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二人のためのレシピ|2.アップルサイダー・ドーナツ

12月になると思い出すのが、アメリカンデリでコックをしていた頃の嵐のような忙しさと、店内に漂っていたホット・アップルサイダーの甘い香り。

アップルサイダーとはいわゆるりんごジュースのことで、秋に収穫したりんごを絞った無濾過ジュースをアメリカでは「サイダー」と呼び、それを温めて楽しむ「ホット・アップルサイダー」はニューヨークのホリデーシーズンを彩る風物詩のひとつです。

そのアップルサイダーのおいしさを存分に堪能できるのが「アップルサイダー・ドーナツ」です。ドーナツ生地にりんごジュースを練りこんだ素朴な味わいのアメリカ菓子。一口頬張れば自然と頰が緩みます。

今、心にいるその人とご一緒に、ぜひどうぞ。

アップルサイダー・ドーナツ

【材料】2人分 ※8.5cmサイズ6個分
・りんご…150g(1/2個)
・片栗粉…20g

・バター…30g
・砂糖…50g
・卵黄…1個

〈A.粉類〉
・強力粉…100g
・薄力粉…100g
・ベーキングパウダー…6g
・シナモンパウダー…適量

・グラニュー糖(仕上げ用)…お好みで

アップルサイダー・ドーナツとは、本来りんごジュースを生地に練り込むドーナツのことですが、水分量が多いドーナツ生地はベタついて揚げる前の成形でかなり苦労することがあります。そのため今日のレシピでは生のりんごを使ってその雰囲気を愉しみます。繰り返し作りたくなる、失敗の少ないレシピです。


芯を除いたりんごを皮ごとすりおろして耐熱容器に入れ、片栗粉を加えてよく混ぜ合わせます。ラップをせずに電子レンジ(600w)で2分加熱後、よくよく混ぜ合わせてから、そのまま置いて冷ましておきます。

片栗粉で水分を閉じ込めて簡易的にペースト状にすると、りんごの果汁を全て加えることが出来てその上生地もベタつきにくく、とても扱いやすくなります。

大きめのボウルに〈A.粉類〉を全て入れ、乾いた泡立て器でよく混ぜ合わせます。こうして泡立て器で空気を含ませるようにしっかり混ぜておけば、粉類は振るわなくても全く問題ありません。

別のボウルにバターと砂糖を入れ、ゴムベラで練り合わせます。バターは早めに冷蔵庫から出して室温に戻しておいてください。お砂糖はお菓子作りでも普段の料理と同じ、甘さの優しい「てんさい糖」を使っています。

バターと砂糖がよく混ざったら、卵黄を加えてさらによく混ぜます。この工程でのポイントは2つ「バターは液状の溶かしバターにしないこと」「全卵ではなく卵黄のみを使うこと」です。

今日ご紹介するドーナツは型で抜いて揚げるタイプで、成形する際の生地の扱いやすさがとても重要になります。とはいえ生地の柔らかさは当然食感にも関係して、小麦粉を増やすと生地は扱いやすくなるものの、みっしりと食感が硬くなり、柔らかい生地にするとベタベタと手について成形が上手くできないという事態に見舞われます。

そこで、バターを溶かし過ぎず、卵は濃度のある卵黄のみを使うことで、生地は適度に扱いやすく風味も良く仕上がるのです。そこへ冷ましておいたりんごペーストを加えてよく混ぜ合わせます。片栗粉でぶりっと固まっていますので、ヘラで潰すようにしながらしっかりと馴染ませてください。(残った卵白は、かきたま汁やチャーハンなどでいつも使い切っています。)


粉のボウルの方にペーストを加え、ヘラでペーストを切るようにしながら少しずつ粉と馴染ませていきます。決して練り合わせようとするのではなく、ペーストが自然と粉を吸い寄せてまとまってくるのに任せて、全体を細かい粒粒にするつもりでヘラで切り続けてください。

