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ラコタとナバホに恋をして


ラコタとナバホに恋をして

 この本は、アメリカ先住民(アメリカ・インディアン)について書かれた本です。
 正確には、「語られた」ですね。三人の鼎談【ていだん】を、文章に起こしています。

 この本の著者の三人は、全員、日本人です。年齢も性別も、出身地も育った環境も、職業も、違います。
 なのに、なぜか、アメリカ先住民に魅せられてしまったという共通点があります。
 三人のうち、船木さんがラコタ族に、塩浦さんとぬくみさんがナバホ族に、関わっています。

 日本語で、アメリカ先住民について書かれた本は、少ないですね。
 その中でも、ナバホ族に関する情報は、比較的、多いです。
 けれども、ラコタ族に関する情報は、ずっと少ないです。ラコタ族の情報を仕入れたい人には、またとない情報源でしょう。

 この本は、著者が三人とも日本人、というのが、いいのですね。
 日本人が、日本人にわかりやすいように、アメリカ先住民の文化を紹介しているからです。

 三人とも、共通点がありながら、差異も大きい点が、面白いです。
 ラコタ族と、ナバホ族とを比較できるので、アメリカ先住民の文化の多様性や、共通性がわかりやすいです。

 ただ、この本は、「出会い時」が難しいです。
 この本から、どれだけのものを読み取れるか、読み手に任される点が、大きいからです。

 アメリカ先住民について、まったく知らない人が、この本を読むと、散漫な印象だと思います。何が言いたいのか、よくわからないでしょう。
 この本には、貴重な情報が、たくさん含まれています。でも、初心者では、おそらく、それらを読み取れません。

 逆に、アメリカ先住民について詳しい人が、この本を読むと、もの足りないでしょう。
 先住民と接した人なら、当然、知っているはずの情報が、しっかり書き込まれているからです。

 この本に、評価の星を付けるとしたら、五つ星を満点として、一つ減らして、四つ星ですね。そうするのは、前記の理由です。良い本ですが、万人に勧められるわけではない、ということです。
 「アメリカ先住民について知り始めて、少し経った人」に、ちょうどいいと思います。

 「米国へ行って、実際に、アメリカ先住民と会ってみたい」人には、この本を強力にお勧めします。
 この本の著者三人は、先住民とまったく縁がなかったのに、米国へ飛び込んで、「先住民と友達になる」夢を果たした人たちだからです。
 そういう人が出会う疑問、戸惑い、挫折、希望、喜びといったものが、赤裸々に語られています。

 なお、この本の出版社の「めるくまーる」は、ややスピリチュアル寄りの本を出すことで、知られます。
 が、この本では、神秘的な体験といった、スピリチュアル系の話は、語られません。そちら方面を期待する方は、別の本をお読み下さい。



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