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首が腫れていると診断された...何の病気?【ドクターに相談!003】

会社の健康診断で、医師から「首が腫れているね」と言われました。
自分では首が腫れているようには感じないし、特段困ったこともないのですが、何か病気が隠されているのでしょうか?

何科の病院で診てもらうべきなのか、放置しておいても問題ないのか、色々わからないことだらけで不安です。

相談者:20代女性

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年に一度の健康診断で、何か想定外の指摘をされると思わずびっくりしてしまいますよね。
首が腫れていると診断されてしまった時は、どう対処していけば良いのでしょうか。ドクターに首の腫れの正体について解説してもらいました。

■医師による視診

皆さんは“視診”という言葉をご存知ですか?
診察というと、血圧や脈拍を測ったり、聴診器で呼吸や心臓の音を確認されるイメージをお持ちになる方が多いかと思います。

もちろん、バイタルサインの確認や聴診が大切であることはいうまでもありませんが、それと同様に大切なものが視診【目で病気のサインがないかを確認する】です。

血圧や脈拍、体温などバイタルサインの確認は、からだ全体のバランス(恒常性)をみているのに対し、視診はどちらかいうと特定の疾患にみられる典型的なサインを見落とさないためのものと考えることができます。

対面でお話を聞きながら、医師はさまざまな情報を視覚的に収集しています。経験を積んだ医師であれば、顔の印象や表情を見るだけで貧血や甲状腺の病気、肝臓や心臓、腎臓の病気の有無がわかる場合もあります。それ以外にも、身長や体形、骨格など視覚的に入ってくる様々な情報から、特徴的な病気のサインがないかを探っているのです。

視診におけるレパートリーと正確さは、数字で評価できる指標とは異なり、まさに医師としての力量の1つをあらわしていると言っても過言ではないでしょう。


■視診での“くびの腫れ”の原因

くびはわずか20cmほどの幅しかありませんが、脳と心臓をつなぐ非常に重要な場所にあります

視診でくびを診る場合、甲状腺、唾液腺、頸(くび)の静脈やリンパ節、皮膚の状態など診るべきポイントはたくさんありますが、特に健康診断で注意してみられている臓器が“甲状腺”です。
甲状腺とは、その中心がくびの皮膚と喉ぼとけの間に挟まれるようにあり、そこから小さな蝶が左右に羽を広げたような形をしている臓器です。
代謝を活発にする甲状腺ホルモンというホルモンをつくり、甲状腺でつくられたホルモンは血液の流れにのって、ホルモンを必要とする全身の臓器に運ばれます。

健康診断で“くびが腫れている”といわれる場合の多くは、“甲状腺が大きい(≒甲状腺に病気がある)かもしれない”と言われていることになります。

■“くびが腫れている”≒“甲状腺が大きいかもしれない”

健康診断には、病気をより早期に発見するという役割があります。すぐに病気とわかる人はもちろん、病気の可能性が疑われる人には精密検査をすすめるようにしているため、精密検査では異常がない人もおられます。

“健康診断で異常を指摘された”=“病気”ではありませんが、精密検査をすすめられた場合は、放置せずに医療機関を受診されることをおすすめします。

■くびが腫れる甲状腺の病気とは?

“くびが腫れる”理由として、“甲状腺が大きい”可能性に関して説明してきました。ここからは甲状腺が大きくなる病気にはどのようなものがあるかを説明します。

甲状腺の病気1:バセドウ病

甲状腺全体が大きくなる病気として、代表的な病気にはバセドウ病と橋本病(慢性甲状腺炎)という病気があります。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンを過剰につくってします病気で、甲状腺ホルモンが過剰に全身に運ばれることで、汗をよくかいたり、脈が速くなったり、食事をしっかりとっているにもかかわらず体重が増加しにくいなどの機能亢進症状を起こします。

甲状腺の病気2:橋本病

反対に橋本病(慢性甲状腺炎)では、甲状腺ホルモンをつくる量が減ってしまう病気です。
それによって、夏でも汗をかきにくく、冷えやむくみ、便秘、体重増加などの機能低下症状をおこします。

バセドウ病と橋本病(慢性甲状腺炎)は、まったく正反対の特徴を示す病気ではありますが、ともに甲状腺が大きく腫れる場合があります。また、転化といって、これらの病気は相互に行き来する可能性があることも特徴的で、以前は橋本病であった方が、突然バセドウ病を発症するようなことが起こることもあります。

この首の違和感、もしかして…

■くびが腫れている場合の検査は?

甲状腺の検査1:超音波検査

くびは非常にせまいエリアに重要な器官が集まっており、胸やお腹などと比較して、体表から浅いところに位置しているため、超音波検査が有効です。
超音波検査では、甲状腺やくびのリンパ節、頸動脈や頸静脈、唾液腺や副甲状腺などさまざまな器官を観察することができますが、骨に囲まれている部位には超音波ビームが届かないため、のどや気管(空気の通り道)の異常を調べるには不向きです。
唾液を飲み込むと喉が痛む場合は、まずは耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー検査をうけて体表からではなく、内部から異常の確認が必要となります。

甲状腺の検査2:血液検査

くびが腫れている場合の血液検査では、甲状腺ホルモン(FT4/FT3)や、甲状腺のはたらきを制御するホルモン(TSH)のほか、炎症の有無(白血球やCRP)などを中心にチェックします。バセドウ病や橋本病が強く疑われる場合には、そういった病気の素因を持っているかどうかを調べるために、甲状腺受容体抗体(TRAb)や抗サイログロブリン抗体などの甲状腺自己抗体と呼ばれるものを確認します。

自覚症状が少ないからこそ、定期検診・早期発見を

首の腫れに関して、他者からみればわかるような変化であっても、変化が急激ではない場合には、自分自身では異常に気がつかないこともしばしば。
セルフチェックしているから大丈夫とお考えの方もおられるかもしれませんが、健康診断や人間ドックなどの機会を上手に利用して、病気の早期発見に努めることが大切です。

どこで受診すればいいの?

最後に、相談者のように首の腫れを指摘された場合、どのような病院に通えば良いのかについて、まずは超音波検査ができる、甲状腺診察が可能な内科への相談・受診をおすすめします。

当院では、超音波検査後は1週間前後で検査の結果が返ってきますので、迅速に検査を済ませられます。

忙しい方でもちょっとの空き時間で検査を済ませられるので、気になる方は気軽にお医者さんへ相談をしてみてください。

予防の観点から健康を保ち、元気に毎日を過ごしていきましょうね。


▼ドクターは他の症状にも回答しています。


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