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小規模イベント主催者もスタッフに正当な金銭対価を払うべきか問題の答え

こんにちは。

イベントづくり先生のオーガナイザーM(@organizermanual)です。

第四部「チームづくり」編も終盤です。前回はサブオーガナイザーの役割と、オーガナイザーがどのようにサブオーガナイザーに接するべきかというお話をさせていただきました。

今回はイベントの屋台骨となる「コアスタッフ」について触れていきます。

「コアスタッフ」というのは曖昧な呼び方ですが、このnoteでは準備中からイベントづくりを手伝ってくれるメンバーを指すこととします。

志願スタッフと依頼スタッフ

コアスタッフにはどういう人がなってくれるのでしょう?

これはコアスタッフに限ったことではないですが、あなたのイベントづくりのメンバーに加わるには、相手からの志願とあなたからの依頼という2つのルートがあります。

それぞれ特徴があるので見ていきましょう。

あなたの企画に惚れ込んで手伝ってくれる志願スタッフ

志願スタッフというのは、相手があなたの人柄やあなたが企画したイベントのファンになって「ぜひ一緒にやりたい」と申し出て、仲間になってくれるメンバーで、最も典型的なのは過去に開催したイベントの参加者です。

一般のお客さんから志願する方もいれば、即売会であれば出展者、音楽系のイベントであれば出演者からということもあります。

彼らは次のような特徴があります。

志願スタッフの特徴
・元からモチベーションが高い
・イベントに関わることが目的で職務を問わない
・スキルや得意分野はその人のパーソナリティ次第
・イベントの成長が自己承認に繋がりやすい

必要に応じてあなたがスカウトしてくる依頼スタッフ

もう1つのパターンは、イベントづくりにおいて必要な専門知識やスキルを有する人をあなたやメンバーが声をかけて仲間になってもらう依頼スタッフです。

既に他のイベントでスタッフとして活動している人や、イベント以外で知り合っていている専門技能を持っている人等が典型例になります。専門性や技術・知識のレベルはプロとして活動している人からアマチュア、または今勉強している最中等、状況に応じて変わってきます。

こうしたメンバーには次のような特徴があります。

依頼スタッフの特徴
・頼られることでモチベーションが高まる
・専門知識や技術が活かした活躍の場を求めている
・スキルや得意分野が明確だが人柄は付き合ってみないと分からない
・イベント内で専門性が高まることが自己承認に繋がりやすい

「専門スタッフに謝礼を払うべきか?」問題。

以上の両面があることが、個人主催イベントのスタッフ運営にもたらす定番的な問題があります。

それが…

専門スタッフには謝礼を払うべきか?

であり、これに対する私の答えは「相手が求めてきたら、その時点から支払う前提で交渉する」です。

専門スタッフに対価を払うだけが正義ではない

誤解を恐れずに言うなら、イベント全体のことを考えた時には必ずしも専門スタッフに相場通りの対価を支払うことだけが正しいことではありません。以下、いくつか理由を挙げて説明します。

◆イベントの資金力

イベント開催にはお金が掛かり、資金力には限界があります。特に初期には非常に限られた予算で運営する必要があります。また、特に資金が厳しくなるのはイベントの成長期です。

資金力が乏しい中で、参加者が増え、それなりにクオリティアップや体制強化を図らざるを得なくなります。当然、ある程度の専門性を有するスタッフが必要になってくるのですが、全て相場通りに支払うと簡単に資金繰りが破綻します。

この時の正しい選択は「真摯に事情を説明して無理のない条件で手伝ってくれる人にお願いする」です。

◆相手が望んでいない

相手がプロとして活動している技術を貸してもらう時に、お願いする側が無償で手伝ってもらうことに居心地の悪さを感じるというのも良くあるパターンです。

でも、実は相手はギャラを望んでいないということは珍しくありません。

プロと一口に言っても、働き方は様々で、本業ではできない自由な活躍の場をあなたのイベントに求めているかもしれません。ギャラと引き換えに自由を失うより、無償に近くても大きな裁量を選ぶ人も結構います。

もし、あなたが今の関係に居心地の悪さを感じるなら、腹を割って率直に相談してみることをお勧めします。

◆貢献度が高い否専門スタッフとのバランス

これも良くあるパターンですが、スポット的に協力してくれる専門スタッフに対して、特別な知識やスキルはないけれど、最初から最後まであなたに寄り添ってイベントづくりを支えてくれる志願スタッフを脇に置いて、専門スタッフに謝礼を支払うべきなのか?という問題です。

過剰に専門性をありがたがるオーガナイザーにありがちですが、実はイベントづくりの大半は、一般的で面倒な作業の積み上げだったりします。

それなのに、なぜ専門スタッフにお金を払わないのが悪いことのように感じるかというと、専門性の提供には単価の相場があるからです。

また、一般的な事務作業は時給に換算するしかなく、初期の資金力では最低賃金ですら支払えないことが明白なので、そこは「ボランティア」ということで逃げて蓋をしてしまうのです。

しかし、初期のイベントスタッフというのはそもそもボランタリーな存在であって、そこに専門スタッフも一般スタッフもありません。

ある程度の傾斜をつけて専門技術に報いることを否定はしませんが、スタッフの貢献度は平等に評価し、現状の中で最大限のお礼の仕方を考えるのが筋であると私は思います。

ボランティアスタッフの貢献に報いる方法

あなたはどのようにコアスタッフの貢献に報いれば良いでしょうか?

それを考える上で、まず最も危険な考え方を示しておきます。つまり…

俺は、いつか手伝ってくれるスタッフ全員に十分な謝礼ができるようなイベントにするぞ!!

です。

それだけの収益があるイベントに成長するのは一見良いことのように思えますが、売上や利益を追求するということは収益性を害する要素は捨てるということになります。しかし、そういう非効率で非経済なことにこそあなたのイベントの本質があるというのはよくある話です。

むしろ、小規模の個人主催イベントのほとんどはそうであると言って過言ではありません。

なぜなら、商業的成功を目指すマス向けのイベントでは拾いきれない隙間の満足が欲しいために、あなたはわざわざ手間と時間をかけてイベント開催を決意したのですから!

もちろん、将来的に大規模化、商業化を目指すことを否定はしません。

ただ、それだけが正しいことではなく、またあなたのイベントづくりを支えるコアスタッフが、金銭的な報酬だけを望んでいるのではないことは、しっかりと認識しておくべきでしょう。

その上で、報い方は様々であり、個別に相談する他ないのですが…

まずは「ありがとう」と折に触れて気持ちを言葉にするのが、私たち小規模イベントオーガナイザーにできる最低限の報い方であると思います。

まとめ

会社勤めをしていると最初の頃は残業代が出るのに、ある程度まで昇進すると僅かばかりの役職手当と引き換えに残業代が出なくなることがあります。

これは昇進したことで「会社に雇用される人」から「会社を経営する人(雇用する側)」へと立場が変化することがその理由です。

イベントのコアスタッフというのは、イベントづくりにおける社長であるオーガナイザーと一緒になって主体的に作っていく仲間であって、どちらかと言えば後者に近い存在です。決して十把一絡げに、ルールに定めた時給や月給、残業代の上げ下げで満足して去就を決めるような淡白な関係ではありません。

では、彼らは体よく"やりがい搾取"できる存在なのでしょうか?

それを決めるのはどれだけ相手と真摯に向き合えるかというオーガナイザーの姿勢次第です。

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