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さかな陸に上る―魚から人間までの歴史


さかな陸に上る―魚から人間までの歴史

 簡単に言えば、これは、生物進化の本です。
 題名のとおり、魚類が進化して、両生類になり、爬虫類になり、哺乳類が生まれ、その哺乳類の中に、人類が生まれる道筋を、書いています。

 この手の解説書は、たくさん出ています。
 その中で、なぜ、この本を推すのでしょうか? 以下に書きますね。

 この本が最初に出たのは、一九八九年です。二〇年以上も前ですね。
 理系の解説書としては、これは、致命的なことになりかねません。学問の進化は、近年、とみに激しいからです。書いてあることの大部分が、時代遅れになるのが、普通です。

 ところが、この本は、二〇〇四年になって、オンデマンド版(POD版)として、再版されました。
 内容は、一九八九年の版と、変わっていないようです。

 正直に言いますと、この本の内容には、時代遅れの部分もあります。
 にもかかわらず、なぜ、十五年も経ってから、再版されたのでしょうか?

 それは、「再版する価値がある」と思われたからでしょう。

 この本の最も良いところは、「読みやすい」ことです。
 おかげで、内容が、すんなり頭に入ります。

 この手の解説書では、ある程度、専門用語が出てくることは、避けられません。
 けれども、この本では、やたらに専門用語が使われてはいません。難しいと思われる用語は、さりげなく、説明されています。

 この「さりげなく」というのが、すごいところです。
 著者の方は、文章がお上手です。軽妙な語り口につられて、読み進んでしまいます。

 図が多いのも、嬉しいですね。
 モノクロですが、多くのページに、図が載せられています。

 内容の古さだけは、いかんともしがたいです。
 このために、満点にはできませんが、満点に近い評価をしたいですね。

 魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類(人類を含む)の進化について、大ざっぱに知りたい方は、まず、この本を読まれるとよいでしょう。
 もちろん、恐竜についても、載っています。

 ただし、本当に正確なことを知りたい方は、そのあとに、別の解説書を読んで下さい。もっと新しい研究成果が載っているものを、です。
 この本で、大まかな進化の流れをつかんでおいたほうが、他の解説書を、読みやすいと思います。

 以下に、この本の目次を書いておきます。

序章 三億年前のある日
第1章 ことの始まり―魚の起源―
 一 魚の起源
 二 脊椎動物の分類
 三 地質年代
第2章 古代の魚たち―甲皮魚類と板皮魚類―
 一 顎【あご】のない魚―甲皮魚類
 二 顎の発明
 三 初めて顎を持った魚―板皮魚類
第3章 魚の近代化―軟骨魚類と硬骨魚類―
 一 サメとエイ―軟骨魚類
 二 硬骨魚類の先祖―棘魚類【きょくぎょるい】
 三 二つの硬骨魚類―肉鰭類と条鰭類
 四 重厚から軽薄へ―条鰭類の進化
第4章 魚 陸に上がる―両生類の誕生―
 一 水中での上陸準備
 二 陸に上がった魚
 三 両生類の能力と限界
 四 両生類の衰退
 五 爬虫類への道
第5章 陸上の制覇―爬虫類の出現―
 一 卵の上陸―羊膜卵
 二 爬虫類の分類と系統
 三 原始的爬虫類とカメ―無弓類
 四 海へ進出した爬虫類―広弓類
 五 トカゲとヘビ―双弓類
第6章 恐竜の時代
 一 新旧爬虫類の交代
 二 恐竜の始まり
 三 空飛ぶ恐竜―翼竜類
 四 鳥類
 五 真の恐竜―竜盤類と鳥盤類
第7章 恐竜の絶滅
 一 恐竜絶滅の特異性
 二 恐竜の生態学
第8章 哺乳類への道―本能から知能へ―
 一 哺乳類につながる爬虫類―単弓類
 二 脳の進化
 三 中生代の哺乳類
 四 単孔類と有袋類
第9章 脊椎動物の頂点―真獣類―
 一 真獣類の適応放散
 二 影の世界―齧歯類【げっしるい】
 三 表の世界(1)―有蹄類
 四 表の世界(2)―食肉類
 五 巨大化への志向―ゾウとクジラ
第10章 進化の原則―落ちこぼれの進化―
第11章 サルとヒトの進化―樹に上って、また降りて―
 一 樹の上へ
 二 原猿・真猿・類人猿
 三 ヒトへの道
 四 樹から落ちたサル
終章 動物と人間と

図版について
あとがき



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