さぁ、野菜作りの世界へ
by adoria company 代表 岩田浩司
最近では「野菜を育てるデザイナー」として覚えてもらう事が多くなった。
でも、始まりは単に野菜を育てる事が好きだったわけではない。
園芸関係の仕事先に在籍している農業顧問が「農業経験者ではないのにデザインを語るな」と言った事がきっかけで野菜作りを始める事になった。
その結果、野菜作りをしているデザイナーだからと他の農業関連の会社から依頼頂き、ブランドデザインや事業自体の組立てなどを主導して進める事となった。
もう11年前になる。僕のデザインテイストをご覧になって、ブランドデザインの依頼をしてきた会社とお付き合いするようになった。依頼の経営者が探していたデザイナーとは、プロダクトデザイナーであり、本格的なブランドデザインもできる事が条件であったためマッチングできた。
最初の仕事はブランドアイデンティテイーの確立とロゴデザイン。次に、すぐ売りたかった野菜などの肥料パッケージ10種のデザインをした。その後は、テーブルウエアや保存容器などのプロダクトデザインも進めた。
僕はどのような仕事でも、その商品の「対象者の立場」で考える事を大事にしている。それをベースに、野菜を育てる人々に売場で選んでもらう方法や、知りたい情報、その優先順位などを整理してデザインする。その肥料パッケージの提案をする時に、農業顧問がデザインにも意見を始めた。それはいいが、コミュニケーションをとってクオリティーの高いものにするよう進める中で、「農業経験者ではないのにデザインを語るな」と極論を言ってきたのである。その時は経営者のジャッジで提案が通り、事なきを得たのだった。
しかし、気持ち的にはあのコメントが気になっていた。
…体験でしか語れない説得力は、体験でしか得られない事も理解していたので、野菜作りの深いところまで知るため始める事にしたのだった。
堺市にある市民農園での冬野菜収穫
初年となる2012年は失敗続き。ナスが枯れる、キュウリの苗が何らかの昆虫に食べられるなど、収穫はほとんどなかった。でも翌年以降、春からはエンドウ豆、タマネギ、ニンニク、トマト、キュウリ、ナス、スイカ、トウガラシ、オクラなど収穫でき、冬はキャベツ、ハクサイ、ダイコン、サンチュ、春菊など収穫できるようになった。
仕事柄、一日中机にかじりついているので、運動不足という課題を抱えていたのだが、畑で鍬を振る重労働は、体にとても負荷がかかり、結果的に運動不足の解消にもなった。
コロナ禍の中でも他人を気にしないで作業ができ、マスクもする必要がほとんどないので、以前の世界と変わりない事も魅力。
夏の収穫時期をむかえたトマト
最後にお伝えしたい事がひとつ。
収穫した野菜は、大量生産される市場の野菜と違ってとてもおいしい。最終的にはそのご褒美のために、「来年も育てる」の良いスパイラルに。余った野菜は知人へのプレゼント。コミュニケーションもとれて尚良いと思う。
さぁ、野菜作りの世界へ。
adoria company (アドリアカンパニー)
インハウスにて工業デザイン、空間デザイン、建築デザイン、カタログディレクションの経験を経て、2004年にプロダクトデザイン事務所/アドリアカンパニーを設立。生活用品や家具、雑貨などの広いジャンルのデザイン、それら商品のブランディング、販売に至るまでのデザインツールなど、ご依頼者に合わせた方法でデザイン課題を解決している。
https://www.adoria.biz/
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