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映画って、やっぱり・・・いいよね。

先日、京都国際映画祭があった。私は「登壇があるかも」という知らせからこの映画祭の存在を知った。
登壇させてもらったのはヒューリックホール京都という場所で、河原町の街中にある。すぐに想像できるあの京都の街並みが、映画を観終えて会場を出ると目の前に広がっている。京都の方には当たり前の景色かもしれない。でも映画祭のいいところは普段その「当たり前」がない人がそれを体感できることでもあると思った。

映画祭を通じてその街の周辺を知り、映画を通してその地域を知れる。そんな地域発信型映画が『遠くを見てみた』。石川県津幡町を舞台にした作品で、オール石川県在住スタッフで撮影制作された。
この日の映画祭では矢田富郎津幡町長、嬉野智裕監督と出演者の秋月三佳ちゃん、月亭方正さん、鈴木Q太郎さんと共に登壇した。

異例かもしれないけど、登壇者全員がお客様と一緒に映画を観て、客席から登壇することができた。共演者と観られるのも嬉しかったし、お客様の反応をそのまま感じられるのも貴重な新鮮さだった。

「あ、ここで笑うんだ」「この津幡の絶景に魅入ってるのかな〜」とか、シーンが変わるごとに変化する会場内の純粋な空気も堪能させてもらった。
同時に、撮影時のことをたくさん思い出していた。「この映画を観ればあの撮影期間の記憶はなくならずに思い出せるんだ!」なんてことに気がついて暗がりの中嬉しくなっていた。
それくらいずっと愛おしい時間が続く撮影だった。それは私だけじゃなかったんだと、登壇した共演者のテンションと言葉から気持ちのいいくらいにわかった。

ある曲が流れるエンドロールで、隣で観ていた方正さんがずっとそれを口ずさんでいる。そりゃもう、、、バレないように私も口ずさんでしまう。そんな中、明転して名前が呼ばれ登壇した。
一緒に観終わった直後、みんなが客席から登壇するというのは、津幡町の空気の延長のようにも感じられて、お客様との一体感がすでに温かかった。
初めて映画を観た方正さんがテンション上がってるのも口ずさんでる時点で伝わってたし、観た直後はやっぱり喋りたいことが多すぎて、方正さんと初対面だろうが町長がいようが、みんなそれぞれに今観てくれた人に今伝えたいことを話し合う。

なんか、この感じ、会場に居た人はわかるかもしれないけど、「不思議と笑顔になって笑いが絶えなくなるのが嬉野組なんです!」と声を大にして言いたい。たぶん変な気遣いが一切なくて、でも人にも地域にも愛ある人たちが集まってるからか、誰も置いてけぼりにしないホカホカ話が絶え間なく出てくる。

出演者としてもこの作品を通じて「石川県津幡町」を知れたのはとっても大きな財産で、観た人にも「津幡町に行ってみたい」と思ってもらえて、改めて映画を観てこんなにも「美しく」地域を切り取ってる映画はあまりないような気がした。
ただ景色が美しいってだけじゃなく、風や香りまで漂ってきそうな映像にもなっている。(そのカメラマン山田康太氏が撮ったのが今回のトップ写真)
しかもこの作品は津幡町の歴史や名所、人の営みなど、豊かな自然だけじゃない魅力をストーリーの中で知ることができる。

これぞ「地域魅力発信映画」だと思った。こういう映画がもっと増えたらいいなぁって。映画祭も素敵だからもっとアナウンスしてより多くの方に知ってもらえたらなぁって。(地元兵庫県にも知り渡ってほしい映画祭!)

日本の魅力を海外の方にも知ってもらえる機会になると思ったし、何より知らない日本を知れるというのは日本人としての誇りみたいなのが一つ増える気もした。
観光で行ってもどこ回ればいいかわからない時があるけど、「ロケ地巡り」という言葉があるように、映画は気軽に楽しく「巡る」キッカケもくれる。撮影でも映画祭でも公開後も地域活性にもなる「映画」に、膨大な可能性があると感じられる貴重な時間になった。

しかも今回の上映は無料な上に、津幡町の皆様から津幡町オリジナルうまい棒がお客様一人一人に配られたらしい。そんなのさらに好きになる。
こういうところも津幡町だと思った。撮影中の宿舎で毎度「おかえり」と言ってくれるキンシューレの皆様、ロケ地として使わせてもらった実際住んでらっしゃる家の方々、かっこいい劇中車に乗る私にずっとグーサインしてくれるおじいちゃん、出会った皆様がみんな笑顔で迎えてくれたのが今でも忘れられない。

津幡町に初めて向かうクランクインの日、それが初めて監督以外のスタッフの皆様と会う日だった。金沢駅に車で迎えに来てくれた方が車両部の方かと思いきや、なんと役所の方が協力してくれていた。
住人に限らず町に関わる皆さんが快く受け入れてくれて、「またいつでも来てね」の優しさが溢れる町。それも映画内に詰まっている。そしてそんな町をロケハンした監督たちの愛もぎゅっと詰まっている。

撮影の裏話を一つ。石川県は年間の降水時間が日本一になったり、「弁当忘れても傘忘れるな」という格言があるくらい雨の日が多いらしい。
今回の映画はタイトルが『遠くを見てみた』でもあるように、やっぱり遠くが綺麗に見えるほど晴れてた方がいい。津幡町の自然の魅力を思いっきりお届けするには、雨が降ったらダメだった。

なんとしても雨を避けるために、撮影までの2週間、監督とカメラマンは「徳」を積み続けたらしい。本当にその効果があるかは目に見えてわかることじゃないからわからないけど、その話を聞いた時にその心意気に泣けた。ほんっとに毎日素晴らしい快晴だった。これは映画を観てもらえたら目に見えてわかることだから、公開を楽しみにしててほしい。

撮影中、時間がどれだけタイトでどれだけ十分な睡眠が取れなくても、環境と人と美味しいご飯が最高だったら、メンタルがずっと穏やかになるからか何にも辛くなく、万全の状態の全集中で撮影に臨めた。これを体験できた津幡町での撮影は忘れない。全映画関係者がくれた温もりは私の中と映画の中にずっとずっとある。


映画って、やっぱり・・・いいよね。


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