“オトナインターンシップ”は静岡新聞社になにをもたらしたのか? 【インタビュー】
みなさん、こんにちは!
静岡新聞社 地域ビジネス推進局 生活情報部です。
静岡新聞社では、2021年10月に転職検討者のための「オトナインターンシップ」を行いました。
企画にご賛同いただいた5社の企業様と当社(静岡新聞社)の計6社がインターンシップを公募し、転職検討者の方から多くの応募をいただくことができました。本当にありがとうございます。
今回のnoteではオトナインターンシップの結果と、静岡新聞社がなぜ「転職検討者のための体験機会」をつくろうと思ったのか?についてお話したいと思います。
話し手:
静岡新聞社 地域ビジネス推進局 生活情報部
梅原崇(写真右)・岩上和樹(写真左)
※オトナインターンシップ実行管理を担当
聞き手:
HONE 代表 桜井貴斗(写真中央)
※企画の発起人、企画サポート
オトナインターンシップ実施までの裏側。
桜井:まず「オトナインターンシップ」が生まれた背景について教えていただけますでしょうか。
梅原:オトナインターンシップは企業様の転職・中途採用のための企画です。静岡新聞社の採用領域において、新卒採用は30年ほどやっていますが、中途採用にはあまり力を入れられていませんでした。そもそも知見が足りなかったり、新卒採用と同じような企画を行なっても集客や企業協賛が厳しかったりと壁に当たっていたんです。
そのため、今後は従来のスタイルを続けていくのは難しいだろうというのが全員の総意でした。「ゼロベースで新しいものにチャレンジしてみよう、でも何をやったらいいんだろう」というモヤモヤしている状況で桜井さんからアイデアをいただきました。実際に何度かミーティングにも参加してもらい、桜井さんの中にある骨組みを説明いただきながら、私たちの企画を具体的なものにしていきました。
桜井:そうですね。当初はまずはじめに、私が担当している企業様の採用マーケティング事例をご説明したように思います。「今はこんなやり方もありますよ〜!」というお話をして、それをキッカケに皆さんの中にあるアイデアがより表出していったように感じました。
梅原:確かにあの事例は私たちにこういうやり方もあるんだと教えてくれました。最初の出会いはそこからでしたね。
岩上:ちょうどあの時で言うと、2020年8月から私たちも変わらなければならないという中で、将来像プロジェクト(部署内のマインドセット機会)をスタートしていたため、とてもタイムリーでした。
転職イベントを行うも、集客は厳しかった。
梅原:2020年は何度か静岡県内で転職イベントを行いましたが、いずれも厳しかったですね。
桜井:そうだったんですね。そんな最中、なにかを変えなければならないという話になった中で、新しい企画を考えようとなったんですね。
梅原:市場性で言うと、転職や中途採用が一般化してきていた中、これまで以上にチャンスありそうでした。けれどもやりきれていませんでした。
岩上:会社全体としても、現在の私たちが生業としているテレビ・新聞・ラジオといった既存メディアも変わっていかなければならない、ということで2021年の1月1日に「静岡新聞SBSはマスコミをやめる」という一面広告を出しました。全社的にもそうですし、私たちの部署である生活情報部も組織単位で変わろう!と思い、いくつかの取り組みを具体化させてきました。
梅原:細かい部分から少しずつ変えてきましたが、そもそも部署自体、全面的に変えなければならないよね、という考えの先にあったのが、今回のオトナインターンシップでした。
桜井:静岡新聞社生活情報部のサービスを良くも悪くも形態を変えざる得なかった、ということですね。
梅原:ベースそのものがなかった(うまくいっていなかった)ので、すぐ変えてみよう!ということで取り掛かりやすかったです。
就業条件ではなく、「仕事のおもしろさ」を。
桜井:最初に提案した資料を振り返ると、現在の転職市場では就業条件だけではなく、やりがい・価値観や文化/風土の一致なども仕事選びの動機づけになるというお話をしたと思うのですが、当初皆さんがこのお話を受けて感じたことなど覚えていますか?
