「ステートメントとは何か?」スローガンとの違いと重要性について
こんにちは。
イベントづくり先生のオーガナイザーM(@organizermanual)です。
このnoteではこれから個人主催イベントを開催したい人や駆け出しのイベントオーガナイザーの助けになる知識やノウハウ、失敗談を含む経験などを発信しています。
あなたのイベントづくりに「ステートメント」はありますか?
私は、イベントが成長するために「ステートメント」が果たす役割は非常に大きいと考えています。小規模なイベントは特に。
先日、とあるとても刺激的なイベントに参加して、改めてその想いを強くしました。それがこちら。
職場の先輩で友人の河野瀬氏が運営するInstaramアカウント(@emoimachi_koryo)が主催するいわば「オフ会」的なイベント『広陵万博 Vol.3』です。
「ステートメント」って何?
「スローガン」とは違うの?
そう思った方は、少し長くなりますが、ぜひこの記事を最後まで読んで、非常に強力な「ステートメント」の効果をその手にしてください。
「ステートメント」と「スローガン」の違い
まず最初に「ステートメント」とは何かという基本的な質問について、よく混同されがちな「スローガン」と比較して明らかにします。
この二語には辞書的には以下のような意味があります。
非常によく似ている両者ですが、明確な違いは大きく2つす。
1.「想い」か「行為」か。
「スローガン」は理念的な要素が強く、要するに「こう思っている」という想いを端的に表した言葉です。一方で、「ステートメント」が想いが表明されたものであり、そこには発するという行為が伴っています。
説得力という意味では「思っている」よりも「行った」方が一歩先に進んでいると言えます。
2.「普遍化」されたものか、「偏り」を許容するものか。
1とも関連するのですが、「スローガン」は「理念」や「理想」であるがゆえに、言葉の要約の方向は一般化、普遍化の方に向きます。
だから「自由に読み替える」ことができ、何かことがあった時には「スローガン」に立ち返って意味を解釈し直すことで、大きな理想を守りながら柔軟に立場を変えることができます。
ところで、この記事を書いている今、世間はお米の値上がりで大騒ぎ中です。消費者としては「お米は安くしてほしい」と思いますが、長く米価の低下に苦しんできた生産者は「この調子で値上がってほしい」と考えていることでしょう。
このように、立場の表明である「ステートメント」は立脚点によってものごとの見方に角度がつき、一定の偏りが発生します。
故に、話題に対して立場が変わると「ステートメント」は変容します。
3.「ステートメント」の重要性はどこにあるのか?
まとめると次のようになります。
スローガン=ものごとの考え方の方向性や理念を端的に表す言葉
ステートメント=あるものごとに対する主義主張や立場を端的に表した言葉
今の私は、平日の日中は公務員として働いています。行政の仕事は「スローガン」的であることが非常に多いのですが、言葉の意味がわかると公益の下僕たる公務員としてはそうあるべきだということが分かります。
一方で、「ステートメン」はともするとポジショントーク的であって、行政仕事としては忌避されがちです。
ポジショントークは同じ立場を共有する強力な味方と同時に、相対する立場にいる敵を生み出すものだからです。
共感によって人を動かすことを期待した言葉である「スローガン」と「ステートメント」は、そのアプローチが決定的に違っているということです。
あえて想いに深入りし過ぎずに広く(故に、浅く)共感を呼ぶ「スローガン」に対して、「ステートメント」は同じ立場や想いを共有する特定の人の心に深く入り込んで、強力な共感を生み出すと同時にその他大勢の無関心と少数の「反発(アンチ)」的なポジションを発生させます。
ここで重要なのは、そもそも大半が無関心であって「アンチ」のデメリットもほとんど受けることがない小規模なイベントづくりにおいては、「ステートメント」の利点だけをほぼ一方的に享受できるということです。
例文:『広陵万博』が持つ求心力の秘密
しかし、日本人というのは"角が立つ"ことが大の苦手です。だから、どうしても想いの発信はスローガン的になりがちです。
そうした中で、私が参加した『広陵万博』というイベント(或いはその元になった #エモいまち広陵 というInstagramアカウント)からは、主宰者の明快な「ステートメント」が発信されており、それが非常に刺激的でした。
それでは『広陵万博』におけるステートメントは何なのかというと、冒頭の動画投稿に添えられたメッセージこそがそれに当たります。
いかがでしょう?
