【自転車競技】ワウトとマチュー。火花散るふたりの東京オリンピック
こんばんは。
今日は、東京オリンピックのお話です。
開幕前から注目していた、2人の自転車選手に焦点を当てたいと思います。よろしくお願いいたします。
自転車競技が熱かった
今回のオリンピックでは、さまざまな自転車競技が開催されましたね。
公道を走るロードレースや山道を走るマウンテンバイク、木製バンクを猛スピードで回るトラックに、新種目として採用されたアクロバティックなBMX。今回初めて自転車競技をご覧になった方も多いと思います。
自転車競技歴6年、サイクルファン歴10年のわたしも、自転車競技に注目していました。
特に楽しみにしていたのは、男子ロードレースのワウト・ファン・アールト選手(ベルギー)と、男子マウンテンバイク(クロスカントリー)のマチュー・ファン・デル・プール選手(オランダ)です。
ワウト・ファン・アールト選手(ベルギー)
写真はオリンピック公式サイトより引用
1994年9月15日生まれ(年齢 26歳)。2018年より、ロードレースへの参戦を本格的にスタートし、現在はチーム・ユンボ・ヴィスマに所属しています。
2021年のツール・ド・フランスでは、モン・ヴァントゥを2回登る第11ステージで独走勝利しました。そして第20ステージの個人タイムトライアルでも2勝目を勝ち取ります。さらに最終日の第21ステージでは、シャンゼリゼでの集団スプリントを制して、3勝という素晴らしい成績を収めました。
マチュー・ファン・デル・プール選手(オランダ)
写真はオリンピック公式サイトより引用
1995年1月19日生まれ (年齢 26歳)。2018年マウンテンバイク世界選手権で堂々の3位に入賞した実力者です。
また、ロードレースではアルペシン・フェニックスに所属し、ワールドツアーに参戦しています。初出場となった2021年のツール・ド・フランスでは、第2ステージの区間優勝をし、黄色のリーダージャージも大会序盤に着用していました。
ロードレースで素晴らしい結果を残し、注目されている2選手。東京オリンピックでは、ロードレースとマウンテンバイクというそれぞれ異なる種目に出場しました。実はこの2選手には、共通点があるのです。
2人はシクロクロスの世界トップの選手
2人のバックボーンにあるのは、シクロクロス(Cyclo-cross)という競技です。
シクロクロスは、もともとロードレース選手のオフトレーニングの一環として始まった、秋冬がシーズンのオフロード自転車競技です。
シクロクロスについて(国際自転車競技連盟ホームページ)
コースは1周が3~4キロメートルの不整地の周回路で行われ、オリンピック種目ではないものの、自転車文化の盛んなヨーロッパでは、とても人気があります。
そして、ワウト・ファン・アールト選手とマチュー・ファン・デル・プール選手は、シクロクロスの世界トップレベルの選手なのです。それはもう、ものすごい選手なんです!
ジュニア時代からのライバル
どのくらいすごいかというと、シクロクロス世界選手権大会のこれまでの戦績をまとめましたので、ご覧ください。
わたしの調べた限り、2012年のジュニアカテゴリーから現在までの世界選手権のタイトルを、必ずどちらかが獲得しています。
10年近く、2人で表彰台を独占しているのです。これってすごくないですか。
2021年シクロクロス世界選手権でも2人の一騎討ちとなり、マチュー・ファン・デル・プール選手が勝利しました。
海岸でのレース。波打ち際を走る姿がとても力強いです。
ともに26歳、周りからは常に比較されるライバルです。本人たちはお互いをどう思っているのでしょうね。
わたしは以前、シクロクロスのレースに出ていたこともあり、2選手は超、超、憧れの選手です。ああ、この2人が揃って日本へ来るなんて!
そしていよいよ東京オリンピックが開幕しました。
さあ、2選手の結果はいかに…!
