年上の男

「この人の前では子どもでいられる楽さ、可愛がられる優越感があるんだろうなぁ」

いつかみた、誰かのYouTubeのコメント。
まさにその通りだなと思った。

「大人っぽいね」とか、「しっかりしてるね」とか、よく言われる。
そんな感じの見た目で、そんな感じの性格だから、普段からそんな感じの扱いをされる。
それは中学生の頃から今まで、ほとんど変わらないことだ。

私が好きになった人は、すごく年の離れた大人の人。
高校生の頃から片思いをして、もう5年目?

高校生の頃までは、そもそも親族以外の大人と関わることがほとんどなかったからわかっていなかったが、大人はやっぱり大人だった。
どういうことかというと、私はまだまだ大人ではないということ。
同年代に混じっていると大人っぽく見えるかもしれないが、大人だらけの社会に出れば少しばかり大人びている子どもに過ぎないのだ。

高校生になって私は少し変わった。
中学生の頃と比べ、先生と親しく話すようになった。
バイトもしておらず、ただ高校に通うだけの生活をしていたこの時期、親族以外で話す大人の人。それが高校の先生たちだった。

私の性格を知っている先生は、私のことをちゃんと子どもとして扱ってくれた。
勉強やそれ以外のこともたくさん教えてくれたし、お菓子をくれた人もいたし、よくからかってくる先生もいた。
「からかわれる」という経験は、普段そんな扱いをされることがない私にとっては貴重な経験だった。

中学生の頃は、先生に「からかっていい人と悪い人がいるでしょ」と言われてからかわれることはなかったし、親しい友人以外は私のことを丁寧に(怖がられてたのかな?)扱った。

だからかな、高校で先生にからかわれるのは、なぜか悪い気はしなかった。
私も先生に対して冗談を言ったりからかったりしたし、そんな関係がすごく楽しくて、心地がよかった。

しっかりしているように見られるけど、本当はそんなにしっかりしていない。
真面目な性格だけど、冗談くらい言えるし。
私だって、面白いと思ったら笑うし。
からかわれても怒ったりなんかしないし。
実は、親しくなった友人からは面白いって言われるような性格だし。
そんな私の内面を見て接してくれる人が私には必要だったのかもしれない。

そういうわけで、気づいたら私はある先生のことを好きになっていた。
高校を卒業してからも連絡をとって、たまに会う関係が続いている。
先生とは付き合っているわけではないし、もちろん愛の言葉を交わすこともない。
身体の関係だって、まだない。

私は先生のことが好き?

何度も自分に問いかけて、毎回答えを見つけられずに目を覚ます。

どうしてあれほど年の離れた人を好きになってしまったのか。
どうしてあの人でなくてはいけないのか。
そもそもこれは恋なのか、それとも執着なのか。

このまま好きでいても時間が過ぎていくだけなのに。

考えれば考えるほどわからなくて、苦しくて。

だけどやっぱり寂しいの。
もう完全に会えないと思うと、この関係を終わらせられないの。

先生と過ごす時間は、楽しくて、何よりも心地いい。
同年代の男子のように気を使われないし、接し方を考える必要もない。
ただ自然体で、そのままの私でいていいの。

一緒に過ごす心地よさは、年齢の差にあるのかもしれない。
いくつも年が離れているあなたの前では、私は子どもでいられる。
冗談を言って私を笑わせてくれて、からかって子ども扱いして、私が笑うとあなたも一緒に笑ってくれる。
それでいて時々ドキッとするような目で私を見つめる。
あなたといると、私も女の子でいられるような気がするの。

この優越感。

この優越感のせいって、本当はわかってる。

将来性がないのはわかっているし、同年代の男子に目を向けてみるのも一つの選択肢だってわかってる。

だけどできないでいる。

いつまでもその感覚から抜けだせないでいる。

他にも男の人なんていっぱいいるのに、先生みたいな人は他にもいるはずなのに、もうそんな人は現れないような気がして手放せない。

他の誰にもとられたくない。

そんな自分が阿呆らしい。


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