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むかし、“魔法使いのお姉さん”は言った 。


●むかし、魔法使いのお姉さんは言った。


「この紙に書いたらなんでも実現しちゃいまあ〜す!あなたがアメリカ大統領って書いたら本当になっちゃいま〜す!だから本当に(取り扱いには)気をつけて下さあ〜い!」

そのお姉さんが手に持つ紙は、どんな夢でも叶えてくれるのだと言う。

世はバブル全盛期、「成功プログラム」が大流行りしていた。

カセットテープとそれを書き起こした分厚いテキスト、そして演習がセットになって、それらがさらに重々しくアタッシュケースに入っていた。

アタッシュケースの数はコースによって3つ、4つ、5つ、、。一番高いコースになるとカセットテープの総数は100本近く、金額にして100万円を優に超えていた。

あなたも成功者の考え方ややり方を身につければ自ずから成功者になれます、だから成功者のモノの見方、考え方を浴びるように聞いて、見て、自分の人生に転用しましょう!というわけだ。

いくつもの代理店が存在し、自らも「成功プログラム」で成功メソッドを体得しているはずの完全歩合制のセールスパーソンが活躍していた。

社会人成り立ての私は、それをローンで購入した。

そのフォローセッション(だったと思う)で、「モチベーター」という肩書きのお姉さんが、先のような説明をしてくれたのだった。

しかし、その説明は少し違っていた。成功者は「目標を紙に書いていた」とはよく聞くが、決して「紙に書くから自動的に成功する」わけではないのだ。

お姉さんに悪気はない。完全に善意だということが伝わって来たし、インパクトを与えるためのオーバートーク以上の確信に満ちていた。本人がそう信じて疑わなかったのだろう。

●「目標を紙に書く」が意味するもの


私はそれから何年も、ほぼ毎日テープを聞いた。テキストを読んで書き込み、いろいろ試した。

そして何十年も経って、いま私はここに居る。

成功者ではない私がここに居る。

わかっている。全部自分の責任だ。

というのも、紙にはなんと書いたのか、今となってはまったく覚えていないからだ。

つまり私にとって自分の夢などその程度だったというわけだ。覚えていないほどの夢に、本気で取り組めたはずもない。

だからこそ、自分にとっての成功も手に出来なかった。そういうことなのだろう、きっと。紙に書けば実現するの意味を、今はそのように捉えている。

●それでも目標を紙に書く


自分の夢を紙に書けば成功出来るわけじゃない。

それはよくわかってる。全部自分の責任だ。

だからこそ、もう一度自分の夢を紙に書こう。

そしてもう一度やり直してみよう。

あらためて、今そう思う。

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