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『Nのために』を読んだよ


はじめに


2014年秋クールにTBSで放送されていた湊かなえさん原作の『Nのために』を今さら見ました。
U-NEXTで配信中のときに見ました!

もともと湊かなえさんの作品は人気があり小耳に挟んだことはあったのですが、
見るには体力が要りそうだなと思って避けていました。

ですが、結果的に見てよかったです!

やっぱりミステリーって面白いな!と実感しました。

で、ドラマを見たことがきっかけで、
原作も手元に置いておきたいと思い、
先日ようやくBOOKOFFで原作の文庫本を手に入れることができました!

今回は『Nのために』を読んだ感想や考察をお伝えします。これから読もうと思っている方はネタバレを含みますのでご注意を⚠️

登場する「N」たち

『Nのために』では、文字通りNのために奮闘していく様子が描かれています。
キーとなる「N」たちが登場します。

杉下希美
安藤望
西崎真人
成瀬慎司
野口貴弘
野口奈央子

それぞれの名前の頭文字にNがついており、主にこの登場人物が各々の大切な存在を守るために動いた結果、タワマン「スカイローズガーデン」の一室で野口夫妻の変死体が発見されるという事件が起きてしまいます。

杉下希美は自身が生活している「野バラ荘」やその大家さん、安藤望の将来を守るため。
西崎真人は自身が骨を埋めたいとまで思う「野バラ荘」や大家さん、不倫関係にあった野口奈央子のため。
成瀬慎司は上京して進学するために助けてくれた杉下希美のため。
安藤望は自分が出世して大きな世界出るため。
野口夫妻は割と共依存関係にあるお互いのため。

それぞれのNのためを思ってしまったがために、悲惨な事件になってしまったのですが、過去の出来事も絡み合っているので複雑な心境になりました。
悲しみもあり愛おしさもあり。

ちなみに「野バラ荘」もNですね。

ただのミステリーではない

原作を読んだりドラマを見たりしたことのある人なら分かると思いますが、
Nのためには単なるミステリーではありません、と私は思います。

*サクセスストーリー

杉下希美が成長して自分の人生を手に入れていく
サクセスストーリー。
高校生までは人口五千人にも満たない小さな島で生まれ育ち、大学では東京に出て広い世界で飛び立っていく。
高校生活が自己中心的でお嬢様気質が抜けない母親と暮らしていたから悲惨でした。父親の愛人に土下座して弟や母親の分の食事まで頼む姿を想像すると、女子高生には耐えられないと思いました。

でも父親に頼んで学費を出してもらう行動を取るなど良い意味でプライドのなさや、高校時代に育んだであろうタフな精神と身体で大学生になってからも自炊やアルバイトに精を出して、CMに出てくるような大手住宅メーカーで就職が決まっており、人生良い方向に進んでいて報われているなと思いました。

*ラブストーリー

「罪の共有」というワードが何回か登場します。
杉下希美曰く究極の愛は罪の共有だと。
罪を被るわけでもなく共犯でもなく、お互いに知っている状態が究極の愛だそうです。

安藤望はあまりピンときていなかったようですが、西崎真人にとっては響いたようで、
杉下希美の罪の共有相手である成瀬慎司のことを興味を持ち、なかなか良い青年だと思っていました。

口には出さないし本人にはもちろん言わないけど、誰かを想っているという気持ちの強さが島での放火事件やタワマンでの変死体事件に繋がってしまったのです。

特に杉下希美は成瀬慎司のことを、自分の人生を救ってくれた人、助けてくれた人なので、想う気持ちはきっと人一倍強いことでしょう。

*どうしようもないクズの話

どうしようもないクズが登場します。
言わずもがな、野口夫妻。
野口貴弘は妻である奈央子に暴力を振るっていた。その証拠に奈央子の体に痣があったり玄関のドアの外側にタワマンには似合わない安っぽいチェーンがかけられていたりしました。

奈央子は西崎真人に助けを求めますが、部屋から逃げられそうなところで実は夫とは離れられない離れたくないことを口にします。このシーンは西崎にとってはとても苦痛だったと思います。

奈央子も貴弘も一人では生きていけないため、傷つけ合ってしまうのは悲惨だと思いました。奈央子も奈央子で妊娠していたのに、子供を産んだら貴弘の関心が子供にいってしまうと考えて、流産しています(わざと転んだかは不明ですが)。

お互いがNのことを考えていた

お互いがお互いのことを考えていたので、ラブストーリー要素もあり、ミステリー要素もあり、クズな登場人物の描写もあり、ハラハラしながら読み進めていました。
Nを思いやった結果、別のNに災いをもたらしてしまったり、(自分もNなので)破滅に追いやってしまったり、なんだか、みんな人間だな、って感じがしました。

好きな部分の引用

「広い世界という場所に、安藤が旅立ち、杉下が旅立ち、その後に自分も続けるのではないだろうか。そのとき、戻れる場所がここであったらいい。台風の夜から二年間かけて至った思いは、たった一日、奈央子に出会っただけで一気に打ち砕かれた。」
→こんな一瞬で打ち砕かれるほど衝撃的な出会いだったのか。文学的だけど羨ましいくらい純粋だと思いました。

「バカ言わないで。わたしは、他人の部屋に無断でドレッサー送りつけてくるような女がこの世で一番きらいなの。それから、野口さんみたいなエゴイストも大きらい。あんな夫婦、おかしくなってざまあみろって思ってる。それに、壊れた人間の手助けももうたくさん。なんでわたしが他人の面倒まで見なきゃいけないの。辛いことがあったら現実逃避すればいいってもんじゃないでしょ」
→杉下希美を表している部分だと思いました。強く生きていく一人で生きていく他人からの干渉も手助けもいらないって感じでかっこいいと思います。

おわりに

原作者である湊かなえさんといえば、日本の小説家であり、ミステリー作品を得意とすることで知られています。
後味の悪いミステリー、が、それが癖になってしまうという良い意味を込めて「イヤミスの女王」とも呼ばれていますね。
彼女の作品は独特な世界観と緻密なストーリー展開が特徴であり、多くの読者を魅了しています。

湊かなえファンの方はもちろん、ミステリー作品が好きな方にも『Nのために』を楽しんでいただきたいです!

以上、最後までお読みいただきありがとうございました🌹

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