梅原:わからないことも多かったのですが、これまでの企画をそのまま続けるよりはチャレンジしてみたい!という方向に気持ちがいったことを覚えています。
桜井:確か、皆さんおもしろそうだからやりましょう!みたいな感じだったんですね(笑)。
岩上:私たちのこれまでの転職層への取り組みですと、「転職のかんづめWEB」と「転職イベント」、そして新聞の中の求人案内でしたが、どれも就業条件のみを主に押し出した訴求を行っていました。しかし、それだけでは求職者の方にはなかなか受け入れてもらえないという課題もありました。
もちろん就業条件は大事ですが、その前に経営者がどんなことを考えて会社を経営されているのか、求職者の方は今までのキャリアからどういった想いを持って仕事を探しているのか、をお互いが理解しあう場がなかったと思います。そういった観点で言うと、桜井さんからいただいたご提案は、全員にとっても新鮮でやってみたいと思えた、というのが社内の反応でした。
桜井:これまでやってきたこと以外のことにチャレンジするとなると、普通は「怖い・不安・どうしよう」というような、ネガティブな印象が強くなるのかなと思っていたのですが、皆さんとてもポジティブでしたよね。それはなぜですか?
梅原:それだけ壁に当たっていました。なので割り切っていた、というか。そして、転職市場はチャンスがあるのでなにかチャレンジしたい、数年後に私たちも変わるんだ!という動機づけもできていたので尚のことポジティブに受け止められたのだと思います。
岩上:みんなの安心の言葉になったんですが、梅原・桜井さんが「失敗してもやってみよう!」とずっと声をかけてくれていたのも大きかったと思います。
梅原:企画そのものが「おもしろそう、わくわくする」というのを営業みんなが感じていました。その企画をもっと具体的に詰めていくために桜井さんにより深く入っていただいて、営業とみんなで会議しましょうとスムーズに次のステップに行きましたね。
桜井:私自身も梅原さんや岩上さんがポジティブな印象を持ってくださっていたので嬉しかったですし、とてもやりやすかったです。そこからは、皆さんでリストアップをどうするか、インターンシップのテーマをどうするか、というアイデアが出始めましたね。
オトナインターンシップに勝算はあったのか?
桜井:営業をスタートしてみて社内で苦労した点、印象に残っている点などはありますか?
梅原:逆に桜井さんにお聞きしたいのは、今回のオトナインターンシップの段取りなどは最初からイメージできていたんですか?
桜井:大まかにはあって、「皆さんの営業力が活きれば」勝算はありました。そもそも静岡県では経営者の価値観や会社の文化/風土を体験をする機会が圧倒的に足りないと感じていたんです。
岩上:正直に言うと、今回の営業という面においてはとても苦労しました(笑)。自分たちがいいね、といくら企画に共感したとしても、それを企業様にどう伝えるか?どうイメージをしてもらうか?という点はなかなか伝わりませんでした。
梅原:オトナインターンシップ自体、アイデアはすごい面白いのですが、営業自身にとっても、まだイメージが湧きづらいところがあったように思います。例えば、どういう風にインターンシップが進むのだろうとか、どうやって集客するんだろうとか。だけどワクワク感があるからやってみよう!と突き進みました。
梅原:今まではやらなくてもいい、と思っていた領域まで手を突っ込みました。これまではメディアを販売するところまでが業務領域になることも多かったのですが、企業様のインターンシップの企画を一緒に考えたり、集客・周知の方法を一緒に考えたり、、。でもそこまで突っ込んで考えないと、この市場の中で戦っていくのは難しいということもわかりました。
岩上:悩んだ分、非常に良い機会と体験ができたと思います。今まで私たちの営業のメンバーも経営者様と会う機会は多く、同時に課題を聞くことも多かったのですが、自分たちの持っている商材に合うか合わないかという観点で活動していたので、合わない場合は提案しきれていませんでした。でも今回の企画をきっかけに、自社の商材以外でも、お客様の課題解決に寄り添っていこう、という考え方に一歩近づいていくことができたという意味では、オトナインターンシップは私たちの組織にとっても良い企画になったと思います。
地方の中途採用でnoteを活用、実際どうなの?
