現代怪火考―狐火の研究
狐火【きつねび】、鬼火、人魂【ひとだま】など、古来、言い伝えられる怪火について、解説した本です。
類書は、ほとんどありません。
私の知る限り、神田左京氏の『不知火【しらぬい】・人魂・狐火』が、希少な類書の一つです。
本書も、神田氏の書も、怪火の実例をいくつも取り上げ、紹介している点は、同じです。
けれども、本書と神田氏の書とでは、怪火に対するスタンスが、まったく違います。
神田氏には、「妖怪が実在する」という考えは、ありません。怪火と呼ばれるものには、すべて、科学的な説明がつくというスタンスです。
ところが、本書は、「妖怪は実在する」というスタンスです。多くの怪異は、科学的に説明できるのですが、どうしても説明できない部分もあると。
このスタンスに共感できるかどうかで、本書の読みごたえは違うでしょう。
共感できなくても、怪火に興味があるならば、本書を読む価値はあります。怪火の実例が、たくさん挙げられているからです。
本書では、怪火を、鬼火系、狐火系、などと分類しています。ただし、その分類は、恣意的です。客観的な分類基準は、示されていません。
本書の著者、角田義治【つのだ よしはる】氏は、ドイツの事情にも詳しいと見えます。ドイツの怪火や妖怪についても、少し紹介されています。妖怪が好きな方にとっては、これらは、貴重な情報ですね(^^)
なお、題名が『現代怪火考』となっていますが、本書が出版されたのは、昭和五十四年(一九七九年)です。
ですから、本書で言う「現代」とは、昭和五十年代のことです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はしがき
怪異火風俗考
妖怪と共存の時代
妖怪に対する心得帳
押し寄せた火の玉
阿倍野の野狐
怪異火さまざま
鬼火系の怪異火
燐火【りんか】・人魂の怪
老女の火
人魂に会った人々
生体から人魂が出る話
予告の火(一)
など
狐火系の怪異火
鬼火系との違いは?
狐火の季節は?
夏の狐火
洛東松原河原狐の嫁入りの事
冬の狐火
狐火と出合いのチャンス
狐火の呼び名さまざま
奇祭=津川の狐の嫁入り行列
狐のふるさとでよく聞く話
あずき洗いの怪
あずき洗いの実演奇談
笛音の怪
深夜の人声・ざわめきの怪
狐につままれるとは
など
狐火伝説考
狐火伝説の特色
きびしい偏在性
高い信憑性
消えてゆく狐火伝説
狐の大名行列
深山の怪異火
現代不知火考
狐火と不知火は同根
江戸時代の不知火考
現代観火風景
不知火待ちの日
観火地点では
永尾神社の宮司に聞く
不知火の原理は?
気になる狐火環境消滅
狐火環境とは?
狐火は豊作の吉兆だったか?
なぜ狐火は消えた?
狐火は戻ってこないか?
狐火の正体見たり
まず狐抜きの狐火探しから
空気レンズを作る
人工狐火の実験
怪火のふるさと
西ドイツへ
農村訪問に欠かせない車の話
ライネ河畔のスケッチ
陽炎の村
ライネの中流を探る
幽霊火伝説のふるさとホーンシュテットへ
掲載語解説
あとがき
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