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お弁当の時間 【きのこの炊き込みご飯】

料理が苦手とずっと言い続けている友人がいる。
彼女はとても忙しい人で、平日の夜は毎日付き合いで埋まっている。おいしいお店をたくさん知っているし酒にもめっぽう強く、穏やかで愛嬌のある人柄から誘いが絶えない。そんな多忙な彼女から「お昼は毎日お弁当にしたの」と聞いた時はとても不思議に感じた。毎晩遅くに帰り朝お弁当まで作るなんて大変と単純に思ったのと、財布だけ持って颯爽とオフィスを飛び出しランチに出かけて行くようなイメージが彼女にはしっくりくるから。

私がそう言うと「作るって言ってもただある物を詰めてるだけだから」と。そしてお弁当にしたのは「一人になれるから」だと。毎晩付き合いの席で会話をしながら相手のペースに合わせて食事をするのは気疲れするというもの。その代わりお昼は自分で詰めた位置に自分の馴れた味が収まっている安心感を自分の好きなペースで味わう。誘いを断ることなく自分らしい時間も捻り出す、いかにも気遣いの人らしいなと何か沁み入るものがあった。ほどなくして彼女は勤め先のエース部署の部長になった。苦手と感じることも自分なりの動機付けと続ける工夫ができる彼女だからごくごく自然な結果だと思う。

私自身もお弁当生活の期間が割と長くあって、それは近くに丁度良いランチをやっているお店がないとか外へ食べに出掛ける時間が足りないだとか現実的な理由で、何よりもまず毎日家から持ち出せることが最重要だった。人に作ってあげるお弁当なら彩りやボリュームやバランスとか色々気になることも多いけれど、自分で詰めて自分で食べる分には自分に必要なものだけが入っていればそれでいい。お弁当のメインを炊き込みごはんにしたらもうおかずも具として入っているようなものだから、そこに足りない肉か魚かちょっと補えば十分。時間が経てばまたお腹は空く、次は何を食べようかと思いを巡らせる楽しみを残すくらいがお弁当には丁度いい。

◼️きのこの炊き込みごはん◼️

【使った材料】
●きのこ…200g〜、石づきを切り落として大きめに手でほぐす
●ごま油…適量
●塩昆布…10g〜
●米…225g(1.5合)、洗ってからザルで水気を切っておく
●出汁…300g
●酒…15g
●醤油…18g(薄口醤油10g+濃口醤油8gで合わせて使用)
●しょうが…15g、お好みで、皮をむいて千切りに

※土鍋で炊いた時の目安の分量です
※醤油は色・味共にすっきりの薄口醤油をベースに、濃口醤油のコクを加えるイメージで合わせて使用しました。もちろんどちらか1種類でも大丈夫です。

水分の多いきのこは、先に加熱して水分を減らしてから炊けば水加減も心配なく、香ばしさとシャキッシャキッとした独特の食感も生まれて新鮮な仕上がりに。ごはんはごはんでおいしく具も具で食べていいくらいの味加減をイメージすると、味付けの決め方も作り方もすっきりしてきます。

①きのこをじっくり焼きます
フライパンにごま油を熱し、できるだけ重ならないようにきのこを広げて中火くらいで焼き始めます。
きのこは火を入れるとぐんとかさが減ってしまうので、ちょっと多すぎるかなと不安がよぎるくらい、たっぷり目の量を思い切って使ってみることをおすすめします。
こんがり焼き目をつけて仕上げたいので、かき混ぜながら炒めるのではなく、一度並べたらしばらく触らず気長に待ちます。水分があるうちは急に焦げたりしないし、待つといっても放っておくだけ。

きのこは1種類でもいいし、形や色が違うものを何種類か合わせて使うと見た目にも味にも変化が生まれて楽しくなる。
この日は舞茸、エリンギに、かきの木茸とはたけしめじを見つけたので合わせて4種類使ってみました。

かきの木茸は、よく見かける白いエノキの原種といわれているものだそうで、生で触った感じも食感も白いエノキよりしっかりしていてやや水分が少ない感じ。
白のエノキは根元までほぼ真っ直ぐ棒状で石づきもスパッと切り落としやすくなっているけれど、このかきの木茸やブナシメジのような根元がぎゅっとすぼまっていて上が開いているきのこは、先に大まかに割ってから石づきを切る方が、切りやすいし残りにくくなります。

