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二人のためのレシピ|11.鶏むね肉のトンナートソース

年々暑さが厳しくなり、盛夏の食事の楽しみ方にも工夫が必要かもしれません。
しっとり茹でた鶏むね肉にツナのソースを合わせる今日の一皿は、冷製で食べやすい夏向きのイタリア風料理。元の「ヴィテッロ・トンナート(仔牛肉のツナソース)」というお料理では仔牛肉が使われますが、家なら手頃な鶏むね肉で十分その雰囲気が愉しめます。

トンナートは、簡単に言えばイタリアのツナマヨのこと。お肉とツナの組み合わせは初めて聞くと意外に感じるものですが、脂肪の少ないさっぱりとしたお肉にツナとオリーブオイルの旨味のある油分が合わさると、軽さの中に贅沢な雰囲気を合わせ持つ新鮮なおいしさになります。

茹で鶏は余熱を活かして加熱時間を短めに、だからこそしっとり柔らか。長く火の側に立ちたくない今の季節にぴったりの茹で方がポイント。

あまりの暑さに喉越しのよい冷たい麺類ばかりが続きがち。食べやすいお肉料理も取り入れてバランスを保ちながら、健やかに夏を乗り切りたいものです。

今、心にいるその人とご一緒に、ぜひどうぞ。

鶏むね肉のトンナートソース【材料】2人分 

〈茹で鶏〉
・鶏むね肉…1枚(600〜700g)
・水…750cc
・塩…6g

〈トンナートソース〉
・ツナ缶…1缶(固形量70g程度)
・アンチョビ…2枚(10g)
・マヨネーズ…15g(大さじ1)
・フレンチマスタード(粒なし)…15g(大さじ1)
・オリーブオイル…15g(大さじ1)
・酢…5〜10g(小さじ1)
・塩…1g
・こしょう…適量

「中が生っぽい…」といった失敗がおこりにくい〈茹で鶏〉の茹で方がポイントです。〈トンナートソース〉はコンパクトにすり鉢でも作れます。意外なほどシンプルかつ思いきり贅沢な味わいが作れる、鶏むね肉のレパートリーにぜひ加えていただきたい一品です。


鶏むね肉のトンナートソースの作り方

⒈〈茹で鶏〉を作ります。
蓋のできる鍋に、分量の水、塩を入れて火にかけ、中火で沸騰している状態のところへ鶏むね肉を静かに入れます。

〈茹で汁の量(高さ)とお肉のバランスが茹で加減に影響するため、できるだけ小振りなお鍋を使うのがコツ。もし鍋が大きく茹で汁の表面からお肉がかなり顔を出してしまいそうな場合には、[水125cc+塩1g]の割合で茹で汁を増やして準備してください。〉
 
お肉を入れて一度鍋がシンと静かになってから、再び沸くまで中火のまま加熱を続け(3〜4分目安)、お湯が沸き始めたら、表面がふつふつと軽く揺れる程度に火加減して、そこから2分茹でます。途中一度お肉を裏返してください。

茹で時間の2分が経ったら、蓋をして火を止め、そこから30分以上そのまま置いておきます。

この「置いておく」時間が大切です。

お肉に完全に火が通るまで茹でようとすると、初めに熱が加わる外側部分が硬くなったりパサついてしまいがち。そこで適度に熱を加えたら、その後は熱い茹で汁に浸った状態で時間を置くことで温度がゆっくり行き渡り、お肉の外側と内側で質感に差ができにくくなるのです。

余熱を利用する方法では、時折「中が生っぽい…」という失敗を目にすることがありますが、この「中火でお湯が沸騰しているところに肉を入れ→中火のまま再度沸くまで待ちそこから“2分”茹でる(途中一度裏返す)→蓋をして放置する(30分以上)」茹で方は、失敗が起こりにくく安定した茹で上がりにできますので、ぜひお試しください。

