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戻り川心中


戻り川心中

 珠玉の短編集、という言葉が、これほど似合う作品集も、少ないでしょう。

 文章も、物語も、構成も、すべてが完璧です。
 ページを開けば、美しく、むごいお話が、次々に現われます。

 どれも、ミステリーですので、話の筋を明かすことは、できません。
 ミステリーが苦手な人でも、読み進められると思います。見事な文章に乗せられるからです。
 一つ一つの場面の鮮やかさに、ため息が出ます。

 お話の舞台は、みな、大正から昭和初期の日本です。
 その頃の日本の、どうしようもない貧しさや、階級格差が、物語に表われています。とてもむごいお話ですのに、連城三紀彦【れんじょう みきひこ】氏の手にかかると、世にも美しいお話になってしまいます。

 私は、この中では、「花緋文字」が好きですね。これまた、残酷極まりない―精神的な意味で―お話ですが。

 名手の手になる名作を、お楽しみ下さい。
 以下に、本書の目次を書いておきますね。

藤の香
菊の塵【ちり】
桔梗の宿
桐の柩【ひつぎ】
白蓮【びゃくれん】の寺
戻り川心中
花緋文字
夕萩心中

解説 巽 昌章【たつみ まさあき】



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