男子ロードレース
先に開催されたのはロードレース。東京から静岡までの234キロを走り切ります。
オリンピック公式サイトより引用
東京都府中市の大國魂神社の前を通る選手たちや、雨上がりの富士山麓の景色には、感動しましたね。ロードレースは、まさに旅のようです。カナダチームのTwitterにも、美しい写真が投稿されていました。
通常、自転車ロードレースはチーム戦で行われる競技です。エースが勝つために、アタック(逃げ)をしてライバルチームに揺さぶりをかけたり、エースの体力を温存させるために先頭を走り風除けになる選手もいたりします。
しかしながら、オリンピックはそうはいきません。国によって出場人数は1人〜5人と、大きく差があります。そのため、いくら大きな大会で勝利する強い選手でも、1人では厳しい戦いを強いられます。
ただ、大人数の選手を有する国が有力ではありますが、レース展開によっては一発逆転の可能性もあり、そこがオリンピックのロードレースの面白いところです。
メダルのゆくえは…
ツール・ド・フランスが7月18日に終わり、オリンピックのロードレースは7月24日。休む間もなく続々と有力選手たちが日本へやってきました。もちろんワウト・ファン・アールト選手も。
レースは終始、ワウト・ファン・アールト選手のいるベルギーと、ツール・ド・フランス覇者タデイ・ポガチャル選手や、プリモシュ・ログリッチ選手を率いるスロベニアの2国が支配していきました。
そして、のこり24キロ付近でレースが大きく動きます。
これまで集団の中でじっとしていたエクアドルのリチャル・カラパス選手(ツール・ド・フランス2021・総合2位)がアタック。それを数十秒差で追いかけるファン・アールト選手と、ポガチャル選手。
2人は優勝を目指すため、力を振り絞り集団を引き連れてカラパス選手を追いかけます。しかしながら、他の選手は最後のゴールスプリントのために体力を温存、集団内では選手たちの複雑な心理戦も行われています。
レースはカラパス選手が逃げ切り、優勝しました。
続くメダル争いは、8名でのゴールスプリント。これまでずっと集団を引っ張り続けた、ファン・アールト選手とポガチャル選手が実力を見せつけ2位、3位となりました。
水色のジャージが、ワウト選手(写真はNHKスポーツ総合サイトより引用)
本人のSNSです。
シルバー、ゴールド…わたしは差別しない!キラキラしたものが好き😎
男子クロスカントリー(マウンテンバイク)
ロードレースの興奮が冷めやまぬまま、男子クロスカントリー(マウンテンバイク)が行われました。約4キロのコースを7周回、競技時間は約1時間30分前後のレースです。
オリンピック公式サイトより引用
今回、リオデジャネイロ2016大会の金メダリストニノ・シューター選手(スイス)を始め、有力選手が出揃いました。しかしながら、まさかまさかの波乱の幕開けでした。
優勝候補と期待されていたマチュー・ファン・デル・プール選手は、一周目に激しい落車をしたのです。
先頭から5番手を走っていたファン・デル・プール選手は、桜ドロップという岩で出来た大きなジャンプ台を通過した際、目測を誤ったのか自転車ごと真下に転落してしまいました。どうやら試走時に設置されていた、板のスロープが本番もあると勘違いしてしまったようです。
地元オランダのライブ放送では実況の方が「アヤヤヤヤヤ…」と激しく動揺していました。
わたしも思わず「自転車界の大事な王子様が、怪我だけはしたらあかーん!」と心のなかで叫びました。
その後レースへ復帰し約1時間弱耐えながら走り続けましたが、トップとの差は縮まることなく、レースを途中で棄権。観ている方としても、残念な気持ちと悔しさの残る結果となりました。
優勝したのは、2人と同じくシクロクロス・ロードレース・マウンテンバイクのレースを走る、21歳のトーマス・ピドコック選手(イギリス)でした。
レース後のファン・デル・プール選手のSNS。
優勝した選手へのお祝いメッセージとともに、自身の落車の瞬間が投稿されていました。
何を言っても無駄だけど、また帰って来るよ (優勝した)tompidcockおめでとう🤝
よくみると瞬時に状況を判断して、体にダメージのないようしっかりと受け身をとっていて、さすがです。
そして所属するチームからも、メッセージがありました。
わたしたちはあなたの決意と忍耐を誇りに思っています!
マチュー・ファン・デル・プール選手は、検査の結果、骨折等はなかったようです。
まだまだ続くよ、ロードレース。そして、シクロクロスが始まる
こうして2人のオリンピックは終わりました。
そしてまた、ロードレースの世界へと戻っていきます。8月14日からはグランツールのひとつ、スペインが舞台のブエルタ・ア・エスパーニャが始まります。また、今月末にはマウンテンバイク世界選手権大会もあります。(現時点では2人の次の出場レースは未確認です)
そしていよいよ、10月からはシクロクロスシーズンへ突入します。
東京オリンピックは終わりましたが、まだまだ2人のレースは続きます。サイクルファンとして、今後も目が離せません。これからも応援していきたいです。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
思いのほか長文になりました。自転車競技の楽しさ、素晴らしさが少しでも届きますように。
公式ハイライト動画です
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