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妖精と人間【ショートショート】

森の奥に妖精がいました。
妖精の世界は完璧でした。

花があり、家があり、友がいて、
毎日ほんとうに充実していました。
でも、充実した日々は、若い心にはなかなかに難しいときもありました。
充実した日々は、裏を返すと、刺激のない日々でした。

妖精は森の外へ行ってみることにしました。


森の外には、人間の市場があります。そこを歩くと、いろんな人間がいるのです。
人間は落ち着くことなく、あっちに行ったりこっちに行ったり、無秩序に動き回るのです。


奥のパン屋から声がします。
「あんたねぇ、結婚しないとしあわせにならないんだから」

ケッコンとはなんでしょうか?
妖精は美味しいパンなのかと思いました。


八百屋から声がします。
「勝手に商品をとらないでおくれ!」
「すいません、本当にすいません。なにぼさっとしてるの!謝りなさい!」
「……ません」
「もっとちゃんと!大きな声で」
「……なさい」
「そんなことばかりしてるから、あんたはダメなのよ!本当いやになる!」

妖精には、その子どもが本当に反省してないことがわかっていました。だって、薄紫のベールをかぶっているんですもの!あの色は嘘をついたときの色でした。
そして、謝れといったお母さんも薄紫。八百屋さんは怒った赤色のベールです。

アヤマル、とは、なんなのでしょうか?

森では、子どもは大事にされます。
しかし、ルールが守れない子たちは、死ぬしかないのです。
だから、親のいうことをよく聞き、生き残れる知恵を授かります。

ここは、人間の街です。
弱さも強さも関係ないはずなのに。


退屈しのぎにはいいかもしれませんが、
妖精が長く過ごすには、少々薄汚れています。街ではありません。人間が心と呼ぶ、ベールが汚れているのです。

キラキラした純粋なベールが見当たらないのです。


街の相談役、と呼ばれるオババのところにも行ってみました。
見ていると、たくさんの知識と経験で、皆にアドバイスをしていました。オババのベールの色がなんとも不思議なのです。見る方向によって色が変わりますし、裏表でも違うみたいに見えます。本当に不思議な色。
妖精は声をかけてみることにしました。

「初めまして、オババさん。どうしてあなたのベールはそんな色なの?」
「あれまぁ、珍しいこともあるもんだ。まだ妖精が居たとはねぇ。わたしの小さい時はいたけど、もうめっきり見なくなったから絶滅したものだと思ってたよ」
「ちゃんと生きてるわ。人間の街は、わたしにはひどく薄汚れて見えるのよ。ベールが汚いの」
「オババにもわかるように教えてもらえるかい?」

妖精は話しました。
ベールの色のこと。
怒ってる人は赤で、嘘つきは薄紫だということも。そして、みんな赤か紫か青いあきらめのベールだということを。

オババは、ふむ、と考えてから口を開きました。

「みな、つかれているのだろうねぇ」
「ツカレ?」
「そうさ。疲れさ。
 正しかったことに価値がなくなったから、心の隙間にツカレタのだろうさ」
「信じてるもののこと?」
「そうだねぇ…。どういったらわかるだろうか……そうだ。オババに妖精さんの1日と、そのとき感じることを教えてくれないかい?」
「いいわよ!」

妖精は、この前の素敵な1日の話をしました。

朝、お日様がやわらかい光で自分の頬を撫でてくれたこと。
とてもしあわせな気分で起きたこと。
起きたら、いつものお布団がとっても素敵に見えて、お外に干したこと。
お日様がお布団をふかふかにしてくれたこと。
朝ごはんを食べようとしたら、うさぎさんがきてみんなで食べたこと。子うさぎが自分と同じ大きさで大笑いしたこと。
一緒に食べられる友がいて嬉しかったこと。
でも、1人でもきっとほかほかした気持ちで食べたこと。

