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【ブックレビュー】「本当に片づけたいの?」と問いかけてくる本
片づけたいのに動こうとしない自分に痺れをきらし、思わず手に取った本。
『もうモノは片づけない!』(ジェニファー・マッカートニー著、潮出版社)。
片づけない主義の著者による片づけないメソッドなのですが、読了後にはなんと、片づけようと決意することに。
著者が「一種のパロディ」(「おことわり」より)と位置づけるように、内容は刺激的で読者を選びます。
ものを散らかして、充実した生活を送る
この本の発売は2016年で、世の中はミニマムブーム。雑誌を開けば「すっきり」「少ない」という言葉が躍っていた頃です。私はいわゆる汚部屋に暮らし、毎日のようにすっきり片づいた家を取材していました。
すっきり、いいな。やっぱりものを減らそう。今日もらったヒント、試してみよう。
いやいや、なんといわれようと私はものが好き。理由あってうちにやってきたんだもん、探すのも人生!
両方の気持ちをいったりきたりしていたのです。憧れと同時に劣等感を抱き、いつしか開き直るようになっていました。
ちょうどその頃、この本に出会い、笑いながら(チクチクもしながら)読んだのです。
この本には、片づける方法は載っていません。著者のジェニファー・マッカートニーが、たくさんのものを持ち、身のまわりを散らかし、充実した生活を送る秘訣を紹介しています。
たとえば服は……。
脱いで床に放り投げ、踏みつけるのも巣通りするのも自由。(中略)服は完全に着古した状態となり、見た目にもじつにクール。このTシャツ、あなたのバースデーパーティーに着てきたことがあるって? ええ、そうね。これを着ているのは、人からどう思われようと屁でもないことの表明であって、くたびれている服がクールだっていう、ファッション精神を永遠のものにしたいからよと、そう答えればよろしい。というわけで、四角四面にジーンズをきれいにたたむようなことはやめましょう。
またキッチンは……。
自分がつくる料理なんてせいぜい五種か六種がいいところで、同じ材料を何度もつかいます。数時間後にはまたそれを出して料理するというのに、片づける意味がどこにあるのでしょう?(中略)ディナーのあとにそれを食べて、さあコーヒーの時間になったとき、砂糖はすでに出ていたら、そのほうが楽に決まっています。そう、ちらかしておくほうが効率がいいのです。
片づけは努力とストレスを伴うもの
著者は、人がものを身のまわりに置いておきたいと思うのはふつう、とし、散らかしは生まれながらに備わった能力で自然な行為、と言います。
その意味で片づけは真逆の行為で、努力とストレスを伴うもの。片づけを善とする社会の圧力を受けて、「散らかさない生活を求めて、そんなに気をすり減らしていいの?」と問いかけます。
もし、片づけに夢中になってつまらない生活を送っているとしたら、そのエネルギーと浮いた時間を充実した生活を送るために使いましょうよ! 旅に出ましょう、ワインとチーズを楽しみましょう、恋をしましょう。人生は短いのだから、自分の好きに生きればいい。人目など気にせずに。そう著者は教えてくれます。
片づけないメソッド(本では「FREEメソッド」と呼んでいます)とは、たとえば次のようなことです。
・机は聖域とし、創造性を刺激するあらゆるものを置く
・洗面所の美容グッズはすべて見えるところに出す
・クローゼットは夫の服を何枚か取り除くだけにし、ドアを閉めておく
・本はあらゆる場所(人目につく場所)に積む
・調理器具や材料は多いほど好ましい
・バッグは自分が持てる最大の大きさにする
・部屋着を充実させる
ものと自分の距離感がつかめる
自由で楽しげな暮らしぶりに、フタをしていた本能が刺激され、心が揺れ動きます。「さて、私は、それでも片づけたいと思うのか?」。読み終わったあとに、本気度を問われます。
私の場合は、自分が思うほどものに愛情を抱いていなかったことに気づかされました。本当は少しで満足できたのです。のちに食器を大幅に減らしたのですが、毎日同じものでもじつはへっちゃら。
散らかりを「気にしなくちゃいけない」と思い込んでいること。片づけないのは自分に正直に生きているのだ、と肯定すること。そう気づけたことで、やっと片づけの道へ踏み出せたのです。
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