクを拠点としていた10代、1773年、帝都、ウィーンで作曲された"ウィーン四重奏曲"から11番と13番、ウィーンでブレイクを果たした20代、"ハイドン四重奏曲"から、1783年の作曲、15番が演奏れる1枚目。10代、1772年のイタリア旅行で作曲が始まった"ミラノ四重奏曲"から3番と5番、"ウィーン四重奏曲"から10番、20

7月25日、若きブラームスは、ラヴリーでした。

ドイツの老舗、室内アンサンブル、リノス・アンサンブルによる、ブラームスのセレナード、1番(オリジナル九重奏復元版)と2番。 ブラームスというと、まるで某魔法学校の校長先生みたいなイメージがあるのだけれど... そんなブラームスにも、若い頃、ありました(クララもよろめく美青年!)。という、1857年(シューマン夫妻に見出されての4年後... )、24歳となったブラームスは、ドイツの小さな領邦、リッペ・デトモルト侯国の宮廷音楽家として招聘(祝、初ポスト!)される。そこで書かれた

7月18日、音楽史上、最も輝かしいピアニスト、2人が書くチェロのソナタが生むケミストリー!

現代もピリオドも軽やかにこなせてしまうフランスのスーパー・ヴィルトゥオーゾ、ジャン・ギアン・ケラスのチェロ、モダンもピリオドも垣根無しに丁寧に音楽を織り成すロシアの次世代ヴィルトゥオーゾ、アレクサンドル・メルニコフのピアノ(エラールとスタインウェイで弾き分けるというこだわり!)による、ショパンとラフマニノフのチェロ・ソナタ。 まずは、ショパンのチェロ・ソナタ... 冒頭、ピアノによる序奏(主題からのカデンツァ!)に触れると、嗚呼、ショパン!という思いが込み上げてくる。で、主

7月16日、雨の日に、ブルーに響く音楽、ショパンからプーランクへ、青い詩情の魅惑...

フランスのアンサンブル、イ・ジャルディーニの中心メンバー、ポーリーヌ・ビュエ(チェロ)とダヴィド・ヴィオリ(ピアノ)の演奏で、ショパンとプーランクのチェロ・ソナタ... "BLEU"。 ショパンのチェロ・ソナタ(1846)と、プーランクのチェロ・ソナタ(1948)、という組み合わせ... 結構、攻めてる?なんて思いながら聴き出してみたのだけれど、いやいやいや、ビュエのチェロの豊潤な響きに導かれ、ブルーの世界にじゅわーっと染まってゆくようで... 魅了された! という、"B

7月3日、ジョージ・アンタイルに語らせた世界... アメリカン・モダニズムとベートーヴェンについて...

異才、ヴァイオリニスト、パトリシア・コパチンスカヤが、"狂騒の時代"、パリを震撼させたアンファン・テリヴル、アンタイルをフィーチャー、"LE MONDE SELON GEORGE ANTHEIL"。 Alpha/ALPHA797 アンタイルがリスペクトしていたベートーヴェン... そのヴァイオリン・ソナタ、7番(1802)と、アンタイル(1900-59)のヴァイオリン・ソナタ、1番(1947)を軸に、アメリカ帰国後のアンタイルが親交を持ったケージ(1912-92)の夜想曲(