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声劇台本

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まのが書いた声劇台本のまとめです。
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#声劇台本

【声劇シナリオ】スナイパーズゲイズ

内容 登場人物 スタート0:◯小高い丘・草陰 ーー草陰に隠れてブロートがスナイパーライフルを覗く。 ーー隣でヴァインが双眼鏡を覗き、向かいの山を見張っている。 ヴァイン:クマゲラの高く叫ぶ音が反響した。 ヴァイン:雪が反射し白く明るい。全てを白日の下にさらすような快晴。 ヴァイン:嫌な天気だ。 ヴァイン:一台のトラックが山道を通るのを見つけた。民間の姿だが情報によれば、敵軍将校が乗っているはずだった。双眼鏡で運転席を見る。軍服ではない。しかし、姿勢から緊張が見て取れた。

【声劇シナリオ】鬼手紙の季節

内容 登場人物 スタート豆吉:空気が冴え渡り、星の煌めきが一層美しく感じられる頃、米根先生に置かれましては壮健でいらっしゃいますでしょうか。以前の手紙に依頼されました通りの物をこの手紙に添えております。しっかりとした装丁のものですから丈夫には違いないでしょうが、どうか大切にお使いください。長く使うことになるでしょうから。先生の新しい俳句を楽しみにしております。 豆吉 米根:俳句とはなんだ? この本はなんだ? 詳しく手紙を寄越せ。さすれば俳句とやらも送ってやろう。 米

【声劇台本】ムシムシの夜

声劇シナリオ内容 登場人物 スタート男   しん、と静かな闇だった。虫の音も聞こえないほどの固い暗がりに、身動きがとれない姿の俺は転がっていた。むしむしとした不快感は誰とも共有できない俺だけの孤独で、狭い 箱に詰められた憎しみは金属疲労を起こしたかのように乾いていた。 男   俺は、惨めだった。 男   そんな中、とある幻聴がやってきたのだった。 ケムシ 「ねえ?」 男   「うう……。くそう……くそう……」 ケムシ 「ねえってば!?」 男   「ううう……なんなんだよ

【声劇シナリオ】ロマンチックなプロポーズに憧れる野球好きの彼女とロマンチックなプロポーズに挑戦する星好きの堅物彼氏の話

内容 登場人物 スタート彼氏:「世界で最も多いものの一つに名前があります」 彼女:「名前?」 彼氏:「そう、名前」 彼女:「名前って佐藤とか、田中とか、ヌートバーとか?」 彼氏:「なんです? ヌートバーって」 彼女:「君、野球見ないんだね。野球選手の名前だよ」 彼氏:「へえ、勉強になります」 彼女:「いえいえ」 彼氏:「まあ、そういう名前です。星とか、指輪とか、蟹座55番星eとか」 彼女:「なに? 蟹座?」 彼氏:「蟹座を構成する星一つがそういう名前なんです」 彼女:「あ

【声劇シナリオ】事故で父親を失った女の子が結婚して大人になるため、話せる魔法の人形の魔法が解けて消えてしまう別れ話

内容 登場人物 スタート人形:「人形とこどもって似てると思いませんか?」 女:「似てる? まあ、似てなくもないかな」 人形:「似てるんですよ。どうしてだと思います?」 女:「どうしてって、こどもが遊ぶから友達になれるようにじゃない?」 人形:「違いますが、いい本質を見つけましたね。そうです。人形はこどもに似せて作られたのです」 女:「へえ」 人形:「そして、役割は身代わり。生贄です」 女:「生贄?」 人形:「ええ。生贄という文化に財産として価値の高いこどもを用いる話はよく

【声劇シナリオ】コミュ障で不登校になった生徒がAI先生の演技で人間らしく打ち解ける話

内容 登場人物 スタート生徒︰「恥の多い人生を送ってきたとか言ってる小説の主人公が、自分は人間らしい演技をしているのが恥ずかしいとかなんとか言ってたと思うんです。でもその癖、酒飲んで遊んで借金作って、自堕落を絵に描いたような生活を送ってるんですよね。当然のような死に方をする癖に鼻に付く物言いをしているのがなんか腹が立つんです。自分の悩みは特別で高尚なものだ、みたいに言ってて」 先生︰「今まさにそういうやつみたいな痛いセリフを君は吐いてるワケだけどそれはいいの?」 生徒︰「

【声劇シナリオ】死んだ飼い猫を庭の墓に埋めた飼い主と死んでも気ままな猫の落ち着く話

内容 登場人物 スタートA:「中学の頃なんだけどさ。俺、雨の日に告白したんだ」 B:「どうしたの? 急に」 A:「俺、間が悪いんだよ。嫌なタイミングで……ああ……、こんな感じに降ってくる」 B:「あ、雨だ」 A:「まだ振らないかなって思ってたらいつも振り始めちゃうんだよな」 B:「最悪じゃん」 A:「最悪。その時もこんな匂いがしてた。知ってるか? ペトリコールっていうんだよ、この匂い」 B:「まあ、匂いは嫌いじゃないけど」 A:「なんか落ち着く匂いなんだよな」 B:「でも

