高校入学のきおく

中学時代、成績は悪くはなかった。
しかし、残念ながら、県で一番偏差値の高い高校を受験したけれど、不合格だった。
高校は第二志望の私立高校へ通うことになった。


第二志望といっても、県で一番偏差値の高い私学として有名だし、何より制服が可愛かったので、私は入学に抵抗はなかった。

両親が学生の頃は、荒れている学校として有名で、今ほど進学校でもなかったらしく、「入学したら脱毛症でいじめられるのでは?」と心配していたようだった。

入学式は母と学校に行った。
はじめは曇りだったが、学校の正門の少し手前から雨が降りだした。
母が「傘ある?さしたら?」と私に言った。
私は折り畳み傘を持っていたが、学校が近かったため、「もうすぐ着くし、傘はいいや」と言ったら、 母が、「ハゲが目立つから傘で隠したら?」と言った。

正直なところ、今、隠しても、教室ではすぐに脱毛症であることは分かってしまうと思ったが、高校入試に失敗している後ろめたさから、何も言わず、傘をさすことにした。

ただ、もし、時間がこの頃に戻るなら、母に「私は意外に大丈夫なんだよ」と言ってあげたかった。
「他人は興味本位で色々言う人はいるけれど、たいして私に興味はない」ということを悟っていた。

この頃は、少しずつ髪が生えてきて、前から見ればベリーショートな感じで、後ろは見える所に脱毛症が残っていた。

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