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最初のセミ

至る所でとまではいかないが、
公園などの木が多い場所では
セミの鳴き声が馴染んできた。

降園途中の園児たちが
木を見上げて指を差し、
セミがいると叫んでいる姿も見掛ける。

時間がギリギリになってしまい、
ジムへの足取りはかなりの早足で
狭い真っ直ぐの道を歩いて行く。

すると道路沿いのその道の
ガードレールの向こう側に、
道路の上にぽとりとセミが落ちていた。

まだ生きている。
羽ばたこうとして羽ばたけず、
歩こうとして歩けず、
自身の体をもどかしそうに動かしている。

急いでいる私は視界の端でその存在を確認し、
その年の夏の最後のセミを想うように、
きっと今年最初のセミであろう
このセミを想った。

絶対数が少ない夏の最初と最後のセミたちは、
ちゃんと出会えるのだろうか。
毎年夏が来る度に心配をするのだが、
答えを聞けた試しはもちろんない。

先陣を切ったあなたたち、
ぐっと耐えたあなたたちが、
夏の始まりと終わりとを告げてくれる。

季節は巡ることは当たり前に思うが、
こうした小さな生き物や植物がいなければ
私たちは季節の移り変わりを
感じることは難しいかもしれない。

この夏にふさわしい賑やかな立役者を
だからこそ、応援してしまう。

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