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「東京」音楽が冬に合って

「東京」「Tokyo」「トーキョー」様々な東京がタイトルに入る音楽を集め始めて130曲になった。美空ひばりさんまで遡ったけどまだまだあるだろうから、こんなにたくさんあることにさすが「東京」だと思った。それだけ印象深く象徴するものがあるってことなのかな。

東京に10年住んでもそわそわして馴染めなかった私は、「東京」音楽の歌詞にブッ刺される時がある。ただ心に刺さるんじゃなく、刺されると思って音楽を聴いてないからいつも不意打ちに「ブッ刺される」。

「東京」音楽を初めて意識したのはくるり『東京』だった。始まりの歌詞でわけもわからずブッ刺された。次はキノコ帝国『東京』に出会い、いきなりの「日々〜」の音で泣きそうになった。

この2曲をわけもわからずひたすら聴いたところでやっと「これは何かあるぞ」とざわざわして、それから「東京」とタイトルに入った曲を集めてみることにした。

探してみると、Mr.Childrenやケツメイシの学生時代に何気なく聴き慣れていた曲もあった。その時と今と大きく違うのは、東京に住んで感じるものが多いこと。想像ではない情景が自然と浮かんだり、体験したことが蘇ったりする。

例えば、ケツメイシ『東京』に出てくる「この都会すごく冷たくて早い」「これだけの人がいるのに孤独」という歌詞たちはその時の体温まで感じるくらい心当たりがある。聴き始めた学生時代にはこの心当たりは確実になかった。

心当たりがあるからってその曲のすべてがわかるとか、心当たりがないからわからないとかそういうことじゃなくて、実感するものが増えたことで歌詞や音の残り方が自分の中で濃くなっている気がする。

例えば、KAN『東京ライフ』は自分が傘をささなくても雨に濡れないほど多くの人がいたり、雨宿りできる建物が多いことが自然と思い浮かぶようになった。それによってこの音楽への愛着みたいなものが増したりする。

その根底にあるのはどれだけ東京に住んでも消えない違和感がずっとあるからだと思う。人が多いのも慣れないし、押しつぶされそうになる満員電車にもうんざりだし、街もそんな明るくなくていいと思ってしまう。

苦手とか嫌いとかもはやそういうものじゃなく、自分が生まれ育った環境の感覚とは合わないってだけ。そんなの「東京」側からしても私と合わないと思っているかもしれないからごめん。

だけどね、ふらっと行った浅草の空気の良さや大好物の鰻の美味しいお店や東京にたくさん素敵なところがあるのも実感してるよ。

でもやっぱり、たまに行くとその素敵さを存分に感じられるんだろうなって思ってしまう。あるいは東京出身だとまた別の感じ方があるんだろうなと思う。

ただ、違和感を感じているおかげで「東京」音楽が私にはとてもフィットしている。なんでかっていうとその「違和感」を歌詞に載せてくれてるから。「あ、私だけじゃないんや」って自分だけが感じることじゃないと知れるだけで救われる時がある。

例えば、(ってたくさんあるけどその中でも厳選してみると)ヒグチアイ『東京にて』で「きみだけの東京にて」と何度も言ってくれると、「合わないって感じてる私なりの東京でいいんや」って優しく思わせてくれた。

東京は寂しい人が居られる街でもあり、人を寂しくさせる街でもあるなぁとなんとなく感じる。そんな時に耳に入ってくる「東京」音楽はブッ刺された心も過去の傷も一緒に、優しくお湯に浸からせてくれる感じ。

寒さとか日の短さは寂しさを勝手に感じやすくさせるから、私が集めた東京プレイリストは冬に合うなと寒くなった今思う。

その瞬間だけは冷たさが少し和らぐような、私にとって「東京」音楽は東京に住んで良かったと思わせてくれる言葉がたくさん詰まっている。

「きみだけの東京にて」のように人によって「東京」に代わる場所がそれぞれあって、東京に住んだことがない人にもブッ刺さるのも「東京」音楽の魅力な気がする。

東京出身の人にはどうなんだろう。ちょっと久しぶりに大学時代の活力が湧いて、この件に関して論文でも書きたくなった。
それくらいまた掘り下げてみたいな、「東京」音楽。

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