積み重ねたキャリアから飛び出した先は、フラットでどこまでもフランクな離島でした。
今回お話を伺ったのは、2022年7月から海士町役場交流促進課に所属し、
ふるさと納税に関する業務に携わっている遠藤さん。
知らない場所、知らない地域を訪れるのが好きで、大学時代はバックパッカーとして世界を旅していたそう。大学卒業後は、メーカー関連の企業に就職していましたが、そのキャリアから飛び出して新しい場所に行ってみたい!と感じ、島での暮らしに飛び込んだといいます。
”ないものはない”離島に身を置いて、新しい価値観に触れる
ー島での暮らしに飛び込んでみようと思ったきっかけや理由を教えて下さい!
遠藤:隠岐島前での暮らしに興味を持った主な理由は2つです。
1つ目は、海士町の”ないものはない”というキャッチフレーズに共感したからです。大学時代にバックパッカーとして東南アジアを旅していたのですが、決して裕福とは言えない環境でも幸せそうに暮らしているのを見て”幸せって何なんだろうな”って、ふと思ったんです。
そこは飲食店もない地域だけど、子どもたちも自然の中で遊んで、人との関りも多くて、普段の暮らしをいきいきと語ってくれて。そういった豊かさみたいなものに惹かれたというか。その海外での景色を思い出して、”ないものはない”環境に自分の身を置いてみたくなりました。
2つ目は、新しい空気、新しい場所で働いてみたかったからです。
新卒でメーカー関係の会社に就職したのですが、歯車の1つになっている自分が嫌で、、新しい価値観を感じられる場所に飛び出したいなあと思っていました。
選択肢として海外で働くことを検討した時期もありましたが、
海外でも本土でもない隠岐島前の離島という空気感・自分が果たせる役割の大きさに惹かれ、島体験への応募を決意しました。
実際に来てみて感じたことは、自然が豊かで、人が優しいということ。
よく行く商店のおばちゃんがトマトやゴーヤをくれたり、田んぼの周りをランニングしているときに同じコースを走っていたおじさんが話しかけてくれて仲良くなったり。
来島前と今の地域で暮らすことのイメージに”距離感”の視点で、ギャップもありました。思っていたより近いなあと。けど、それは居心地の悪さとかではなく温かみを感じる瞬間だなと思います。
ふるさと納税を起点に島の産業に幅広く関わる
ー現在のお仕事について教えてください!
遠藤:事業所決めにあたって、観光関連の場所で働けたらと思っていました。また、一次産業にも興味があったので、その辺りに幅広く関わる事業所を探していたところ、海士町役場交流促進課での勤務を提案してもらいました。
勤務が始まる前に交流促進課の柏谷課長とお話しさせていただいた際に、島体験生としての自分がどういう役割を果たせるのか具体的なイメージができたので、ここで働きたいという想いが一層強くなりました。
現在の主な業務は、ふるさと納税に関連した業務です。
各ポータルサイトの管理や受領証に添えるメッセージのデザイン作成など、初めての仕事ばかりなので1から教えてもらっています。
例えば、ポータルサイトの管理。
ページの質を維持するためには日々の細かい作業が本当に大切で。スマホ画面で見やすいように返礼品の画像を正方形に修正したり、誤字脱字の確認をしたり、そういった細かい作業の大切さを感じています。
また、そういったポータルサイトの管理だけでなく、同じ課内で人手が足りていない業務には率先してお手伝いするように心がけています。
例えば、島ファクトリーという島のバックヤードを担っている会社が運営するリネン工場やログハウスの清掃、交流促進課が管理しているビーチでの監視業務(夏季)にも関わらせていただきました。
ふるさと納税の業務に携わらせていただいていることもあり、そこを起点に島の産業に幅広く関わらせていただいていると思いますね。
▼海士町ふるさと納税noteも書いているそうです。
今は日々の業務を覚えるのに精一杯で、自分の目標をどこに設計するのかは考え中で、不安と楽しみな気持ちが両方あります。ただ、ふるさと納税のレビュー欄やコメントに良いフィードバックを見つけると嬉しいです。そこはやりがいを感じる部分だと思います。
特に12月は一番忙しい時期なので、10月以降も島体験を延長し勤務しています。いつ頃まで島に滞在するのかは未定ですが、何よりも島は居心地がいいのでもう少し居られたらなあと思っています。
安心して自分の役割を果たすことができる場所
ーシェアハウスや地域での暮らしはいかがでしたか?