岩上:私たちのお客様にオトナインターンシップを提案する際、お客様のnoteの認知度が高くなかったという状況があり、かつ私たち自身もnoteに詳しい人が多くありませんでした・・・。
梅原:案内していても採用担当レベルの方はご存じない、若い人は少し知っている、という状況が多かったですね。
岩上:と同時にnoteと採用をどう結び付けるのかという苦労もありましたね。ただし実際提案を続けてみると、今回協賛いただいた松下工業さんが自分たちでnoteをはじめてみたり、間違いなくその魅力は伝えられていると思います。
岩上:あと皆さんからの反響があったのは、特設ページのキャッチコピーですね。「仕事がつまらなくてたまるか。」というキャッチは、当社からするとチャレンジングなキャッチでした。
桜井:確かに。よくオッケーいただいたな・・・というところがあって。
梅原:ユーザー目線で届けたい相手にどういうコピーが届くか?という点で考えたとき、「社内で通りそうな柔らかいもの」と、「求職者に届きそうな尖ったもの」であれば当然後者だろう、と異論は出ませんでした。
今回、応募者のデータを見て嬉しかったのは、予想外に静岡県外からの応募が多く、インターンシップに参加してくれた関東在住の方は、「SNSに何度もバナーが出てきて、“俺に対して地元に戻って来いよ”というメッセージだ」と受け取ったと言ってくださいました。メッセージが届いた!という実感があったので嬉しかったです。
実施後の企業様の反響は上々だった。
岩上:企画実施後に、桜井さんと一緒につくったプロモーションレポートをお客様に説明に行ったのですが、総じて反応がいいんですよ。具体的に自分たちにどんな人が興味を持っているのか?というのが数値として示せたのは大きかったんじゃないかと思っています。
梅原:オトナインターンシップ、就活カフェ(別件で進めているプロジェクト)にも仕事を探している人に共通しているのは、新しい職場や会社に飛び込んでいくために、企業や経営者の深いところまで知る機会があるか?というニーズです。それらを満たすという意味では両プロジェクトは同じ機能を持っていると思います。
岩上:すごいですよね。オトナインターンシップも就活カフェも、私たちはこれまでは「メディアへの掲載」までを価値として提供してきましたが、そこから一気に広がりました。オトナインターンシップは採用の先に、働く人も雇用する人もお互いが幸せになれる場をつくりましょうというのが目的だと思っているので、「何人採用できました」という結果の話だけではなく、その先のことも一緒に考えられる素晴らしい企画なんだなと感じます。
想いを伝える大切さを感じた。
岩上:想いを伝えることは本当に大事だなと思いました。私も自社(静岡新聞社)のインターンシップのサポーターとして当時のイベントに参加したのですが、インターンシップが終わったあともうちのことをもっと聞きたい!という応募者の方が多数いらっしゃいました。私たちの想いが伝わったようでとても刺激を受け、嬉しかったです。
桜井:今回の応募フォームにいただいた動機を拝見すると、応募者の方が皆熱い想いを持っていて、noteや特設ページの中身が刺さった人がきっとたくさんいたんですよね。
梅原:企業目線では「チャレンジだから一緒に乗ってみる」と言ってくださったお客様の気持ちにも支えられました。これからは企画そのものをより理解・共感をしてもらえることを増やすことが目標かな、と思っています。
岩上:今後、私たちの営業メンバーのアプローチの仕方も変わってくるんじゃないかと思います。今までは何名採用したのか?というところから、採用できなかったとしたらどうしてダメだったのか一緒に考えませんか?といったように、違ったアプローチができるのではないかと今回のインターンシップを通じて感じました。今後、そういった体制にしていきたいなという想いになりました。
桜井:そうですよね。企画を立てて、お客様に提案して「伸るか反るか」だったものが、お客様ごとにカスタマイズして提案することができたらそもそも「失注」という概念そのものがなくなるはずだと思うので。
梅原:うちの部(生活情報部)としてまったく新しい企画にチャレンジすることは実に10年ぶりなんですよ。オトナインターンシップも就活カフェもまだ完全には育ってはいないのですが、仕組みから全員でつくり出すのはとても久しぶりなので、今後こういったチャレンジをどんどんしていかなければならないと思いましたし、今回がその先駆けになったのではないかと思います。
「メディアに載せて終わり」にせず、そこから先にチャレンジしよう!というのが今私たちの目指すところでもあるので、模索し、トライアルし、オトナインターンシップというブランドを一人前にしたいな、と思っています。
以上、インタビューをお送りしました!
静岡新聞社 地域ビジネス推進局 生活情報部ではこれからもオトナインターンシップ第2弾を含め、さまざまなチャレンジを行い、静岡県の「働く」をおもしろくしてきたいと思っています!!
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!!
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