トンナートソースとの組み合わせでは、お肉が冷たい方がよく合うので、できればこの〈茹で鶏〉までを前日か早い時間に作り、冷やしておけると理想的。時間がない場合は、余熱で放置した後、お肉だけをバットなどに取り出し表面にラップを貼り付けておくと、早く冷ますことができます。粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やしてください。

今日は茹で汁に、残っていたパセリの茎を香り付けとして加えて茹でました。他に玉ねぎにんじんの皮や端っこ、ローリエなどお手持ちのハーブがあれば加えると、洋風の雰囲気が増します。もちろんシンプルに塩のみでもおいしさは十分。茹で汁もおいしいスープとして無駄なく使えます。同じ茹で方で、香味野菜を長ネギの青いところとしょうがの皮に変えれば、シンガポール風チキンライスや、バンバンジー、よだれどりといったアジア風メニューでも楽しめます。

⒉〈茹で鶏〉の準備ができたら、トンナートソースを作ります。
すり鉢に、ツナ缶をオイルごととアンチョビを入れ、つくようにしてつぶしていきます。ツナ缶のオイルには旨味がたっぷり溶け込んでいるので、ぜひオイルごと使いましょう。

ミキサーやフードプロセッサーがあればもちろん使っていただいて構いません。機械の場合はある程度量がないとうまく回らないことがあるので、私はいつも小振りのすり鉢で作っています。

ツナの繊維がある程度つぶれてペースト状になってきたら、他の材料を全て加え、よく混ぜ合わせたらソースのできあがりです。初めにツナとアンチョビをしっかりつぶしておくと、なめらかなソースになります。

ツナ缶、マヨネーズ、オリーブオイル…では、少々油が多過ぎるように思った方もいるかもしれません。けれどだからこそ、あっさり淡白な鶏むね肉との組み合わせが最高の相性になります。ぜひ一度は思い切って、レシピ通りの分量で試してみていただけると幸いです。

西洋料理の場合、オリーブオイルやバターは単なる油ではなく、「食材」として使うべきところではしっかり使うことが大切です。

⒊あとは盛り付けて完成です。
鶏むね肉の皮をはずし、できるだけ薄くスライスします。

皮はこのお料理では使いませんが、皮も一緒に茹でると茹で汁スープが格段においしくなるので、皮付きのままがおすすめです。その上で、はずした皮は後で別にカリッと焼くとつまみ食いに最適です。

薄く切ったお肉を、お皿に広げて並べます。

その上に全体に行き渡るように〈トンナートソース〉を広げます。これで鶏むね肉のトンナートソースのできあがりです。このソースは液体というよりペーストに近い状態なので、スプーンやゴムベラなどを使って伸ばすように広げてみてください。濃度がある分食べる時はお肉によくからんで食べやすく、ソースの濃厚なおいしさを存分に楽しめます。

仕上げに黒こしょうや、彩りにパセリを散らすと、風味も見た目も一層盛り上がります。

余熱で熱を回して仕上げた鶏むね肉はしっとりと柔らかく、ツナソースがよくからんで、なめらかな味わいと舌触り。お酢の酸味やフレンチマスタードの風味、アンチョビの塩気と旨みが加わると、食べ慣れたおにぎりのツナマヨとはやはり一味違う西洋風の香りがします。こってりとした見た目に反して食べてみるとしつこい印象はなく、淡白なお肉がとてもおいしく食べやすく感じると思います。

イタリア料理としては前菜メニューの位置付けですが、軽やかな鶏むね肉と濃厚なツナのソースとの相性はたっぷり食べたくなるおいしさなので、この一皿をメインにして少しサラダやパンがあれば、もう大満足の食卓になります。

ひんやりなめらかで食べやすく、酷暑のスタミナ補給にぴったりの一皿。よく冷えたワイン、ビールと一緒に、ぜひどうぞ。

それでは今日はこのへんで。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

お読み頂きありがとうございます。 これからもおいしいお料理とおいしいお酒をたくさんお届けします。