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魔法少女の系譜、その112~『ザ・カゲスター』まとめ~


 今回も、前回に続き、『ザ・カゲスター』を取り上げます。『ザ・カゲスター』について、まとめます。

 昭和五十一年(一九七六年)に放映された『ザ・カゲスター』は、先行する特撮(実写)ドラマ、アニメ、漫画などに大きく影響されて、生まれた作品でした。その中に、少しだけ、口承文芸から受け継がれる古い要素を入れたのが、良いアクセントになっています(^^)

 「男女ダブル主人公」、「本人ではなく、影が変身する」、「多彩な魔法道具がある」、「戦闘に使える子分のようなマスコットがいる」、「激しく、かっこいいアクション」、「変身していない普段の状態では、女性のほうが立場が上」など、『ザ・カゲスター』には、新しく、独創的な要素が多かったです。そこそこヒットと言える状態だったと思います。かえすがえすも、シリーズ化されなかったのが、残念です。

 シリーズ化されなくても、『ザ・カゲスター』の後番組は、『5年3組魔法組』という、女性キャラが主役の作品でした。男性キャラに混じって、女性キャラが活躍する割合が、少しずつ、増えていく時代でした。

 とはいえ、ベルスターのように、男性並みに戦う変身ヒロインは、昭和五十一年(一九七六年)の段階では、珍しい存在でした。
 例えば、昭和五十一年(一九七六年)に放映されていた特撮番組を、挙げてみましょう。
『ザ・カゲスター』
『宇宙鉄人キョーダイン』
『円盤戦争バンキッド』
『恐竜探検隊ボーンフリー』
『ぐるぐるメダマン』
『アクマイザー3』
『超神ビビューン』
『忍者キャプター』
『バトルホーク』
『プロレスの星 アステカイザー』
『秘密戦隊ゴレンジャー』
があります。同じ年に、十一本もの特撮番組が放映されていたのですから、特撮黄金時代といえますね。
 ただし、『恐竜探検隊ボーンフリー』と、『プロレスの星 アステカイザー』は、特撮(実写)とアニメとの合成という、珍しい方法で作られています。二〇二〇年現在では、こういう作品は見られませんね。若い世代の方々には、一周回って、新鮮に見えるかも知れませんね。

 これらの特撮番組のうち、『ぐるぐるメダマン』は、戦闘要素がほとんどないコメディなので、そもそも、戦うヒーローらしいヒーローがいません。
 また、『恐竜探検隊ボーンフリー』は、戦闘より、救助の要素が強いです。チームを組む男女が登場しますが、彼らは、戦隊というよりは、救助隊です。男性キャラも女性キャラも、変身して戦う人はいません。全員、普通の生身の人間です。

 『ぐるぐるメダマン』以外の十本の中で、男性キャラと同様に戦う女性キャラを挙げてみましょう。
『ザ・カゲスター』の風村鈴子/ベルスター(男女二人組の中の一人)
『円盤戦争バンキッド』の白鳥ほのか/バンキッドスワン(五人組の中の紅一点)
『恐竜探検隊ボーンフリー』の牧令子(五人組の中の紅一点)
『忍者キャプター』の桜小路マリア/前期の花忍と、天堂美樹/後期の花忍(七人組の中の紅一点)
『バトルホーク』の楯ユリカ/クイーンホーク(三人組の中の紅一点)
『秘密戦隊ゴレンジャー』のペギー松山/モモレンジャー(五人組の中の紅一点)
と、七人ですね。
 『忍者キャプター』の花忍は、前期と後期とで入れ替わるので、同時期に戦っていた変身ヒロインは、一人です。これを、二人で一人と数えれば、十本の戦う特撮番組の中で、戦う女性キャラは、六人です。

 いっぽう、戦う男性キャラは、十本の中で、少なく見積もっても、二十九人います。男性のゲストキャラが多い作品があるので、正確には、もっと多いです。戦う女性キャラの五倍以上、戦う男性キャラがいるわけです。圧倒的な男女差があります。

 注目すべきは、ベルスター以外の戦うヒロインたちは、みな、「数多い戦う男性キャラに混じっての紅一点」であることです。このことも、戦う女性キャラが、例外的な存在であることを示しますね。
 昭和五十年(一九七五年)に放映が始まった『秘密戦隊ゴレンジャー』に続き、翌年には、これだけの紅一点キャラが花開きました。特撮番組における「戦隊の中の紅一点」という定型は、昭和五十一年(一九七六年)に、定着したと言えるでしょう。

 こうして並べると、男女二人組で、ヒーローと比べ、まったく遜色のなく戦うヒロインのベルスターが、異質さで際立ちます。『ザ・カゲスター』の先進性が、わかっていただけるでしょう(^^)

 今回は、ここまでとします。
 次回は、『ザ・カゲスター』とは別の作品を取り上げる予定です。



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