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映画「銀河鉄道の父」感想 宮沢賢治×父の愛×家族と物語

父親のラブが大きすぎる。明治だと、家長が息子の世話とかご法度だったんだねと。確かに、江戸時代の風習がまだ残っているはずだし、明治維新前に生まれた人も多い。今よりも、近所付き合いが深く、商売にも影響するなら、そりゃ気になるなと思った。映画だと母親の出番はあっても台詞少ないから、心情とか読みにくかったなあ。

宮沢賢治が勉強するのはいいけど、いろんなものに傾倒していくのは父親は頭が痛かったろうなあ。特に、天然石ビジネスの下りは、当たり前のように、200円あれば始められる!と言われても、当時の200円は今の400、500万円ぐらいらしいので、かなりの大金。どこから用意するのか。聞いていて、絵に描いた餅だなと。

質屋を営むけど、賢治に継がせたいのは分かる。とは、いえ、賢治もはいと言わずに、結局東京で自堕落な生活になってしまうのがキツイ。親の仕送りにも手を付けずにどうやっていきていたのか。
妹のトシが倒れたから、岩手に帰ってきたが、トシへ物語を描くことで、自分の生きる道をかがやかしていく。人生は信念で変わると思うが、それは家族への愛でも変わるはず。賢治の何気ない言葉や物語が賢治を救っていく。

父の賢治への愛は本物であり、別荘で、物語を紡ぐという話に納得する。父が言った、私達は農民と暮らし助けていくという言葉を実践させる。農業の学校で得た知識を、農民達に話し、教えていく。すごいのは、賢治が死の淵でも、救いを求めた農民に知識を与えることだ。話の序盤で、家族のためにくわを高値で買ってくれという客がいた。賢治は信じるが、実は酒とギャンブルに消えてしまうのだ。しかし、賢治は家族が病気でなくて良かったと心やさしい素顔を見せる。その場面の対比だが、父は今度は、怒らずに見守るのだ。愛なしではなにもできないが、愛がないと何も愛せない。

宮沢賢治が愛した家族、物語は今でも読まれているが、そこには父の愛があった。賢治の家庭は裕福に見えたが、賢治は農民を助けるために、知識だけではなくて、自分も農業を実践していく。ニートのようにプラプラ過ごしていた賢治はもういない。外見は同じに見えるが、トシの死があり、物語ね大切さに気づいてからは、信念をもった人物に進化することになった。賢治の物語は、父に届き、いつしか父も賢治の物語を愛していく。賢治の物語は子供であり、父にとっては、物語は孫なのだ。それが本作の本質であり、宮沢賢治がどのように物語に向き合ったかが分かるようになっている。見ていて感動できる、泣ける作品だ。

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