凄く胸に響きます。それは、この発信が単なるスローガンではないからです。そして、何より大切なのは、(まだ付き合いの浅い)私ですら主催の河野瀬氏からこれと同じメッセージが何度も発信されているのを知っているということです。
以下、少し無粋ではありますが、なぜこのステートメントが人を惹きつけるのかを分析してみたいと思います。
「ステートメント」の作り方を分析&解説
自分と顧客(自分が影響力を発揮したい対象となる誰か)の価値についての洞察は、「ステートメント」に説得力を与えます。「ステートメント」とは自身の背景と現在地を明らかにした上で、今後に生み出したい価値について表明するものだからです。
この洞察を因数分解することができれば、意図的に力強い「ステートメント」を発することができます。私は、その為のツールとしてピーター・ドラッカーの5つの質問が有効だと考えています。
先ほど取り上げた『広陵万博』のステートメントには、キレイにこの5つの質問への回答が示されています。
① われわれの使命(ミッション)は何か?
『広陵万博』のミッションは「応援しあえる町 広陵町」を作ること。実に明快です。
② われわれの顧客は誰か?
顧客は、主宰者にとっての過去の自分。
そして、過去の自分を応援してくれた誰かです。
つまり、孤独な挑戦を始めた人とその挑戦を応援しようとする人たちです。
③ 顧客にとっての価値は何か?
ここもストレートです。
応援というボールを投げあうキャッチボールが起きることこそが価値であって、その積み重ねが成果を生みます。
一方的な応援ではなく、相互的であるというのがユニークなところだと思います。
④ われわれにとっての成果は何か?
では、その成果とは?
逆説的な表現ですが、「地方創生」「まちづくり」「シティプロモーション」「地方創生」。公が主導して実現を目指している(でもさっぱり上手くいっていない)町の課題解決の「スローガン」が現実になることです。
⑤ われわれの計画は何か?
その為にまず行うことは「友達自慢」であり、その手段が『広陵万博』というイベントの開催…という、気持ちの良いストーリーラインです。
応援のキャッチボールが大事だからといって他人に応援を強請るのではなくて、まず自ら率先して応援する姿勢も「ステートメント」に合致しています。彼に共感する人たちが強烈に惹かれるのも理解できます。
驚くべきことに、文章の並べ替えなしで5つの質問に答えられました。
もちろん、当人はそんなことを考えた訳ではないのでしょうが、優れた「ステートメント」とは、得てしてそういうものなのだと思います。
手前味噌な「ステートメント」の事例
他人の「ステートメント」をお借りするだけでは流石に申し訳ないので、最後に、過去の自分が行ったイベントの「ステートメント」も紹介しておきます。
今から15年前の冬、私がイベント屋として起業するきっかけとなった野外音楽イベントの開催に当てたテキストです。
参考:日本最大のアニメ系DJイベント「Re:animation」オーガナイザーインタビュー - amiami News
これを書いた当時の私は「ステートメント」の何たるかやその重要性など理解どころか気づきもしていませんでした。しかし、結果的に私はこのテキストを何度もブラッシュアップしながら繰り返し、ここに示したミッションに惹かれた仲間が次々と集うことになりました。
よろしければ、こちらの分析はあなた自身でやってみてください。
まとめ
ということで予定にはなかったのですが、勢い余って他人のイベントを褒めちぎるという不躾なことをしてしまいました。
今回の記事が「ステートメント」の役割や重要性、その構築方法についての理解に繋がれば幸いです。
『広陵万博』そしてInstagramアカウント @emoimachi_koryo はまだまだ小さいコミュニティですが、非常に高い熱量を持った可能性の塊です。この記事を読んで興味を持った方はぜひフォローしてみて下さい。
次回から改めて、前回の記事で予告した本筋に戻りたいと思います。
引き続き、お付き合いください。