はたけしめじは、いかにもきのこらしい形と薄いグレーのカサの色もかわいらしいきのこ。
こんもり丸っこい株のブナシメジと違い、シュッと伸びた姿でこちらは根元が切り落としやすかった。手でほぐして、大きいものは縦に割きました。

舞茸、エリンギは石づきがほとんどないけれど、触って固そうなところや汚いところがあれば切って除く方が食感が良くなる。
ほぐす時、切る時は、火を入れるとしぼむことを考えて大きめ大きめを心がけて。

②鍋にお米を準備します
きのこを焼いている間に、洗ってザルで水切りしたお米、分量の出汁と、酒、醤油を鍋に入れておきます。
私は炊飯器を持っていないのでいつも鍋でごはんを炊いていて、だからお米の水気を一度しっかり切ってからあらかじめ計った水分を入れますが、炊飯器なら調味料を入れて出汁の量で目盛りに水加減すればいいと思います。

③焼ききのこを仕上げて、炊きます
きのこの片面に焼き目がついてきたら、裏返します。
裏返したらまたしばらく触らずに焼き続けますが、もうだいぶ水分が減っているので裏面の方が早く焼けてくる。

両面にこんがりいい色の焼き目がついたところで、きのこの味付けと昆布で旨味をさらに重ねるWの役割の塩昆布を加え、混ぜ合わせたら焼きは終了。

鍋に準備しておいた米の上にどさっと入れて、蓋をして炊いていきます。
ちなみに塩昆布は、そのままでつまみにごはんに、豆腐にのせてごま油をたらして、きゅうりと和えて、と料理にも使えて便利なので大体いつも家に置いています。

[私の普段のお米の炊き方]
蓋に穴のない鍋で、お米1合(180cc)に対して、同量より少し多め(1〜2割増し位)の水加減で炊いています。
⒈蓋をして中火にかけ(10分後位目安)、蓋の隙間から少し湯気が出てきたタイミングを見てごくごく弱火に火加減する
⒉そこから9分そのまま弱火で炊く
⒊時間が経ったら蓋を開けてのぞき、表面に水気が見えないでお米に吸い込まれていれば火を止める
⒋蓋をしたまま10分位蒸らしたら出来上がりです

※お鍋で炊くときは、時間を忘れないようにタイマーを鳴らすと安心。

④で、完成です

蒸らし終わったら、お好みで千切りしょうがを混ぜ込んで完成。
シャキッシャキッときのこのしっかりとした歯ごたえが小気味好く、噛むほどにきのこという食材そのものの旨味が味わえる。じっくり焼いた甲斐があったというもの。

きのこと相性の良いバターのせも是非。

和風そのものだったところに甘い香りとコクが加わって、粗挽き黒胡椒なんか散らしたら見た目も俄然シャレてくる。
初めて口にした時そのおいしさに衝撃を受けた食べ物の一つはバターでした。
バターっておいしいよね。

炊き込みごはんは、お弁当にしても渋くキマる。
ごはんを詰めれば同時にきのこもどっさり入る訳なので、たんぱく質の魚を一切れと、口直しに漬物でも添えたらお昼なら私は十分。詰めてみてなんとなく寂しい感じがしたら、余裕があれば少し色のことも考えてみる。
この日は茹で三つ葉で青みを足した。冷凍の枝豆なんかも使いやすいし、刻み海苔・ゴマ・ゆかりなどそのままサッと添えられるものもあると助かる。

あと探すと意外に好みの色柄に出会えないのがお弁当包みで、元が正方形でなくてもある程度サイズがあれば包むことはできるので、ガンガン洗えて丈夫なリネンのキッチンクロスを重宝している。

明日はがっつりしょうが焼きでも詰めてみるか、それとも立ち食いそばでさらっと済ませるか、欲するものはその時々に人それぞれ。大事なことはそのとき自分にとって必要なものを必要なだけ補うということだと思う。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただきありがとうございました。

[きのこの炊き込みご飯]の動画をYouTubeに投稿しています。合わせて見てもらえたら嬉しいです。

お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。