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【声劇シナリオ】冷たい眠り姫に添い寝

内容

◆ラブストーリー│静謐│切ない│
◆文字数:約1200文字
◆推定時間:10分

登場人物

◆玲一:眠たい
◆早苗:甘えたい

スタート


早苗:月が照らそうと、星が瞬こうと
早苗:冷たくない夜を、私は知らない。
早苗:深海を思わせる深い暗がりが頬に触れて、
早苗:夜はまた、冷たく凍る。

玲一:「……冷たい」
早苗:「あ、ごめん」
玲一:「じゃあ、脚を絡めるなよ」
早苗:「まあまあ、あったまるまでさあ」
玲一:「冷えたらまた着けるんだろうが」
早苗:「まあまあ」
玲一:「こらっ」
早苗:「うひゃっ、冷たい!」
玲一:「どうだ、クソガキ」
早苗:「たすけてー、襲われるー!」
玲一:「もう事後だ、ボケ」
早苗:「くふふふっ」
玲一:「こらっ、大人しくしろ」
早苗:「ポリスマンじゃん」
玲一:「そりゃ、お前だろうが」
早苗:「ウーマンだぞ? 知らないの?」
玲一:「正義の味方が揚げ足とるな」
早苗:「別に仕事で正義の味方したつもりないしー」
玲一:「何? 司法の味方?」
早苗:「どっちかってーと行政?」
玲一:「どうでもいい」
早苗:「なんだよー。俺の味方になれとかないのー?」
玲一:「ダル絡みやめろ。明日起きれないぞ」
早苗:「明日も寒いんだろうなー」
玲一:「朝は特別寒いよなー」
早苗:「私が朝冷たくなってたらどうする?」
玲一:「何それ? 事件?」
早苗:「その可能性もあり」
玲一:「じゃあ、悲鳴をあげてやるよ。きゃーって」
早苗:「くふふふっ。可愛いじゃん」
玲一:「だろ」
早苗:「誰かー、屈強な男の人呼んでー。40キロくらいの女運べる男の人呼んでー」
玲一:「おい、10キロ重くしろ」
早苗:「ちっ、やるじゃん」
玲一:「抱かれてそんな嘘通ると思うなよ」
早苗:「そりゃそうか」
玲一:「ささっと安らかに眠れ」
早苗:「そんなあっさり殺させるなよー」
玲一:「じゃあ、殺してくれ。流石にちと眠い」
早苗:「……あんたが朝冷たくなってたらどうしてくれようか?」
玲一:「どうするの?」
早苗:「添い寝して温めてあげるよ」
玲一:「呑気かよ」
早苗:「温まるかな?」
玲一:「んな訳あるか」
早苗:「……寂しいなあ」
玲一:「……」
早苗:「眠い?」
玲一:「……お前が、朝冷たくなって寝てたなら。俺も一緒に寝てやるよ」
早苗:「何? 私と同じじゃん」
玲一:「昔のなんか偉い人がさ。眠りのことを『小さな死』って言ってたんだって」
早苗:「え、何? 死ぬ気? やめてよ?」
玲一:「別に、死なねーよ」
早苗:「あ、そうなの。ふうん」
玲一:「なんで不満そうなんだよ」
早苗:「いや、別に……」
玲一:「……別に、死なねーけど、暫く一緒に眠ってやりたくなるくらいには、俺も寂しくなる」
早苗:「……そう」
玲一:「そういう感想がさっきの俺の気持ちだ」
早苗:「めんご」
玲一:「そう言いながら脚を絡めるな」
早苗:「まあまあ」
玲一:「大人しく寝ろ」
早苗:「分かったよぅ。寝るからさ、お願い」
玲一:「何?」
早苗:「明日の朝はキスで起こして?」
玲一:「ちゃんと起きるならな」
早苗:「うん、おやすみ」
玲一:「ん、おやすみ」

早苗:今日もまた、冷たい氷の夜。
早苗:しかし、少しだけ柔く優しくよる。

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