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映画「ある男」愛した男×弁護士の苦悩×ラストのドンデン返し

ラストのドンデン返しと、それに関連した上映開始時のバーのばめんが印象的だった。愛した男は誰なのか?ある日、実家で息子と母と暮らす里枝は、文房具店を営みながら、静かに暮らしていた。そこに現れた谷口なる男とコミュニケーションを取るうちに結婚し、子供が誕生する。その後、林業に従事する谷口が事故で亡くなるのだが、仏壇に手を合わせた谷口の兄が、写真を見て「これは弟ではない」という。そこから、谷口の正体を追うために、離婚時にお世話になった城戸弁護士に依頼することになる。谷口、もといある男Xの正体は分かり、なぜ、他人になりすましていたのかが分かる。非常に苦しい内容で、観ていたらドキドキしてしまった。物語の根幹にあるのが、差別意識であり、ことあるごとに言及される。形を変えて、物語に何でも出てくるのだ。それらが苦しくも辛く、里枝よりも城戸が苦しむことになる。不自由がない家庭を作ったのだが、出自について妻の両親からも、テレビ報道、関係者からも追求されて、城戸はどんどんおかしくなってしまう。それが直接の原因でないにしろ、ラストの城戸の妻の裏切りにより、まさにある男に相応しいラストになっていく。里枝やある男Xが苦しんでいる以上に、城戸の苦悩が描かれて、実は城戸が物語なのではないかと思う。ストーリーの情報を一番握っているからこそ、苦しみ妻からも変だと言われてしまう。知れば知るほど重くなる。一体何がおかしいのか、おかしくないのか。

オープニングの絵が印象的だった。鏡に写るのは、後ろ姿。鏡を向いているのに後ろ姿なのだ。真実の顔はなく、誰かの後ろ姿。誰かの人生を生きている。城戸がいるバーでは、まさしくそれが行われている。出自、妻の浮気により、限界を迎えた城戸の心は、里枝の夫、ある男の谷口になることを選んだのだ。

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