「ちょっと待ってくれるかい?」
「なに? オババさん?」
「それは起きてからの出来事かい?」
「そうよ! 起きてから……そうね…
 お日様が木の枝から木のてっぺんに行くまでの出来事だわ」
「人間の時間で言えば1時間もないだろうねぇ」
「ジカン?」
「こっちの話だよ……私たちは、また学ばないといけないのかもしれないねぇ…」
「え? なにを?」
「目の前にある幸せを、感じる力が弱くなっているんだよ」
「わたしはわたしで、毎日ふんわりホカホカしてるわ」
「幸せかい?」
「しあわせってよくわからないけど、毎日楽しくて、ふわふわして、明日も待ち遠しいなぁと思うわよ」
「それを人間たちはしあわせと呼ぶんだよ」
「ふぅん、よくわかんないわ」
「正しかったことがなくなって、どこを見たらいいのかわからなくなって、探し求めて旅をして、疲れた矢先に憑かれるのだろうねぇ」
「なにに?」
「魔、にだよ。そいつらは、余裕を食い潰し、楽しさを先送りにした方が幸せだと囁き、人よりも自分が大事で、自分のために人を騙しても損させてもいい、と刷り込むんだよ」
「そんなわけないじゃない」
「探し求めて旅をしている中、余裕を食い潰されたら、取り込まれるだろう?」

妖精は考えました。
自分と他、大事なのはどっち? なんてわかりません。自分は自分だけど、他の生き物たちだって自分です。
うさぎはうさぎです。
うさぎの目から見たら『自分』とは『わたし(妖精)』ではなく、他ならぬ『うさぎ』なんです。自分も他も、等しく大事ですし、上下なんかありません。

「よくわからないわ。しあわせは、探すものじゃないもの。
 正しいしあわせ? ってものも存在しないもの。『明日も待ち遠しいなぁ』って思えたら充分じゃないの?」

オババにはわかっていました。
妖精は本質を語ります。屈託なく、正しいことを語ります。
妖精の世界は優しさとあたたかさと本質でできているのでしょう。

でも、
オババは知っているのです。
人間世界には裏もオモテもあって、どちらが欠けても成り立たないことを。
そして、
この世界で、その純粋さは、まだ毒になることを。
同じ世界では、価値観が違いすぎて、もう暮らせないことを知っているのです。

「妖精さんや、どうして人間の街に来たんだい?」
「んー、毎日同じも楽しいけど、少しだけ変わったものも見てみたかったの」
「そうかい……オババはね、妖精さんよりこの世界を少しだけ多く知ってるからこそ、ひとつだけアドバイスさせとくれ」
「いいわよ!」
「この世界で生きていくには、傷つく覚悟が必要だよ。イヤな思いもするだろう。
 でも、そのイヤな思いや悔しい思いや、なんで?という思いの石ころの中だからこそ、気心の知れた仲間や愛に気づくこともあるんだ。その尊さがわかるんだ。
 どうか、その本質が変わることなく、この世界で旅をしておくれ」
「旅するかどうか決めてないわよ?」

オババの発言に妖精は大笑いしました。

旅? 気に入ってるところから出たくないわよ。ほんの少しだけ、見にこれたらいいの。

オババはポツリと呟きました。

「オババが死んで、ずっとずっと先かも知れないね」

オババにはわかっていました。
妖精の、その好奇心は旅を求めるということを。

この妖精は他の妖精と違う素質がひとつだけあったのです。

知らないものを知りたいという探究心。

それが、この妖精を旅に連れ出すのでしょう。今はまだ、見えない未来ですが。

「なんか楽しかったわ! ありがとう」
「また気が向いたら遊びに来ておくれ」
「うん、そうするわ」

またね、オババ!とキラキラした粉を撒きながら、妖精は森へ帰って行きました。



さて、ここからは、
ホロスコープと自叙伝を交えての考察といきたいと思います✨

今日のショートショートのテーマは
ホロスコープの「太陽」と「月」
そして、山羊座冥王星の土の時代です。

まず先に、
私たちの世界って完成していたんです。
この世に生まれ落ちる前は。
多分100%完成してました。

わたしたちは学びたくて来たんですね。
完成された素敵な世界から、
冒険しに来たのです。

そう思えるようになりました。
ディズニーランドに行くつもりで、私たちはこの世界に生まれたんだと思います。
スリルや冒険や感動を味わいたくて来たのです。

多分ね!

そして、
「聞いてないよー!」
という出来事がたくさん起こりました。

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