【女子高生エッセイ】『ある日、片耳難聴で世界が半分になった👂🏻』
2ヶ月前、左耳が突然聞こえなくなった。
過去に2回、同じ現象に陥ったことがあった。
でも今回はほとんど治らないらしい。
ただただ、世界が急に半分になった。
右側の世界は今まで通りに広がっているのに、左側の世界がシャットダウンされた。
再起動はできない。
その日は親が朝仕事に早く出ていて、一言も喋らずに家を出た。
珍しく、イヤホンを家に忘れて音楽を聞かずに通学した。
電車に揺られた時だけ、少しだけ違和感を覚えたが、その違和感の正体に気づけなかった。
初めて声を出したのは学校についてから。
友達に昨日の借りた本が思ったより面白かったから続きを借りようと思って。
声を出す。
「昨日、本借りたやつさ......え?」
左から自分の声が聞こえない。
わたしが急に首を傾げたので、友達も思わず同じ方向に首を傾げた。
「え?どうした?」
あれ、友達の声も聞こえない。
確認しなきゃ。
「あ、あーー、あー、う、わーー!、あ!!」
友達はギョッとしている。
多分、まあまあ大声だった。
「うわ!えーーー、おーー、わぁーー!」
友達は、また頭おかしくなった?と聞かれた。
一応、真剣に心配している。
また、右からしか聞こえない。
とりあえず否定の意思として首をふる。
てか、またってなに!元々おかしくないんですけど!と突っ込みたかった。
でも、それよりも確認に急いだ。
「え、うそーー、あー!、わー、うーあー!」
聞こえない。流石にもうわかりました。
わたしの左耳は、完全に聞こえてない。
その後チャイムが鳴って着席した。
チャイムも右耳だけが捉えていた。
授業中もあまり聞こえないので、寝てるふりをして過ごした。
幸い先生には当てられなかったから、ただ授業で寝てるやつだった。
そうして1日を過ごした。
放課後、母に病院に連れられた。
「左耳感音性難聴ですね」
過去の2回は、ストレスだから仕方がないと片付けられていたので今回病名がついて少し焦った。
私は、過去の受診の記録と今回の聴力検査の結果を見る限り、ここ1年で、左耳の聴力が著しく下がっていた。
左の聴力のグラフを見ると一目瞭然、右肩下がりのグラフ。
その後、薬を飲んだら少しは良くなると言われたので、帰って処方された薬を飲む。
これが苦い。苦すぎるのだ。
そりゃ、薬剤師さんもジュースに混ぜて飲むのがおすすめですって言うわ。
なんで薬ジュースに混ぜるの?飲む量増えるやん!って思ってた私がバカだった。
何も混ぜず薬だけ飲むと喉にひっかかって、咳が止まらない。
そこから数日、何事もチャレンジ!とかいう楽観的思考で何回かチャレンジして、激しく咳き込むのを繰り返した。
薬剤師さんの言うことは聞かないとダメだと身をもって知った。
いや、わかってたんだけど。自分だけ特別だと思って試しちゃうときあるじゃん。それだよそれ。
それから、少しは聴力も回復して、小さな声は無理だけど大きな声はわかるくらいにはなった。
ここ2ヶ月、右耳があまりにも敏感になっている。
元々、音感と右耳の聴力は人と比べると良い方だったのだが、それが今では段違いに良い。
少しの楽器の音のズレに気づく力、右側の世界の音のキャッチする力が抜群にいい。
『目が見えない方、耳が聞こえない方は他の五感が鋭い。』と言う話は聞いたことがあるだろうが、それと同じ原理だと思う。
片耳から得られない情報をもう片方の耳が意地でも掴み取ろうとする。
そこで、両耳が聞こえてた頃の何倍もの情報量を、右耳が処理する。
こうして、右側の世界が明らかに広がった。
そして、左側の世界が構築されるようになった。
右側で捉えられない左側の音はここ2ヶ月で、脳がほとんど補えるようになった。
さすがに人との会話は補うのは無理だが、一度両耳で聴いたことのある音楽やチャイム、youtubeなどは左耳の音が脳内で再現される。
そうしてイヤホンをつけて、左からの音がなくても、私の脳内で完全に本来の音が作り出される。
世界は半分になったわけでもない、右側に広がったわけでもない。
左側に、仮想世界が半分創られたのだ。
ただ生きているだけなのに、起きた瞬間から私の世界の半分は常に創造されている。
朝の目覚ましの音から始まり、夜の布団の擦れる音まで。創り続けられる。
全ては左耳の役割を補うために。
"みんなの知ってる世界"の半分が欠けている人間は、欠けた世界を1から創ろうとするみたいだ。
左耳が聞こえないのしんどいかって??
しんどいかもしれないけど、生きているだけで万歳だよ。ありがとう私の体!!!
運命のイタズラか、ストレスのイタズラか、なんだか知らないけど、片耳を聞こえなくしたところで、私はそれをエッセイのネタにしてやる。
私の世界は、いつでも私が創り続ける。
世界は止まらない。想像も創造も得意分野なもんで。
だから私の世界を邪魔するな、運命。
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