【声劇シナリオ】宇宙船エクスカリバー│インダ・ロン・ラン

内容 登場人物 スタート0:〇朝。 ライカ: 極⼩⾳のアラームが鳴る。 ライカ: 瞼を開く。 ライカ: ラグとも⾔えぬズレを待ち、コロニーを覆うフィルタが剥がれていく。 ライカ: ⼈間のために調整された、⼈間味のない光が降り注ぐ。 ライカ: 間も無くアナウンスも流れるだろう。 ライカ: 不必要な、だからこそ必要な。 ライカ: ⼈間の幻を追うための ライカ: 宣誓の⾔葉として。 ーーシャーロット、アナウンスする。 シャーロット:『おはようございます。六時になりました。

【声劇シナリオ】ムシムシの夜

内容 登場人物 スタート男:しん、と静かな闇だった。虫の音も聞こえないほどの固い暗がりに、身動きがとれない姿の俺は転がっていた。むしむしとした不快感は誰とも共有できない俺だけの孤独で、狭い 箱に詰められた憎しみは金属疲労を起こしたかのように乾いていた。 男:俺は、惨めだった。 男:そんな中、とある幻聴がやってきたのだった。 ケムシ:「ねえ?」 男:「うう……。くそう……くそう……」 ケムシ:「ねえってば!?」 男:「ううう……なんなんだよう」 ケムシ:「ああ、やっとこっ

【声劇シナリオ】泡と人魚と風呂場とワイン

内容 登場人物 スタートクズ:飽和した水蒸気の中でも息はできる。 クズ:頭を断続的に打ちつけるシャワーは俺を伝って床に届き、熱を失う。 クズ:何かが失われていく感覚は、寂しさを想起して止まない。 クズ:形を失ってぼやけた感情に包まれ、俺は目を閉じた。 馬鹿:「よく、目を閉じられるね」 クズ:その問いの意味を少し探し、そして捨てた。 クズ:「起きたの?」 馬鹿:「私のことを寝坊助みたいに言わないで」 クズ:「起きたんだな」 馬鹿:「起こしたのはあなただよ」 0:ちゃ

【声劇シナリオ】こどもと秋の坂道で

内容 登場人物 スタートこども:「ねえねえ、おじさん。自転車の後ろに乗せってってよ」 オトナ:「だめだよ。警察に捕まっちゃうからね」 こども:「ここのチューザイさんなら乗せてくれるよ」 オトナ:「何やってんだあのおっさん……」 こども:「この坂道、自転車二人乗りすると、すっごいスピード出るんだよ」 オトナ:「そうじゃなくて、坂道をスピード出して下りると危ないでしょ? だからやっちゃいけないんだよ」 こども:「でも楽しいよ?」 オトナ:「怪我するかもしれないんだよ」 こども

【声劇シナリオ】冷たい眠り姫に添い寝

内容 登場人物 スタート早苗:月が照らそうと、星が瞬こうと 早苗:冷たくない夜を、私は知らない。 早苗:深海を思わせる深い暗がりが頬に触れて、 早苗:夜はまた、冷たく凍る。 玲一:「……冷たい」 早苗:「あ、ごめん」 玲一:「じゃあ、脚を絡めるなよ」 早苗:「まあまあ、あったまるまでさあ」 玲一:「冷えたらまた着けるんだろうが」 早苗:「まあまあ」 玲一:「こらっ」 早苗:「うひゃっ、冷たい!」 玲一:「どうだ、クソガキ」 早苗:「たすけてー、襲われるー!」 玲一:「も

【声劇シナリオ】ToN/ArIの国のアリス

内容 登場人物 スタート0:雨。視界の悪い山道を走る二人。 ヘイヤ:「アリス! 早く!」 アリス:「待って! 待って!」 ヘイヤ:「もう、遅いよアリス!」 アリス:「イルセが早いんだよ……。そんな岩だって登っちゃ、もう危ないんだから」 ヘイヤ:「弱音を吐かない! アリスも登るの!」 アリス:「無理だよ」 ヘイヤ:「無理じゃないし、無理してでも急ぐの! じゃなきゃ捕まっちゃうんだから!」 アリス:「もういいよ。暗いし、怖いよ」 ヘイヤ:「もうっ、諦めない! ほら、手繋いであ

【声劇シナリオ】霞の花

内容 登場人物 スタート0:白い部屋の中。 女: とても暗い、白を見ていました。 男:「起きたかい?」 女:「……なんですか?」 男:「起きていたかい?」 女:「ええ。ずっと前から起きていますよ」 女: 私の景色は変わりませんでした。 女: ぼんやりとした白の中で、ぼんやりとした声が迎えに来ました。 タイトルコール:【霞の花】 男:「いいことだね」 女:「何がですか?」 男:「変わらないことがだよ」 女: その人は近づき腰を下ろしました。私のベッドはずしりと沈みました。