遠藤:シェアハウスでの暮らしは、その日の楽しかったことや親にも話さないような相談を気軽に共有したり、話せる環境があるので有難いなと思います。他の島体験生もシェアハウスで暮らしているので、そういった他のシェアハウスに暮らす仲間と一緒にご飯を食べたり遊んだりするのも休日の楽しみです。
また、「地域に溶けこむためには、積極的に行事に参加したほうがいい」というのを知識ベースとして持っていたので、キンニャモニャ祭り(8月)、島一周神輿渡御(9月)、牛突き大会(10月)等、色々な行事に参加しました。ただ、いざ踏み出すときは、それなりの勇気が必要でしたね…。
そんな中でも個人的に一番印象に残っているのは、来島してまだ数か月の「よそ者」の自分に対しても、分け隔てなく接してくださる方々がたくさんいたという点です。その結果として、安心して自分の役割を果たすことができましたし、何より地域のことをより深く知ることができたと思っています。
特に島一周神輿渡御は、後鳥羽院遷幸800年を記念して行われる一大イベントです。今後自分が生きている間に二度と関わることができないかもしれない。そんなことを考えると、なおさらイベントに積極的に参加してよかったなぁと思います。
晩夏の暑さも相まって肉体的に相当疲弊していたのですが、全日程終了後の地区のみなさんとの飲み会では、「満たされた」感覚で一杯になっていたのは今となっては良い思い出です。
フラットにそしてどこまでもフランクに接してくれる場所
ー”ないものはない”島での暮らしを振り返ってみていかがでしたか?
遠藤:ないものはない環境で、実際に暮らしてみて感じたことは、心の豊かさは質的なものに多分に左右されるのではないかということです。便利なモノがあふれている社会で、いかに精神的に豊かになれるのか…。
言い換えれば、何かと効率を追い求める世の中にあって、価値のないものは切り捨てられがちですが、そうじゃないもっと人間の心に適う根源的なものがあるのではないかということを日々考えさせられています。
例えば、ネットショッピングではなく、どんなに割高でも地域の商店でモノを購入し続けていれば、地域経済が循環することは言わずもがな、そこにコミュニーケーションが生まれ、結果として、それが人の幸福度上昇につながるかもしれない。
まさにお金で買えない価値というか…。
何より商店のおばちゃんやそのご友人とお話するのは、とっても面白いんですよ!(色々ありすぎて割愛しますが!)
そして、お世話になっている商店のおばちゃんだけではなく、今まで触れ合った島の多くの方が「どんな仕事をしているか」や「どんな来歴か」なんて、すっ飛ばして、フラットにそしてどこまでもフランクに接して下さるのが印象的で、この島が持つ自由で寛容な空気が居心地の良さを生んでいるのだと実感しています。
島で過ごしたのは、たった半年ばかりですが、確かな「ぬくもり」のようなものを感じることができたのが個人的に一番うれしい出来事です。これからも、死ぬまで忘れたくない記憶の一つとして自分の中に大切に持っておきたいと思っています。
あとがき
豊かさを感じる瞬間やきっかけや場所は人それぞれで
もしかしたら、島にあるかもしれないし島では見つからないかもしれない。
自分にとって心地いいと感じられる場所を探しながら
島にも立ち寄ってみて下さい。
(インタビュー・文/田中沙采)
▼島の商店を少しだけ、ノゾキミ!!
▼少しだけ体験してから飛び込んでみたい!そんな方へ
最後までお読みいただきありがとうございました!!
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