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忘れた頃に #日記6

インスタントカメラを使いきったので現像に出したら、フィルムのなかに別れた恋人と新しい恋人が同居していた。

いい写真ばかりで、どうしたらいいかわからなくて、なんだか消えてしまいたい気分になった。

そんなことを言ってはいますが、きちんとお腹は減るし、しっかり眠れるので、なんだかんだ割と健やかな毎日。自分の頑丈さにもはや呆れる。

食事も喉を通りません、みたいなか弱さを兼ね備えた人間ではもともとなかった。これからもきっと変わらないだろう。悔しいが私は丈夫で頼もしい心身を持ち合わせておるので、今日も図太く生きている。

せめてもの供養に、フィルムの中から1枚をここにあげておく。立ち止まってこの写真を撮っていたせいで電車を1本逃し、次の電車が来るまで20分ほど待ちぼうけしたのだった。そういうくだらないエピソードのひとつひとつが、今は恋しくて堪らない。

別れた恋人は本当にいいやつで、私が残念ながら両親から教わることのできなかった様々な事柄─主に愛情にまつわること─を、ひとつひとつ時間をかけて不器用ながらも手渡ししてくれた存在だった。「あたたかい日溜まりみたいな人」って、上辺の比喩表現じゃなく本当にいるんだな、と思った。私の人生を別のステージへと引っ張りあげてくれた存在だった。

忘れられるはずがない。

もしもわがままを許してもらえるならば、いつかもう一度会って、渡しそびれた写真を見せたい。私の撮るあなたは、いつも本当にいい笑顔をしていたから。

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