粉が大方ペーストに吸い込まれたら、そこからは手でまとめていきます。やはり練るのではなく、ポソポソと散らばっている粒粒を手で押すようにしてくっつけながら一つにまとめていくイメージです。

ここでのポイントは「できるだけ練らないこと」「しっかり休ませること」の2つです。生地の表面は「粒粒の集合体」といったザラつきのある状態で問題ありません。練ると小麦粉のグルテンが引き出されて生地が硬くなってしまうため、何となくひとまとまりになれば良く、その代わりに「休ませる」ことによって、粉と水分が自然に馴染んでなめらかさが出てきます。

生地が大体一つにまとまったらラップで包み、冷蔵庫で1時間以上休ませればドーナツ生地の完成です。使った道具を片付けながら、生地と一緒に一息ついてください。

生地ができたら、型抜きしていよいよ揚げていきましょう。フライパンに新しい油を入れます。量は底から1.5cm高さ程度の少なめで十分。油はサラダ油か、もしくは高温に熱すると甘い香りが立つ「米油」もおすすめです。

そして、揚げた後にまぶすシナモンシュガー(グラニュー糖にシナモンパウダーを適量加える)をバットに用意しておきます。この仕上げはお好みですが、今日のレシピはシナモンシュガーをまぶした時に丁度良くなるように、生地の甘さはやや控えめになっています。

油を弱火で温めつつ、冷蔵庫から生地を出してラップを広げ、上からもう1枚のラップで挟んで、1cm厚さを目安に生地を伸ばします。

上のラップをはがして(裏面のラップも一度はがしておくと、型抜き後に生地がきれいに取れます)型抜きします。小皿に小麦粉を用意して、型にその都度粉をまぶすと生地が外れやすくなりますよ。

いくつか型抜きしたら、穴の空いた生地を畳んでから再度伸ばして型抜きすると、大体6個分の輪っかが取れます。

専用のドーナツ型がなくても、コップや空き瓶、ペットボトルの蓋など、手近にあるものでなんとかできます。私は8.5cmのセルクルと、穴は大きめが好みなのでクラフトの粉チーズの蓋との組み合わせが気に入っています。セルクルはサイズ違いの3個セットで100円ショップで見つけたものです。最初は手持ちのもので工夫して、繰り返し作るようになった時にお気に入りの道具を購入すれば良いと思います。

型抜きできたら静かに油に入れて、両面で3〜4分を目安に弱火で揚げていきます。とても揚げ色が付きやすいので、初めから油の温度を上げすぎないように注意してください。

1〜2分経過して下の面が色付き、表面が割れてきたら裏返します。裏返すときは網やフライ返しを使って丁寧に返すと、崩れにくくかつ安全です。

両面がこんがりきれいに色付いたらよく油を切り、そのままシナモンシュガーの中に転がして全体にまぶして出来上がりです。穴を抜いた部分もそのまま揚げると丸くてかわいらしいですよ。

揚げ菓子はカロリーが気になるところ。揚げる前まではいつも葛藤があるのですが、油のコクもおいしさの一部と割り切って揚げてしまえば、結果はいつも大満足なので良しとしています。

アップルサイダー・ドーナツの愉しみ方

まずは、ぜひ揚げ立てを温かい内に食べてみてください。外はザックザク、中はしっとりの2つの食感が愉しめます。そして、りんごとシナモンの相性の良さといったら。

りんごのドーナツとりんごのお酒「シードル」の組み合わせも、おとなっぽくて気に入っているおすすめの愉しみ方です。

りんごを発酵させて造る発泡性のアルコールをフランスでは「シードル」と呼び、ワイン同様に甘口からドライなタイプまで様々な飲み口のものがあります。ちなみにアメリカで同様のアルコール飲料は、ジュースのサイダーと区別して「ハードサイダー」と呼ばれます。自然の優しい味わいが、今年も頑張った体に沁み入ります。

ドーナツは一晩置くとしっとりとしてそれもまたおいしいので、翌日までぜひ愉しんでください。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。