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#74: こんなときだから♪ショパン〜嫉妬深い妖精の恐ろしい水責め「バラード第3番」

ショパン:バラード第3番(1842)

#71 -77のテーマは「音楽家を惹きつけて止まない『水』という現象ー水と音楽」

「私のこと愛しているって言ったのに……ねぇ,どうしてどうしてなの?」

湖畔で男は美しい娘に出会い恋に落ちます。そして愛を誓い合う二人。しかし,その後男は,美しいオンディーヌに誘惑され落ちてしまいます。実は,湖畔で出会った娘は,オンディーヌの人間の姿。誓いを破った男が許せないオンディーヌは男を水の中に引き摺り込み…….

文学や音楽,そしてオペラなど様々な芸術作品のモチーフとなっているオンディーヌは,ほとんどの場合美しい女性として描かれています。そして,もう一つ共通しているのが,悲劇を背負っているということ。なぜか,あんまり明るい存在としては登場しないんですよね。でも美しい。それが「水」の魅力なんでしょうかね。とにかく女の怖さと水の力には屈するしかないんだと思います。ハイ。

ピアノの詩人,フレデリック・ショパン(1810-1849)は,ショパンが愛読した同郷ポーランドの詩人ミツケヴィチの詩からインスピレーションを得て4つのバラードを作曲したと言われています。この真偽ははっきりとしないのですが,本日お送りする「バラード第3番」は,「水」と思われる描写を感じずにはいられません。

だんだんと不穏になっていく空気の中,左手で奏でられる半音階の下降で,渦巻状に引きずり込まれていく様子,右手の素早い動きは,息継ぎもできないほど水攻めにあっている様子がイメージできます。最後は,悲劇とも喜劇ともいえないクライマックスを迎えます。

ショパンは,同年のリストやシューマンように,物語を描くようなはっきりとした題名を持つ標題音楽ではなく,絶対音楽を貫きました。そんなショパンにとって,このバラード第3番は,めずらしく物語を紡いだ作品であり,秀作であると思います。

いかなる時も,水と女の力は侮ってはいけない! そんなショパンの声がきこえてきそうな(笑)いや,聴きながらお楽しみください。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!

本日は,若手ながら誠実な演奏で好感が持てる後藤正孝さんのピアノでお送りします。
特に5:00あたりから始まる水攻めに注目して聴いてくださいね!


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