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『感動した』の先が見たかった。だから『その作品がやりたかったこと』を考えてみた。

『楽園追放』がYouTubeで期間限定無料配信をしていたので観た。

人間の多くが肉体を手放し、電脳世界『ディーヴァ』を安住の地とした未来の話。
ディーヴァの捜査官・アンジェラは、『ディーヴァ』に侵入する謎のハッキングの正体を突き止める任務のため、荒廃した地上に降り立つ。地上には『ディーヴァ』に移らなかった人間たちの居住区があり、彼女はそこで、捜査の相棒となるディンゴと出会う。地上での捜査をしていくうちに、アンジェラは電脳世界では得られなかった”人間臭さ”に触れていく……、といった話だ。
『肉体を手放し、全てを電脳に委ねた自由は、果たして真の自由なのか』
作中でディンゴが語った問いと思想はディジタル化していく現代への警鐘にも取れて非常に興味深かった。生命倫理の分野だろうか。ソフトウェアやハードウェアの分野に興味があったので、近い話題がテーマにあるとすぐに食いついてしまう。(ディジタルと生命の組み合わせとか、自我を持った人工知能とか、ソフトウェアやプログラムが人間・生命に組み込みされたSFはもっと読んでみたい。おすすめの作品があったら教えてくれると嬉しいです。

映画を観たり、小説を読んだりしていると、「この話では何をしたいのか」「どんなテーマで語りたいのか」を探りがちだ。どんな作品も何かしらの主題があると想っているからだ。

また、『主題に対する答え』を導出するために物語の過程があるとして、序盤に『やりたいこと』が示されていないと、読み進めても結局何がやりたいのかが分からなくて、読書活動が頓挫してしまうことも多い。

何でもかんでも主題を求める姿勢が好ましくない、と思う層も一定数はいるだろうが、作品を楽しむ以上、やりたいことがスッ、と頭に入ってくるとその後の展開にも、それらの『やりたいこと』が結びつき、結果的に展開が頭に入ってきやすくなる。あくまで私の感覚論だけれども。

何度も言及するけれど、私は感想を書くのがあまり得意ではない。むしろ苦手だ。感想を、「感動した!」「面白かった!」で済ませるのを許せれば良かったものの、そういった量産型の消費はあまりしたくない。見栄っ張りのプライドみたいで、たまに嫌になるけど。

単に面白いものを観たとして、面白い理由は何なのか考えるのが好きだから、苦手なりに言語化するのかもしれない。私は面白い作品を観た/読んだあと、Twitterに、発狂したかのような感想を投下する。あとで、振り返って感想を見てみると、録音した自分の声を聴いているようで、悶え死にそうになるがどうにもやめられない。そして、書き留めておけば、案外印象は頭の中に残っていてくれる。

一流の創作作品はロジックと多種多様な演出で、オーディエンスにどのような感情をもってもらうか、そこまで計算し尽くしている気がする。思えば映画館で、一斉にどっと湧いたり、同じシーンで複数人が鼻を啜っていたり、そんな場面に出くわすことも多い。あからさまに泣かせようとしていると逆に興ざめしてしまうけど。そこらへん塩梅は塩コショウ少々の塩梅なんだろう。

エンターテインメントが計算でできていることになんとなく気づいたのは大学の4年次で、その頃、私の周りの創作界隈でエンタメの話が盛り上がっていた。『○○が××だとありがたいよね』というようなふわっとしたところから切り込んでいったのを覚えている。『好き!』だけじゃ何がどのように好きなのか、
分からないから、そこんところ深堀りして言語化していく。そうすると、作者のやりたかったことがなんとなく見えてきたりして面白かったし、共感できるパーツは作品に組み込めるようメモ書きしたりもした。解剖実験をしている気分。蓋を開けたら精密機械のようにパーツとパーツが有機的に結びついていて、その美しさが堪らなかった。

『計算しつくされた面白さの美しさ』はエンタメを考えるうえで、個人的に目指す指標となっている。
……もちろん、そんな理屈っぽいものを跳ね飛ばすような、荒々しい本性のようなものが完全な計算外から解き放す訳のわからない一撃が、思いの外傷になることもある。そんなセレンディピティも密かに待望している。

極論、面白ければいい。そう、面白ければいい。高校時代にこの『エンタメのルール』みたいなものを教えていただいたことがあった。面白い作品を書く方で憧れの人の1人だ。その頃は面白いの矢印がどこにも向いていなくて、言葉の意味を掴めずにいたが、5,6年経ってようやく掴めてきた。

単純なルールの土俵で知略と血肉と衝動でぶつかり合う。それだけ。
戦場として最上の楽園。私は筆を執る。
面白い作品について考えるときの高揚感が好きだ。ライターズ・ハイでありたい。
小説の続きを書こう。頭が動き出すのがこの時間なのはちょっと考えものだけど。


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