アップル星人の娘。
お母さんはね、本当はアップル星人なのよ。
子どもの頃、母は私にそう話していた。
りんごの形をした宇宙船に乗って、アップル星から地球へ修学旅行に来たの。
迷子になって集合時間に間に合わず、帰れなくなったから地球に残ってね。
お父さんと出会って結婚したからそのまま地球にいるのよ。
私はワクワクしながら母の話を聞いていた。
でも、本当の話だとは思っていなかった。
昔から母はよく冗談を言って笑わせる人だった。
だから、これは私を楽しませるための空想の話なのだなと思っていた。
それでもそんな母の話がおもしろくて楽しかった。
ある日、母が弟と私を昼寝させていた時のこと。
私はあまり昼寝をしない子だったので、弟が寝た後も眠れず窓から空を見ていた。
母が小さな声で「あ、UFO!」と指差した。
空に黒いものが飛んでいた。
じーっと見つめていたらもう一つ黒いものが飛んで来て「カァ」と鳴いた。
「お母さん、あれはカラスだよ」
振り返ると、母は弟の横で眠っていた。
カラスだったのか本当にUFOだったのか分からないけど。
私はその一連の流れがおもしろくて楽しかった。
母はお化けや不思議系の話が大好きで、いろんな話をしてくれた。
会社帰りの父を駅まで迎えに行った時。
まだ明るいのに電線あたりに火の玉が飛んでいて不思議だった、とか。
海外旅行で泊まったホテルの部屋でのシャワー中。
湯気で濡れた天井にSOSって文字が浮き出てきたのよ、とか。
二階の部屋で、顔の見えない子供が体の周りをパタパタと走り回る夢を見て。
毎日同じ夢が続くので怖くなり最近は一階で寝てるのよ、とお隣の人に話したら。
うちの主人も同じことを言って最近は一階で寝てるのよ、って言われてびっくり。
そしたら反対側のお隣の人が、それ今うちの二階の部屋に居るよって言ったの、とか。
そんな話も、母が楽しそうに話すのでちっとも怖くなかった。
私自身は残念ながら(?)お化けや不思議系の体験をしたことがない。
でも、「目に見えないもの」はあるんじゃないかな、と思う。
信じていても信じていなくても。
嘘でも本当でもどっちでもいいんじゃない?
楽しめたり何かの役に立ったなら。
なーんて思う。
「目に見えないもの」の先に何かの真実があるのかもしれない、とも思う。
考古学者のシュリーマンが、伝説だと思われていたギリシャ神話の都市トロイアを発掘したように。
私は昔からギリシャ神話や日本の妖怪などの話が大好きだった。
人と人ではないものが共存している日常。
人間くさい神様や妖怪たちの話。
そんな神様や妖怪の話も、生きている人に対しての教訓があったりする。
〇〇してはいけないよ、とか〇〇しては危ないよ、とか。
学生の頃、苦手な教科のテスト用紙を父に見せた時。
「頑張ったけど、この点数だった」と言うと、「頑張ったとしても結果が全てだ」と父は言った。
悲しくて「努力した過程も評価して欲しい」と父に言い返した。
社会の厳しさを教えたかったのであろう父。
頑張ったねと「目に見えないもの」も評価して欲しかった私。
学生の頃はそれが分からず悲しかったけど。
アラフィフになった今は。
「目に見えない努力の先に目に見える結果がある」のだと分かったよ、お父さん。
不安になったり悲しくなったり、嬉しくなったりする「目に見えないこと」。
それらも含め、全ての物事には理由があると思っていて。
その理由が分かれば、安心したり解決したり納得できたりするんじゃないかなーと思っている。
「目に見えないもの」のあれこれって、見えるものより分かりにくいけど。
とても大切なんじゃないかな。
そして「目に見えないもの」に恐れたり振り回されたりせず、うまく付き合えたらいいな。
なんてアップル星人の娘は思ったりする。笑
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