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赤い目のネズミ【ショートショート】

ザーっとシャワーを浴びる。
暑い日にはシャワーは心も体も癒してくれる。はぁ、今日も疲れた。

濡れた髪をかきあげて
わたしは1人ふぅ、と息をついた。

ちょうどお湯もたまったところ。
ラッキーと思いながら湯船に浸かった。
時間がゆっくり流れる。
体から毒素が全て出ていくかのように
わたしの体からドロドロと何かが出る気分だ。
気分だけ、なんだけどね。

ふっと湯船を見ると、
なんだか黒いものが浮かんでた。

イメージが形になった?
なんて、くすくす笑いながら、
風呂桶ですくって、湯船の外に追い出そうと
風呂桶を手に取った。

もう少し…
よし、取れた!

小さなゴミが虫かと思った黒いものは
すくってみると案外大きくて
わたしの小指くらいの長さでゆらめいてる。
なに…これ?


湯気でくもるなか、
目を凝らしてみると死んだネズミ…

ひっ!


立ち上がって
急いで風呂の外に流した。

なんでこんなところにネズミ!?
やだっ!
気持ち悪い…

背中を悪寒が駆け上り、
ブルブルしてきた。

でも、もうこのお湯には入りたくない…

熱いお湯を浴びて出よう…

そう思ってシャワーを出そうと
洗い場に一歩踏み出したとき、嫌な予感がした。

おずおずと見上げると、
天井の隅に大量のネズミが並ぶ。
赤い目の茶色いネズミ。
大きいのも小さいのもいる。

ひっ!!!

「お父さん!」

どうにかして!!



と叫んで気づいた。

これは、夢だ。
あぁ、明晰夢か…

まっしろな風呂場に、
赤い目で敵対心剥き出しのネズミ。
怖くないわけじゃない。
確かに怖いのだ。

でも、わたしは、もう、お父さんに助けを求めるような、小さい子じゃない。
わたしは、大人だ!
力では負けるかもしれないけど、知識ならある。

肩に大きなネズミが落ちて乗ってきた。
落ちてきた?
いや、はじめからいた?
わかんないけど
肘から腕までの大きさの立派すぎるネズミ…
しかも、右と左に2体…


きもい!
怖い!
いやっ!
でも、
あせるな、あせるな……
息を吐いて…
考えて…考えて…


わたしが触れられるギリギリの温度のお湯を出す。


3……

2……

大きく息を吸う…

1 !


ネズミの顔にお湯をかけ、そのまま湯船に突き落とした。

肩に乗ったネズミが2匹
お湯に浸かると同時に光になって溶けていった。

大きな2匹が居なくなったら、もうわたしのもの。シャワーを片手に、お風呂場の天井に張り付く、うごめく大量のネズミを溶かしに行く。


まだ怖い。
もちろん気持ち悪い。
みんな見てる。
怖い目で見てる。
あれは応援じゃない。
敵対……真っ赤な無数の目。
気色悪いし、本当はやりたくないけど、
きっとやらなきゃいけないんだ。

だって、ここにはわたししか居ないのだから



はっ!

時計を見ると4:54
今朝の私の夢。



ネズミは、多分、
わたしが引き受けたくないもの全てだ。

嫉妬
僻み
妬み
恨み
自分ばかりが苦労して、いう自己犠牲感
わたし頑張ってるもん、という切ないアピール
アピールしないとバランスの取れない弱いココロ
気がついてるのに動かない罪悪感
わたしの課題と相手の課題を混ぜてしまう、わたしの習性……

ぜーんぶが、あのネズミたちなんだ。


羨望は時として信奉に変わり
信奉は時として崇拝に変わる
崇拝は時として変化への恐れになり
その恐れはわたしを「私」としてしか演じられなくする。

だから、
わたしは前に出るのがきらいなんだなぁ、と思う。
「こういう人よね」と言われると
「そういう人」を演じられてしまう自分も、知ってるから。


せいこちゃんってすごいよね!

言われ続けた学生時代。
同じセリフでいじめや嫌味としても、浴びせられた。親もそうだった。保育士の母でさえ、わたしの98点のテストと、弟の98点のテストの価値は全く違った。教育熱心な父でさえ、わたしの努力と弟の努力の価値は違ったのだ。
あなたは勉強ができる。
あなたは器用。

そのためにどれだけ努力してきたのか、全く見ることはなかったなぁ。それに対して悲しいとか悔しいとか、ほとんどないけど、
小さい頃のわたしには、よく頑張ったね、と伝えたい。
そんな経験上、賞賛と羨望と崇拝と僻みは、紙一重だ。

セイコちゃんってすごいよね、という思いから、みんな進化して
セイコちゃんだからできるんだよ。
という諦めに変わり
努力をやめる友人を何度も見た。

そして、
わたしが皆の想像の域からはみ出すと
そんな人だと思わなかった!
ショック!

と勝手に落胆して離れた人たちもいた。
わたしの中では友人と思ってる人たちもいたのだ。

その度に、
わたしは変わってない。
わたしはわたしなのに!

と思ったけど
離れていく背中に、かける言葉はまだ持ち合わせてなくて
高校生の段階で
ヒトのココロの内は理解できないのだと知ってしまった。


ずっと
理解し合えるヒトを探し求めたけど、
そんな人は見つからなくて。

もしかして、
そもそも理解なんかできないからこそ
理解しようとする姿勢が大事って言われるのかも!
と思った瞬間に、少しだけ光が差した。


あの赤い目を気にしなかったら、
どんなに素敵なんだろう。

もしかしたら、
キラキラ溶けたのだから、
赤い目こそ、わたしのおそれが生み出した化け物で、
たいしたものじゃないのかもしれない。

エスカルゴが食べれない日本人と
タコが食べれない外国人みたいに、
大差ないと思うんだ

肩に乗ってるネズミも、
もしかしたら戦う対象じゃなくて
仲良くなれたのかもしれないけど、
わたしにそこまでの心の広さはまだないから、土台無理な話である。


明晰夢の回数が増えてる。
こんなときは何が起こるのか知ってる。

今まで体験したことないほど
ジェットコースター並みに
現実が動き出す前触れなのだ


いいとか悪いとかの世界を飛び越えて
高い視座に導かれる感じ。
だから準備しとけよーと言われてるんだけど、いつもわからず、あとから我が身を振り返って初めて気づくのだ。

あー、あれがジェットコースターだった!と。


ヨッドもちは展開型の人生だ。
目標設定してねらい定めては、全く進まない。狙いが違えば進まないのがヨッドの特徴だと思う。

わたしは
11〜12ハウス火星が頂点ヨッド(12なら自覚できないハウス)
足元は海王星とジュノー(DCと合)だもん、仕方ないよね。

明晰夢、予知夢もいろいろ見るけど、
描こうと思える不思議体験は
みんなにシェアしていいんだと思うので、
何か得るものがあったら嬉しいなぁと思います!


ありがとうございました!

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