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6歳の女の子の決意とカウンセリング~小さな英雄物語

6歳の女の子の決意

ちかちゃんは、6歳の頃、両親が離婚し、お母様と二人で暮らすことになった。

お母様にしつけと称して、食事の時、箸の上げ下げまでうるさく怒られ、二人で食事をするのが苦痛だった。

苦痛はさらに恐怖のような感情へ変わっていった。

そして、恐怖は不安に変わっていく。

ちかちゃんとのセッションはいつもFbのメッセンジャーで通話によって行っているので普段は顔を見ながら話すことはない。

そこで一度大阪まで会いに行ったことがある。

私は直接表情を見ながら話が出来ると思って、とても楽しみに出かけて行ったのだが、とても不安げだったのを覚えている。

後で聞いたのだが、もし実際の私を見て嫌われてしまったらどうしよう…と思っていたらしい。

これは6歳のときのちかちゃんの気持ちそのままなんだろうなぁ。

6歳という年齢には大きな意味がある。

親から独立して自律的に行動を始める時期でもあり、これに伴う自我が出てくる時期でもあるので、反抗的になる時期でもある。

しかし、少しでも自分を出そうものなら、お母様からの叱責が容赦なく浴びせられる。

同時にちかちゃんの心の中では、芽生えつつある自我によって苦痛は恐怖になり、恐怖は不安へと変わり、さらには以後に続く希死念慮の萌芽が根付いていったのかもしれない。

しかし、彼女の幼い自我は大きな決意をする。

ある日、お母様によってマンションのベランダに締め出されてしまった。

ベランダの手すりから下を見た。

「ここから飛び降りたら、楽になれるのかなぁ…」。

しばらく下をのぞき込んでいたらしい。

そしてこのような決意をする。

「でもお母さんが悲しむから」。

ベランダから飛び降りることを思いとどまったという。

このような決意の言葉を聴くまでに、10回くらいのセッションをしたと思う。

この時、私が彼女に言ったのは、

「あなたは幼いなりにその時、家の課題を背負うことを決意したのね」。

彼女の家のファミリーヒストリーを彼女が継承し、小さな英雄としてささやかな第一歩の歩みを始めた瞬間だと思った。

テレビ番組『ファミリーヒストリー』は、タレントさんが出てくる以上、タレント性、つまり、そのタレントさんが持っている才能の由来をたどり、先祖の人柄や趣味や仕事にそれを見出し、驚きと安堵の涙を流したりする。

しかし、光もあれば闇もあるように、人の心の中には、容易に解消しえず、受け入れがたく、代を重ねたとしてもなかなか光を当てられない影というものがある。

それはひとつの家に共に住み、日々を暮らす者同士だからこそ語らずとも、教え諭さなくとも受け継がれるものかもしれない。

たしかに合理的な説明はなかなか難しいが、彼女は私の言葉を受け入れてくれた。

小さな英雄の物語。

神話の始まりはいつも悲劇的である。


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